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天羽歌輪

「行きましょう。私の家は町の外にありますから」


噂の少女に案内されるまま幸助達はその後ろ姿を追っていく

昼間くぐったばかりの見覚えのある門を再びくぐり町の外へ出た


「ちょっと待ってよ。町の外に家があるって大丈夫なの?熊とか出ないの?」


「熊?そんなのこの辺にはいませんから安全ですよ」


そんな心配をする人を初めて見たと女性はキョトンとした後クスクスと笑った


優輝とクロは同時に幸助を睨みつけた


「お、俺のせいじゃないからな。……多分」


話をしているうちに少女の家へと到着した。町で見かけたレンガやコンクリートで建てられた家に比べこの家は木組みで質素なものであった


「こんなところに一軒だけ家あって襲われたりしないんすか?あの町の金持ちに追われてるんすよね?」


「幸いあの人達は私の家が町の中にあると思い込んでくれてます。今日もコッソリ町の様子を見に行ったんですけど見つかっちゃって」


町の外は更地が広がっており、小さな木組みの家といえどその存在はひどく目立つ。追われている身でありながら所在がバレていないことは不幸中の幸いであった


そしてここから噂の少女についての疑問を幸助達はぶつけていくことにする


「俺達、聴く人を幸せにする歌の噂を聞いて近くの村から来たんですけど」


「私自身自覚はないんだけど、あの町で私の歌を聴いてくれた人達は皆さん嬉しそうな顔をしてくれますよ」


「あなたはなんで少女って名前がついてるの?どう見ても僕より上だと思うんだけど……」


「私はまだ15歳なので町の人達から見たらまだまだ少女なのかもしれませんね」


「「15歳!?」」


3人の全身に稲妻を受けたかのような強い衝撃が走った。幸助と優輝は大声を揃えて驚き、クロも声が出そうになったがなんとか飲み込んだ。それほどまでにこの少女は大人びていたのだ


