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幸助と黒猫


 幸助が目を開けるとそこに黒猫の姿はなかった


 その代わり幸助の拳には黒猫の顔ような痣がついていた


「なんだよこれどうなってんだよこれ」


 いきなり目の前に黒猫が現れたと思えば人の言葉を話し、光になって姿を消した

 突然の非現実的な出来事に混乱する幸助


『詳しい説明は後でするから落ち着いてくれ』


 頭の中に響くさっきの黒猫の声


「落ち着いてくれ?無茶言うなよ。こっちは訳わかんないことの連続で頭がパンク寸前なんだぞ?とゆーかお前どうやって喋っーーーーー」


 バキッ


 幸助の言葉を遮る鈍い音

 そして自分の右頬にめり込む自分の右拳


『落ち着いてくれてありがとう。そうしたらまず思いっきりジャンプしてくれ』


 どうやったか知らないけど無理矢理落ち着かされたようだ


「お前ふざけてるのか?」


 まだ混乱しつつも少しだけ落ち着きを取り戻した幸助


『頼むから今は言う事を聞いてくれ』


 黒猫の意味のわからない指示に疑問しかない幸助だがこのまま何もしないよりはマシだとしぶしぶ従う


「あーはいはい。よっこい…しょ!」


 適当な返事をしつつも言われた通りにジャンプする

 するとさっきまで目の前にあった炎が姿を消した


「いや、違う!」


 目の前にあった炎は自分の真下にあった。そして少し離れたところには自分のいた黒猫村が見える


 幸助は空高く飛んでいるのだ


『そうしたらそのまま空中を蹴って火のないところまで移動してくれ』


「お、おう!」


 訳がわからないが今はこの黒猫に従うしかない幸助は戸惑いながらも返事をする

 この命懸けの状況において抱く感情は恐怖が一般的であろう

 しかし幸助は違った


(すげぇ…空飛んじゃってるよ…)


 空を飛ぶという初めての体験にただただ感動していた




『とりあえず一安心だね』


 黒猫の指示通り炎のないところまで移動した幸助に次の指示をだす


『次は燃えている森に向かって思いっきり拳を突き出してくれ』


 またしても意味のわからない指示

 それでも数分前のことを思い出し、仕方なく従う

 つい先程もこの猫の言う通りにしたらなんとかなったのだ

 こうなったらヤケだ。最後まで付き合ってやる。


 改めて森を見ると炎の勢いは衰えるどころか激しさを増している

 大きく息を吸い、吐く。そして拳を構え


「せーーーのっ!」


 拳を突き出した瞬間、その拳から放たれた凄まじい拳圧は突風を起こし燃え盛る炎を木ごと消し飛ばしてしまった

 信じられない出来事に幸助はただ口を開き唖然とするしかなかったがそこで気力が尽き、また眠ってしまった


 すると幸助の拳がまた光りだしその光はまた黒猫へと姿を戻した


「バッチリだよ。生きててくれてありがとう」


 眠っている幸助にそう言うと黒猫も寄り添うように眠り始めた



 夜が明けて朝

 例の3人組は森へと向かっていた


「昨日のガキどうなりましたかね」

「黒焦げに決まってるだろ!あの状況から生き延びるやつなんていねえって」

「ああ、間違いない。それでも死体の回収しねぇと殺った証拠にならねぇ」


 そう言って男はタバコに火をつける

 昨晩、森で何が起きたかも知らずすっかり勝ち誇った表情の男達であった




「んだこりゃあ」


 先程までの勝ち誇った男達の表情は一変していた

 森に着いた男達が見たのは不思議な光景であった

 ある地点を境に森が跡形もなく吹き飛んでいる


「確かに森は燃やしたけど、こんな燃え方ありえねぇだろ」

「そもそも山火事って一晩で鎮火するもんなのか?」

「ということはまさか…誰かが消した?」

「バカヤロウそれこそありえねぇ!かなり大規模な燃え方してるのを昨日確認したはずだ!」

「じゃあなんで…」

「うるっせえ!黙ってろ!」


 男は次第に焦り始め苛立ちも見えてきた


「昨日はよくもやってくれたなお前ら」


 男達の誰の声でもない。それに声は男達の後ろからした。男達慌てて振り返り


「このガキィ…」


 そこには昨晩、自分たちが殺したと思っていた幸助の姿があった


「あいつ…なんで!」

「まさかあいつが…」


 2人の男が怯んでいると


「狼狽えんなテメェら!どうやって生き延びたのか知らねぇが俺達の前にノコノコ出てきたんなら…」


 男はポケットに手を入れ何かを取り出す


「ここで殺せばいいんだろぉがよぉ!」


 男は幸助に襲いかかる。その手には折りたたみ式のナイフが握られていた

 そのまま幸助にぶつかる


「よしっ!刺さっ………」


 ていなかった。刺さる寸前のところで腕を捕まれ止められていた


 幸助は男の顔に拳を叩き込む。男はよろけながらもすぐにナイフを振り降ろすがそれも避けられてしまった。そしてまた顔に1発


「ちくしょう!なんなんだよ!ガキ1人殺すだけの簡単な仕事じゃなかったのかよぉぉぉぉぉぉ!」


 やけになった男はまた幸助に突っ込む。しかしそのナイフは当然当たらない。手に持ったナイフは幸助に蹴り飛ばされる

 そして最後の1発は男の腹に


「うおぉぉぉぉぉぉ!」


 叫びながら幸助が拳を振り切ると男は空高く吹っ飛びやがて村の方へと落ちた


「あの男を連れてどっか行け。次は容赦しねぇぞ」


 残った男たちは幸助に言われ急いで男が落ちた方へと逃げていった


「…………ふぅ」


 口には出していないがやり返せたことに満足そうな表情を浮かべる幸助に


「お疲れ様、カッコよかったね」


 と、笑顔で話しかける黒猫


「助けてくれたのは感謝するけどそもそもお前はなんなんだよ喋る黒猫とかおかしいだろ」


 やはりまだ納得のいってない幸助


「まぁ細かいことは置いといて本題に入ろうよ」


 細かいことじゃないだろという幸助のツッコミを無視して黒猫は話し始める


「不破幸助、君の20歳の誕生日に世界は滅亡する」


「……………は?」


 幸助の目に映るこの黒猫は彼の人生史上最大となる不吉を持ってやってきてしまった………


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