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不破 幸助2

「はぁ…またかよ…」


 日課である散歩の帰り道、1匹の黒猫に横切られた幸助は呟く


「これで3回目か。1回目は鳥の糞が落ちてきて2回目は猪に襲われて、毎日思うけどいつ死んでもおかしくねーなこりゃ」


 こちらも日課?となってしまったことにため息をつきながら家へと向かう


 ふと村の方へ目を向けると村の中心にある神社が目に入った


「こうなったら神様にでもお願いしてみるか。黒猫の悩みを黒猫にお願いするのも変な話だけど」


 独り言を続ける幸助の散歩はまだ終わらない


「不幸助だーっ」「不幸助が来たぞーっ」「早く家に隠れろーっ」


 かつては村の宝と呼ばれ可愛がられたこともあったが今ではこのような扱いである


 隔離されてからも村へ訪れることがあったがその度に扱いが酷くなっているような気がする幸助

 きっと噂に尾ひれどころか手足が生えて時間が経つにつれて1匹の化物が生まれてしまったのだろう


 そんな扱いにもとっくに慣れてしまっていた幸助は周囲の悲鳴にも表情を一切変えず真っ直ぐ神社へ向かった


「神様仏様黒猫様ーどうかこの俺を黒猫の呪いから助けてくださいませー」


 どうせ叶うわけないだろうと思いながら冗談交じりにお願いしてみる

 すると


「みゃー」


 答えた!?と思い周りを見回すと黒猫が前を横切った

 願った側からこれかと思い頭をかきながら1つのことに気づく

まだ3回目の分がきてない

 3回目が来る前に4回目が来てしまった


「なんか嫌な予感がする」


 妙な寒気に襲われた幸助は急いで帰ることにした


 家に帰る途中村で怪しい人影を発見する。この何もない寂しい村に酷く似合わない、スーツを着てサングラスをかけた3人の男たち

 全員背が高く服の上からでも屈強なことがわかる


「なんともヤバそうな奴らだな関わる前に逃げよう」


 すると男たちがこっちを見た


(ヤバイ目が合った)


 目を逸らしながらもう一度男たちの方を見るとなにやら話をしている。しかしそれ以上はとくに何もなかった。それがまた不気味で急いでいた幸助の足をさらに加速させた


 そして夜

 昼間の3人組はなんだったのだろうと考えたが大した答えも浮かばず気になりつつもそれ以上考えても無駄だという結論に至り


「寝よう」


 考えることを止めた


 横になり数分経ったころ外から声が聞こえてくる


「おい!本当にこんなとこに家があるのか!」

「間違いないさお前も聞いただろ?」

「村のおっさん脅したら簡単に喋ってくれたなぁ」

「あの顔すげー面白かったわー」


(男の声、数は3人?)


(昼間の男達か?)


(まさか目的は俺か?なんで?)


 そう考えているうちに声が近くなってくる


(1人ならなんとかできそうだけど3人は無理だって。どっか逃げられる場所は…裏の山だな)


 思いついたのは隔離されてからよく1人で遊んでいた裏山である


(声は入口の方から聞こえるから少しもったいないけど…!)


 幸助は近くにあった鍬をとり入口と反対の壁に力いっぱい振り下ろす

 バキッと木が折れる音と共に壁に穴が開いた


(ここから外へ…)


 と思ったとき


「なんだ今の音は!」

「気づかれたか!」

「クソッ急げ!逃がすな!」


 男達の焦る声。壁に穴を開けた音で逃げるのがバレてしまった

幸助は鍬を手に森の中へ消えていった




「ハァ…ハァ…だいぶ奥まできただろ」


 外は暗く明かりになるものと言えば月と星の光だが、草木に阻まれその光は幸助まで届かない


 それでもここまで来ることができたのは頻繁にこの山に訪れていた幸助だからである


 地形を足が憶えていたからだ


「ここで一晩まてばあいつらも諦めて帰るだろう」


 安心したせいか、疲労と眠気が一斉に押し寄せてきた

 こんなところで眠るわけにはいかないと思いつつも幸助の意思などおかまいなしに睡魔は襲いかかってくる


 必死に耐えてはいたが睡魔に勝つことはできず、いつの間にか木にもたれかかるようにして眠ってしまっていた



「クソッ逃げられちまった」

「こんなに暗いんじゃ森の中なんて探せねぇよ」


 逃げられたことにより意気消沈してしまった2人の男達をよそに1人余裕の表情を浮かべる男


「おいおい諦めるのはまだはやいだろ?」

「そう言ったってどうするんだよ?」

「木が邪魔だし暗くてよく見えねぇよ」


 2人の男の問いかけに対し余裕そうな男はタバコを吸い始める


「空が暗いなら地面を明るくすればいい。木が邪魔なら…」


 男はタバコを吸いながら


「燃やしちまえばいいんだよ」


 そう言ってタバコを下に落とす

 草に燃え移った火はまた別の草へ燃え移り男達がその場を去る頃には巨大な火柱が出来上がっていた


「一晩待てばガキの丸焼きが出来上がんだろそうすれば依頼は終了だ」


 男は醜い笑みを浮かべ村へと帰っていった



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