「年下…。どう見ても20歳は超えてると思ってた」

「うちの姉ちゃんより大人っぽいんだけど」


「年齢の話をすると皆さん驚かれます。自分で言うのは恥ずかしいのですが容姿を褒めていただくことも時々あります」


「ですが、それが原因なのでしょうか。数週間前、この町にとあるお嬢様が引っ越して来ました。そのお嬢様がどうやら私のことをよく思ってないらしくて」


ここまで話を聞いた限り泉が話していた内容とほぼ同じだった

簡単にまとめるとこの町にキレイで美声持ちの女性がいてここに越してきたお嬢様はそれが気に食わず消そうとした。要するに嫉妬というやつであった


「あんたはこの町を出る気はないのか?」


「はい。私はこの町が好きで、歌を聴いてくれる皆さんも好きです。それに出ていくお金なんてとてもありませんし…」


少女は俯いてしまった


幸助は考える。この少女のために何か出来ることはないか

この町でまた歌声を響かせる方法はないのか


「よし、乗り込もう!」


「は?」


「直接話さないと解決しないだろ」


「話して解決する問題じゃないんじゃないの?もしダメだったら?」


「ダメだったらそんときはそんときさ」


幸助の突飛な策に優輝はすかさず反応した。優輝の質問に対して幸助は目を光らせておぞましい声で答えた


「力ずくで言う事聞かせるだけだよ」


優輝は幸助に圧倒され反対意見を述べることも、そもそも反対する気も失ってしまった


「つーわけでよろしく。あんた名前は?」


天羽歌輪あもうかりんです。よろしくお願いします」


「不破幸助だ。こっちは黒猫のクロ。よろしく」

「不動優輝だよ。よろしく」


自己紹介を終え気づけば外は白んでいた。昼間に作戦を決行することを決め、一同は睡眠をとることにする

中途半端な睡眠だったこととそこからの戦いとで疲れていたのかすぐに全員寝てしまった




空高く日が登り窓から差し込む光で目が覚める

満足に睡眠がとれたので目覚めが気持ちよかった

「よっしゃ。やるか」


身支度を済ませ家を出る

歌輪には町で目立たれると困るので変装をしてもらった

長く透き通った白髪は束ねて短くし、その上に帽子を被ってもらう。服装は普段あまり履かないというジーンズを履いてもらい、最後にサングラスをかけさせた


「これで完璧だな」

「すごく有名人みたいな感じが出てるんだけど」


これはこれでまた目立ってしまいそうだがこれ以上はどうすることも出来ないので人気のない道を進むことに決めた



そして再び歌巻の門から入場


「そのお嬢様の家ってのはどこなんだ?」


「この道を真っ直ぐ進んだところに見えるあの家です」


歌輪が指指す先には一際目立つ大きな家が建っていた。その大きさに幸助と優輝は圧倒される


「あんなにデカイのになんで俺達気づかなかったんだろうな」


「いろんなことで頭いっぱいだったからね」

命の危険に晒され、やっと着いた先ではお金がなく野宿。そこで訳のわからない男に絡まれた

前日の出来事を思い出し優輝は一筋涙を流す

目的地はわかった。後はそこまで目立たずに行くだけ

人気のない道に入ろうとした時


「あれ歌輪ちゃんじゃねーか!?」

「ホントだ!歌輪ちゃんだ!」

「久しぶりーどこいってたの?」


あっと言う間にバレた。わらわらと寄ってきた町民に幸助達は弾き飛ばされ歌輪の周りにはたちまち人混みが出来上がった


「どうするんだよ!早速作戦失敗じゃないか!」

「ま、まぁ任せろ。この人達も事情を説明すれば大丈夫だろ」


「あのーすいません。僕達歌輪さんに用事があるんですけどー」


低姿勢で近づいた幸助だが話など聞いてもらえず大きな群れに弾き飛ばされた


「クロ、力を貸せ。こいつらまとめて吹き飛ばしてやる」


「やめなよ。話がややこしくなるじゃないか」


ゆっくりと立ち上がった幸助はとんでもないことを言い出したがクロによってなだめられる

それよりも今は怒るよりこの騒ぎをどうするかが先決であった


「でもこのままじゃマズイね。歌輪がこの町に来たと奴らに知られたら……」



「どけコラテメーらあぁぁぁぁ!!」


町民のざわめきは突然あがった大声によって静まった

その場に現れ注目を奪っていったのはいかにも悪そうな風貌で腰に刀を差した男だった


「やっぱり…。あいつら来ると思ったんだよね」


その見た目からして昨晩の揉めた男達の仲間であることはすぐにわかった

男は町民達へ近付いていく


「俺達ゃそこの女に用があんだ。道を開けな」


「待てよ!お前はあの金持ちの仲間なんだろ?歌輪ちゃんを連れてって何をする気だ!」


正義感の強そうな男がその前に立ちふさがったが近付く男の足は止まらない


「おいっ!聞いてんのかよ!」

止まらない足を止めるため肩に掴みかかるが殴られ尻餅をつきたちまち戦意喪失してしまった

周りからは悲鳴があがる


「うるせんだよ。聞こえなかったならもう1度言う。どけ」


男の鋭い目つきで町民は一斉に道を開ける。すると歌輪へ続く一本道が出来上がった


「事情はわかってんだろ?うちのボスがあんたに用があるんだ。来てくれるよな?」


「そりゃよかった。俺達もお前のボスに用があるんだ」


背後からの声に男は振り返る

この後に及んでまだ邪魔をする命知らずがいたのかと呆れてしまう


「誰だか知らねぇがそのバカみてぇな度胸に免じて教えてやろう。俺は鰐鮫わにざめ 虎太郎こたろう。笹江家に仕えるクソ強ぇ男さ」


「俺は不破幸助。いつかは世界を救うクソ強ぇ男だ」


「面白ぇ奴じゃねぇか。ちょっと遊んでやりたくなった」


「遊びで済めばいいけどな」


相手と言葉を交わすうちに更に興味が湧いてくる。互いに視線をぶつけ合い、これから拳をぶつけ合うと思うと期待で小さな笑いが漏れ出してしまう


「優輝、予定変更だ!歌輪とクロを連れてボスと話つけてきな!」


「はぁ!?もうめちゃくちゃじゃないか!行くけど!」


「僕も行っちゃっていいのかい?合体出来た方が良くない?」


「そればっかに頼ってられっかよ。俺は強くならなきゃなんねぇんだ」


心配したクロは幸助の肩に乗り自分を残すことを勧めたが彼の言葉と表情を見て何かを察したようですぐに地面に降りた

そして優輝達の前に立ち、この町の奥を指す。虎太郎が言っていた笹江家だ


「行こう!」

優輝は歌輪の手を取って走り出した

去ってゆく優輝達を虎太郎は止める素振り

を全く見せず背中で見送った


「すんなり行かせてくれるじゃねぇか。助かったぜ」


「今、俺の興味はお前にある。個人的な興味で動くのは禁止だから後でお嬢にどやされるんだろうが、それでもお前と戦いてぇんだ」


「そうかよ。じゃあかかってこい」


幸助の言葉が合図となって互いは同時に駆け出し、握り締めた拳をぶつけ合った





「幸助、大丈夫かな。あいつすごく強そうだったけど」


笹江家を目指し走り続ける優輝はポツリと呟いた


「心配しなくても大丈夫だよ。幸助は勝つから」


「そんな根拠もないのに……って、今は喋っちゃダメじゃん!」


現在この場には優輝、クロ、そして歌輪がいる。歌輪はクロが喋る黒猫だということは知らないので優輝は慌てて注意するが遅かった

後ろを走る歌輪の顔はとても驚いていたが


「不思議な猫さんですね。私とも後でお話してください」


必死過ぎてまともな思考能力が働いていないのかただ動じないだけなのか

あっさりと受け入れられた


「ねっ?大丈夫だって」


「ねっ?じゃなくてもー、まぁなんでもいっか」


「それより心配すべきは自分だよ。ほら来た」



「「「っしゃコラァァァァァァァ!」」」



前方からは昨夜見た男達と同じような格好をした集団がこちらに走ってきていた


「歌輪が来た噂を聞いてあの鰐鮫って奴と一緒に出てきた奴らかな。まとまってるなら君の武器で一撃じゃないか」


「まかせて!もう昨日の夜みたいな失敗はしないから」


走っていた優輝が急ブレーキをかけると足元から大量の砂煙が舞い上がる

背後にいた歌輪はもろに砂煙を受け思わず目を瞑り咳き込んだ


そして目を開くと自分の目を疑った

さっきまで自分は日光に照らされていたはずなのだが今の自分は大きな影に覆われている


そして顔をあげると目の前には巨大なハンマーがそびえ立っていた


「よくこんなサイズまで大きくできたね。初めて見たよ」


「僕もビックリさ。なんでだろうね、すごくヤバイ状況なのにワクワクして仕方ないんだよ!」


優輝は集団へ向けてハンマーを振り下ろした







「町に大きな穴開けちゃったけどいいの?」


「やり過ぎちゃったみたい。テンション上げすぎるのもよくないね」


優輝達は笹江家を目指し走り続ける


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