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不破 幸助3

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「お父さん!お母さん!」


 サイレンが鳴り響く中で必死に父と母を呼ぶ少年

 少年の周囲にはパトカーと救急車が集まっている


「通り魔だってー」

「怖いわねぇ」

「襲われたの、あの小さい子の両親らしいよ」

「まだ小さいのに可哀想だね」


 サイレンの音を聞きつけ集まってきた野次馬たちがヒソヒソと話す


(俺が可哀想?そんなわけあるもんか。本当に可哀想なのは俺の…俺の…!)


「お父さん…お母さん…」


 少年の叫びは声は次第に小さくなりその代わり涙交じりになっていく


「2人ともごめんなさい…俺が…悪いんだ…こんな体質が…俺さえいなければ…」


 少年が続けようとすると父親が力無き腕で少年を抱きしめる


「いいんだよ…幸助…お前は悪く…ない」


 か細い声で途切れ途切れ喋る父親


「でも!俺のせいで2人とも…」


 父親の胸の中でも続けようとする少年に母親は言った


「それなら…」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ハッと目が覚める


 寝起きで働かない頭を無理やり働かせ自分が眠ってしまっていたことを理解する


「くそっ、またこの夢だ…」


 幼い頃両親を通り魔事件で亡くして以来、よくその時のことを夢で見る

 しかしこの先は思い出せずいつもここで目が覚めてしまう


 ふと、自分が置かれている状況を思い出す。周囲が明るくなっている。朝日が差してきたのだろうか、そして暑い。全身汗でびっしょりだった


 あいつらはもう諦めただろうか

 もし追ってきていたらどうしよう


 不安になった幸助は移動することにした

 そう思い立ち上がると


「なんだよ…これ」


 森が燃えている

 自分がよく遊んでいた山の姿は跡形もなく朝日だと思っていたた明るさも炎のものであった


(まさかさっきの男達が燃やしたのか?)


 頭の中に昼間の男達の顔が思い浮かぶ


 ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ


 いつの間にか火に囲まれていた

 こんなになるまで気づかなかったなんて間抜けな自分に腹が立つ

 しかし今は腹を立てている場合ではないなんとかしなければこのままでは死んでしまう


 このままでは死ん…………


 ふと考えを止めた


「別にいいんじゃないか?」


 誰かが聞いているというでもないが自然と声が漏れた


「俺が死んだところで誰が困る?むしろ喜ぶ人ばかりだしそこまでして必死に生きる理由もない」


 あの男達にやられっぱなしは悔しいが死んでしまえば関係ない。そう考えると不思議と心も体も楽になった

 つまんない人生だったなー。次はもっと普通の人生を送りたいなーなんて諦めていると


「僕が困る」


 いきなり聞こえた自分の声ではない誰かの声

 遂に幻聴まで聞こえるようになったかと自分を笑う


「君に死なれたら、僕が困る」


 しかしその声は確かにはっきりと聞こえる。違う!これは幻聴なんかじゃない!


「誰だ!どこにいるんだよ!」


 必死に声の主を探すが姿はない


「ここだよここ」


 声がしたのはーーーー足元?

 下を見るとーーーーー


「にゃー」


 1匹の黒猫がいた

 その瞬間自分の頭を巨大な金槌で殴られたような感覚

 実際に殴られたことはないがきっとこんな感覚なのだろう


 絶体絶命の状況で死を覚悟した自分を求めてくれたその存在は自分がこの世で最も嫌悪しているものであった


「はは…こんな時まで現れるのかよお前達は…しかもなんか喋ってるし…今日の黒猫ラッシュはこの時のためか…」


 呆れ果てて笑うことしか出来ない

 そんな混乱した幸助を気にせず黒猫は淡々と続ける


「何度も言うが君に死なれたら困る。この場から脱出するよ」


「逃げる?どうやって?お前状況わかってんのか?そもそも猫なんかに何が出来んだよ?」


「質問が多いな君は。どうやってってこうするんだ……よっ!」


 すると黒猫の体は光だしその光は形を変え幸助へ一直線に向かってきた


「え?うわぁぁぁぁぁぁぁ!」


 大きな悲鳴をあげる幸助の両拳にその光は命中した


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