ハッピーボトル
「世界が滅亡するってどういうことだよ?」
「そのままの意味さ、この世界が綺麗さっぱりなくなってしまうってこと」
男達との戦いを終え、場所は変わりここは幸助の家
壁に開いた穴とそこから見える今は焼け野原となってしまった山がこれまでの出来事が夢ではなかったことを物語っている
そんな出来事の最中、幸助の前に現れた不思議な黒猫
曰く、幸助の20歳の誕生日に世界が滅亡するとかなんとか
「お前はなんでそんなことを知っているんだ?」
たとえ幸助が不幸を引き寄せる体質だとしても世界を滅亡させるなんて非常に滅茶苦茶な話である
仮にもしそれが本当だとすればこの村なんかとっくに滅亡させているだろう
「神様に聞いたからさ」
予想外すぎる答え
人の言葉を話し、人の体に入ってくるこのおかしな猫はやはり頭もおかしかった
「で、そんなこと俺に伝えてどうすんだよ?俺になんとかしろっていうのか?」
一応続きが気になるので聞いてみる
「その通りさ」
黒猫は即答する
「なら簡単な話じゃねぇか。俺が死ねばいいだろ?そうすれば俺は20歳にならないんだし」
「だから、それじゃあ僕が困るんだよ。さっき言ったでしょ?」
さっきと言っても既に10時間以上は経過しているがそんな細かいことを気にしても意味がない
「じゃあどうすればいいんだよ?」
幸助が問いかけると黒猫は自分の首につけていた風呂敷の結び目を解く
そして中から取り出したのは小さな瓶
「これはハッピーボトルって言ってね、星降っていう街に伝わる宝物なんだけど」
(星降、聞いたことがある。たしかこの世界の中心でかなりデカイところだったはず)
外の情報に疎い幸助でも知っていることから星降がどれほど有名な街なのかがよくわかる
「そんな有名な街の宝物をなんでお前なんかが持ってるんだよ」
「盗って来ちゃった」
言葉だから合っているかはわからないがこの猫はおそらく[盗]っていう字を使っている気がした
ますますこの黒猫がなんなのかわからなくなってくる幸助
黒猫が1匹で大きな街の宝物を盗めるとは思えない。
しかし実際にそれは目の前にある
まさか1000匹くらいの猫で強行突破とか?
必死に納得できる答えを探そうにも見つかりそうにない
「それで、この瓶を人の幸せで満タンにすると願いがなんでも叶うって言うんだけどーーーー」
ここまで聞いたところで幸助の頭は追いつかなくなり立ち上がる
「どこいくの?」
「散歩」
黒猫の問いかけに素っ気なく答える幸助
「待ってよまだ話が…」
「お前の言いたいことはなんとなーくわかった。その瓶をいっぱいにして世界を救えって言うんだろ?」
「そう!なら話はーーーー」
「断る。いきなり世界を救えって頼まれても俺には協力する理由がない。しかも大嫌いな黒猫に頼まれたら尚更だ。それに話も嘘臭いし仮に本当だとしても興味ねぇよ」
そう言い残し幸助は家を出る
しかし玄関を出たところで黒猫に引き止められる
「なんで?世界が滅亡したら君も死んでしまうんだよ?」
「だから死んでもいいって言ってんだよ。こんな人生送ってたってめんどくせぇだけだし、そもそも神とか願いが叶うとか意味わかんねぇ。ファンタジーじゃねぇんだぞ」
今までなんとなくただ毎日を過ごしていた幸助。死にたいとか思ったことはないがそうはっきり言われると逆に死ぬことに対しての決心もつくというものだ
「でも君の体質だって充分ファンタジーだと思うけど」
そう言われると何も言い返せない幸助は
「うるせぇほっとけよ」
捨て台詞を吐くことしかできなかった