表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハッピーボトル ~不運な男が世界を救う~  作者: 縞虎
名も無き町の不屈永愛
46/154

永愛と母


不屈家をあとにして急遽宿探しを始めた幸助達だったが運良く1件目に見つけた宿を取ることに成功した

慌ただしい1日を終え幸助と優輝はベッドに腰掛ける。クロは気分が優れないせいかベッドの上に降ろすとすぐに眠ってしまった


「いやー1件目で宿決まってラッキーだったね」


「宿なんか取らなくたってあそこに泊まれば良かっただろ」


「そのことはもういいでしょ!それより明日からどうするのさ。予定通り上輪旗に向かうの?」


「んー………それなんだけどもう少しここにいようと思うんだ」


優輝の質問に少し悩む様子を見せた幸助はこの町に留まるよう提案した

クロの体調のこと、永愛の母にまた来てと誘われたこと、いくつか理由は思いつくが幸助の考えが気になるので聞いてみる


「どうして?」


「クロの事なんだけどただの車酔いでここまでなるはずねぇと思うんだ。そんで前にもこんなことあったの覚えてるか?」


「それって勇泉の時?」


「そうだ。そんであの時オカマが攻めて来ただろ?今回も似たようなことが起こると思ってな」


「それってまた星降守護部隊の奴が来るってこと!?」


幸助の話で優輝は勇泉の村で早乙女乙姫と戦った時のことを思い出す。またあんな化物と戦うことになると考えただけで自然に声が大きくなってしまった

不意の大声に驚いた幸助は人差し指を唇の前に立て静かにというジェスチャーをする。そしてクロが起きてないことを確認すると話を再開した


「そいつらとは限んねぇけどきっとなんかある。そんで優輝の時みたいになんか吐き出すんじゃねぇかと思ってる」


「なんかなんかって随分曖昧だね」


「予想なんだから仕方ねぇだろ。そんでそれが起こるとしたら不屈永愛だと思うんだ」


「じゃあ不屈永愛に何かが起きてそれが解決するまではこの町にいるってこと?」


「そういうことになるな。ともかくクロがこの調子だと旅を続けるのも無理だしもう少し様子を見るぞ」


「ヤバイことにならないといいけど……」


自分の時のことを思い出しこれから何が待ち受けているのか不安でいっぱいの優輝は頭を抱える。幸助を見ると既に横になり寝る体勢を取っている

呑気に構えている訳ではないが動じずに堂々としている幸助を見て少し見習いたいと思う優輝だった


そして次の日。永愛の様子が気になるのでまずは不屈家に向かうことにする2人。クロの体調は相変わらず悪いままで優輝に抱えられている

1日経っても回復しない様子を見るに幸助の予想が正しいと思わざるを得ない状況になっていた。優輝の中の不安は更に大きさを増して行く

そしてその道中、前方から見覚えのある人が歩いてきた


「あっ」

「あら、幸助君に優輝君。偶然ね」


昨日早とちりからの暴走を見せ2人を困惑させた永愛の母親だった


「おはようございます。どっか行くんですか?」


「仕事で隣町までね。永愛なら家にいるから会いに行くなら今よ?」


「いや、別に会いに行くつもりではないんすけど……」


「あら私ったらまた1人で先走っちゃった。ごめんなさいね、私昔から恋愛のことになるとどうしても周りが見えなくなることがあって……昨日もごめんなさいね」


自分の早とちりに気がつくと母の頬がみるみる赤く染まる。更に昨日の暴走も思い出してしまい余計に赤さを増すとたちまちリンゴの様に真っ赤になってしまった

幸助と優輝に何度も頭を下げ謝罪し始めたので2人は慌てて止めに入った


「私ったらダメね……。そのせいで昔からあの子にも苦労かけてばっかりで。私が離婚なんかしなければあの子だってもっとーーー」


今度は真っ赤だった顔が徐々に暗くなり始めた。2人はどんな顔をすればいいのかわからないし朝から話が重すぎる


「ーーーってもうこんな時間!ごめんなさい!またね!」


腕時計を確認すると今度は真っ青になって走り出して行った。赤くなったり暗くなったり青くなったり非常に忙しいひとである。昨日持ったお淑やかというイメージを心の中で撤回した2人だった


「……とりあえず様子見に行くか」

「……うん」


再び歩き出した2人の足取りは重かった

そして不屈家の前に到着した2人だがここで問題が発生する

様子を見るとなんとなく言ってみたもののどうすべきなのか思いつかない。家の中を覗けるような窓はないし仮にあったとしてもジロジロと中を覗いてたらただの不審者として見られてしまう


「どうやって様子見んだよ」


「僕に聞かないでよ。幸助が言い出したことなんだから。とゆーか普通に家に入れてもらえばいいじゃんか」


「俺達が近くにいたら起こる問題も起こらなくなるかもしれないだろ。直接関わらないようにして問題が起きたら助けるんだ」


「そんなこと言ったってこのまま家の前ウロウロしてたら僕達怪しい人だよ」


「じゃあお前が上手いこと作戦考えろよ!」


「言い出しっぺのクセに丸投げすんな!」


「じゃあどうすりゃいいんだよ!!」


「だからそれを考えろって言ってんだよ!!」


「朝から家の前でうるさいのよ!!!」


突然2人の頭にチョップが振り下ろされた。2人の怒号を上回る声で家の中から永愛が現れ、頭を抑える2人の腕を掴むと家の中へ引きずり込む


「朝っぱらからいったいなんの用よ」


「よ、用がある訳じゃねぇぜ?たまたま散歩してたら通りかかっただけだぜ?」


(嘘がヘタクソ過ぎる!)


