不屈永愛
クロの体調不良からやむを得ず立ち寄った町で優輝が絡まれ、それを助けに来た女の子も一緒に絡まれたが幸助が片付けた
腹を殴られながらも礼はすると女の子に言われその後を追いかける2人はやがて1つの木造民家の前で足を止めた
「着いたわ。ここが私の家よ」
「……ついてきて今更言うのも変だけどお前何なんだよ?」
「名乗るのが遅れたわね。私は不屈永愛。家の前で立ち話するのもおかしいしとりあえず入りなさいよ」
不屈永愛と名乗った少女は扉を開け中へと入っていく。幸助と優輝もそれに続いて中へと入る
日が暮れ始めているため室内は薄暗い。永愛は明かりをつけると2人にイスへ座るよう促し自分は台所へ姿を消した
言われたとおり2人はイスに座りクロは優輝が膝の上に置いた
「なんだか言われるがまま来ちゃったけど大丈夫かな?」
「お前が絡まれてんのを助けようとしたみたいだし悪い奴ではないだろ」
「そういえば珍しく素直についていってたね。いつもは相手に突っかかるのに」
「あぁ。それなんだけどなーーー」
「待たせたわね。熱いうちにどうぞ」
幸助の話を遮って永愛が戻ってきた。両手で持ったお盆には可愛らしい花柄の湯のみが3つ湯気を立てて乗っている
そして2人の前に出来立てアツアツのお茶を差し出した
永愛もイスに腰掛け湯のみを持ってお茶を1口飲む
「改めてお礼を言うわ。助けてくれてありがとう」
「助けたと言うか君が勝手に首突っ込んで来てからかわれてただけなんだけど……」
「自爆だよな」
「うるさいわね!お礼してんだから素直に受け止めなさいよ!」
「つーかお前強そうな雰囲気出してたけど実際どうなんだよ?あのまま俺が止めなくても勝てたのか?」
「いえ、2人どころか1人にも勝てなかったでしょうね」
答えを聞いて思わずイスからずり落ちる幸助。永愛が何故そんな自信満々に即答できたのか腑に落ちない
「じゃあなんで首突っ込んだんだよ!」
「だってあいつら情けないじゃない。自分より歳も背も低い子を2人がかりで脅すなんて見てて許せなかったのよ」
「その捨てられた子犬を見るような目を止めて。それに君も僕と似たようなもんじゃないか 」
「だからさっき言ったでしょ。私は21歳なの。あんたよりあいつらより年上よ」
「………そうは見えないけどなぁ」
「あと10個鯖読んでもいけんだろ」
永愛の21歳という発言をどうにも信じることができない2人。それもそのはず永愛は優輝と同じ位の身長で女性らしい部分が発達しているとはお世辞にも言えない。その辺の狭い隙間であっても容易に通ることができそうだ
「……その話はもういいわ。ところであんた達見ない顔だけど旅でもしてるの?こんな小さな町になんの用があんのよ?」
「ああ。本当は上輪旗に行く予定だったんだけどこいつが体調崩してな」
年齢を信じてくれない2人に呆れた永愛は話題を変えることにした。永愛の質問に幸助はクロを指差して答える
「ふーん。上輪旗ってことは祭りを見に行くのね?」
「祭りなんてやってるの?」
「あら知らないの?この時期になると上輪旗は祭りがあってーーー」
上輪旗で祭りが行われるなど幸助達にとっては初耳で永愛が詳しく話そうとすると家の扉が開く音がした
「ただいまー……ってあら?お客さん?」
「お母さん!おかえりなさい」
入口には両手に買い物袋を提げた女性が1人立って幸助と優輝を見つめていた。すると永愛が立ち上がって駆け寄っていく。口ぶりからして永愛の母親なのだろう
「男の子が2人もいるなんて……あなたとうとう彼氏が出来たの!?どっち!?」
「違うわよ!さっきたまたま知り合っただけ!」
「じゃあこれから彼氏になるのね?」
「それもないわよ!」
先走った話をする母に必死で誤解だと伝える永愛。いきなり騒がしくなったことに幸助と優輝は戸惑うだけだった
「そういうことなのねー。幸助君に優輝君、永愛を助けてくれてありがとう」
「いえ、別に大したことしてないので」
永愛の説明により漸く母を落ち着かせることに成功した。永愛の母親は永愛が放つ刺々しい態度とは真逆でとてもお淑やかな女性で言ってはいけないのかもしれないが親子であることがにわかに信じ難い
「それであなた達この後はどうするの?良かったら家に泊まっていかない?旅の話とか聞きたいわ」
「おっ!いいんすか?それならーーー」
「あーすいません!僕達宿とってしまったのでこの辺でそろそろ失礼しますね!」
「それは残念ね。まだこの町にいるならまた来てちょうだい。歓迎するわ」
「ありがとうございます!それではまた機会があれば!ほら行くよ!」
「ちょっ!引っ張るなって!」
急に慌てだした優輝に腕を捕まれ体勢を崩しそうになりながらもなんとか立ち上がり歩き出す幸助。優輝は片手にクロを抱えて振り返り会釈をすると永愛の家を出て行った
「なんで宿とったなんて嘘つくんだよ。泊めてくれるって言うんだから泊まればいいのによー」
「女性の家に泊まるなんて良くないって!もうちょっとデリカシーを持たないと!」
「でもオーナーはこういうとき断ってもいいことないって言ってたしそれに俺たち歌輪の家泊まったじゃん」
「あの時は本当に切羽詰まってたから別なの!とにかく今は宿に泊まれるくらいのお金はあるんだからそうするべきだって!」
優輝が何故そこまで焦るのかわからない幸助だったが何を言っても無駄だと思ったので引かれる腕に身を任せてそのまま歩くことにした
幸助達が去った後をブツブツ言いながら歩く2人組の男がいた。先程優輝に絡み永愛に飛び蹴りされ、幸助に追い返された2人の男だった
「ちくしょう!告白無双め!思いっきり飛び蹴りしやがって!」
「あのガキ達さえいなければ今頃ボコボコにしてやったんだけどな」
「このままじゃ腹の虫が収まらねぇ!なんとか復讐してやりてぇな」
「あーじゃあこんなのどうよ?」
何か閃いたようで耳打ちで何かを伝える。その話が進むに連れて段々と男の顔はニヤつき始めた
「いいなそれ。よっしゃまずは人を集めるとこから始めっか」
これから起こることを想像すると怒りは喜びに変わり足取りが軽くなった男達は町の外へと消えて行った