問い詰める永愛に対して目が四方八方に泳ぎまくっている幸助。当然その嘘は容易く見破られた


「そんな顔してるのに騙される訳ないでしょ?バカなの?」


永愛の言葉にグウの音も出ない幸助。しかし本当の理由を話す訳にはいかないのだ。物事が自然に進むことが問題を早く解決することに繋がる

だが幸助にはその場を乗り切ることができない程追い詰められている

そこで優輝が口を開いた


「君さ。昨日あの男達に『告白無双』って呼ばれてたじゃん?あれどういう意味なの?」


優輝の問いかけで幸助に詰め寄る永愛の動きが止まった。どうやら話を逸らすことに成功したようだ


「私って昔から恋愛のことになると周りが見えなくなるみたいでね。どうもお母さんに似たらしいんだけど正直自覚はないのよね」


昨日は親子であることに疑いを持つほど正反対に見えた母と娘の印象だったが2人の話を聞いていると疑いはどこかへ吹き飛んでしまった。やはり親子なんだと納得したが自覚があるだけ母の方がマシなんだとも思った


「それで気に入った男に告白し続けていつの間にか付いたあだ名が告白無双って訳。私はただ真実の愛を求める乙女ってだけなのに失礼な話よね」


「それはなんというか……大変な話だね」


「大変なんかじゃないわよ。まぁお母さんは自分に似てしまったことを悔やんでるみたいだけど私はそう思ってないしむしろ感謝してるくらいだわ」


優輝は同情したつもりだったが永愛はそんなもの求める様子も一切なくむしろ誇らしそうな態度を取っている

決して開き直っているのではなくただ純粋に本人はそう思っているようだ


「乙女として産まれたからには素敵な恋をしたいと思うものよ。それを自分の手で掴みに行くことは悪いことでもなんでもないもの。私の所にもいつかきっと白馬の王子様がーーー」


「すぐ暴力を振るう21歳は乙女とは呼ばねぇよ。頭ん中のお花畑全部毟ってやろうか」


「うるさいわね!想像くらい自由にしたっていいでしょ!」


幸助と永愛が喧嘩しそうなので優輝が慌てて仲裁に入る

普通ならば 優輝と永愛の立ち位置が逆であるはずなのだが 最年長(21歳) が 最年少(15歳) に宥められていると誰が大人なのかよく分からなくなってくる

程なくして永愛は落ち着きを取り戻した


「つまんない話を聞かせて悪かったわね。ところでアンタたち本当に何しに来たのよ」


「もう目的忘れちまったし帰るよ。気が向いたらまた来るぜ」


「また来るってアンタたちいつまでここに居るつもりなの?上輪旗のお祭りは明日からなのよ?」


「別に祭り目当てじゃねぇよ。ここでそれより大事な目的を果たしたらこの町を出るさ」


そう言って不屈家から退散した幸助と優輝は宿へと戻っていく。家に1人残った永愛は先程まで騒がしかったことを思い出し少しの寂しさを覚えながら母の帰りを待った


そして日が暮れ町は闇に包まれる

時刻は21時で人影は少ない

そんな中両手に買い物袋をぶら下げ足早に歩く女性の姿があった


「今日は忙しくて遅くなっちゃったわ。永愛も心配してるだろうし早く帰ってあげなきゃ」


それは永愛の母親であった。我が家で自分の帰りを待つ娘永愛のことを頭に浮かべながら帰り道を急ぐ


以前、自分が離婚しなければ永愛に寂しい思いをさせずに済むという話をしたら『私にはお母さんがいてくれるだけでいい』と怒られたことがあった

それ以来永愛の前でその話はしなくなったが親子の絆は以前より深まりお互いをとても大切に思っている


遅くなったお詫びとして今夜は永愛の好物を作るつもりの母は袋の中の食材を見つめて微笑む

しかしその時だった


「あのーすみません」


背後から聞こえた声に振り返ると1人の大人しそうな男が立っている

その直後何者かに後ろから抑えつけられたがそう感じた直後に意識を失ってしまった


「ご苦労ごくろーう。ほらよ、約束の金だ」


「あ、ありがとうございます。でも本当にこの女の人に声を掛けるだけでよかったんですか?」


永愛の母を抑えつけた男が声を掛けた男に数枚のお札を渡した。こんな簡単なことでこんなにお金が貰えるだろうか。半信半疑で受け取った男は怯えた様子で問う


「いいのいいの。ただこのことは絶対に誰にも言うなよ?これから俺達が何をするかなんてのも一切考えるな。自分の命が惜しければな。わかったらとっとと行きな」


「は、はいぃ……」


男は逃げるように去っていった。そして辺りに誰もいなくなったことを確認すると男は永愛の母を背負って闇の中へ消えていった


「待ってろよ告白無双。借りを返してやる」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