表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/154

新たな敵


幸助達が走り出してから間もなく、前方から人影がこちらに向かってやって来るのがわかった

村人達の視線も全てその人影に向いていることからソレがこの騒ぎの原因と言っていいだろう


見える人影は1つ、ではなく2つ

ただしこちらへ向かって来る人影は1つでもう1つはどうやら肩に背負われているようだった

幸助達と人影の距離は徐々に縮まり漸くその姿が見えた時、幸助含む不動一家の足は急停止した

そのタイミングでどうやら向こうもこちらの姿が見えたらしく話しかけてくる

「あら、アナタね。あたしの子とこの子が言っていた真っ黒な髪の毛の子っていうのは」

「あの制服は…」

「星降守護部隊だと…?復讐にしても早すぎる」

幸助に続けて剛也が口を開く

彼らの再来は驚くべき早さであったがそれ以上に驚く点が幸助達にはあった

それはその見た目と中身

2メートル程の長身に無駄なく付いた筋肉は見た目以上の大きさを感じさせる

しかしその言葉遣いは見た目にそぐわない女性のような喋り方をしていた

「何しに来たかはわかっているわよね?よくもあたしのカワイイーーー」

「ちょっと待て」

幸助達があまりの情報の多さに圧倒されていると男が喋り始めてしまったので幸助は一旦静止させる

「何か?」

「何か?じゃねーだろ!何だそのギャップは!受け入れるまで時間かかんのに勝手に話進めてんじゃねーよ!あとその無駄に長くてキラキラしたロン毛がなんか腹立つんだよ!」

「何言ってるのあなた。髪は女の命でしょ」

「おっさんだろテメーは!」

走ったことと声を荒らげたことにより幸助は既に息を切らし呼吸が荒くなる

そこで泉がある事に気づいた

「優輝!」

名前を呼ばれ優輝は顔を上げる

男の肩の上で

「あぁこの子ね。村の外で拾ったの。あなた達知り合いなら返すわ。もう用はないし」

そう言って自分の肩で干された布団の様になっている優輝を摘み上げそのまま放り投げた

宙を舞った優輝を受け止めるべく全員が動き出すが間に合わず

誰にも受け止められることなくその体は地面へと叩きつけられた

「優輝!大丈夫なの?」

泉が1番に駆け寄り仰向けのまま動かない優輝の体を起こす

そして優輝は数秒遅れてきた幸助の顔を見て申し訳なさそうな表情をする

「ゴメン、お前の居場所を喋っちゃった。知られないように頑張ったんだけど脅されたら怖くなっちゃって…」

だんだんと声が小さくなり目を逸らす優輝に対して幸助は大きなため息をついた

「お前はやっぱり弱っちい奴だな」

頭を掻きながら呆れた様子の幸助に優輝はもう一度ゴメンと言おうと口を開くがその前に幸助の言葉で遮られる

「けど今はそれでいいんだ。人間そんな簡単に変われたりしねぇ。それにあいつらだっていつか来るんだからそれが早いか遅いかってだけだろ」

そして幸助は男の方へ目を向けて立ち上がる

優輝にはその背中がとても頼もしく見え、そこでまた呟く

「…カッコイイなぁ」


「あなたなかなかカッコイイこと言うじゃない。名前を聞いてもいいかしら?」

「おっさんに褒められてもうれしくねーよ。不破幸助だ」

「幸助ちゃんね。じゃああたしのことも教えてあげる。星降守護部隊の早乙女乙姫さおとめおとひめ。称号は乙女座バルゴ。序列は9よ」

「気持ちわりぃ呼び方すんな!」

幸助は一直線に乙姫に向かって走り出す。拳を握りしめ一気に距離を詰めるが

ピシィィン!

その拳は届くことはなく謎の鋭い音によって詰めた距離も幸助が吹っ飛ばされたことにより元に戻ってしまっていた

(吹っ飛ばされた?何をされた?ってかいってぇ…)

腹を抑えながら立ち上がり幸助はもう一度走り出すがやはり同じことの繰り返しであった

しかし1度目に抱いた幸助の疑問は2度目に確信へと変わった

「お前の武器…鞭だな?」

「あら!見破るなんて凄いわねあなた。そう、あたしはこの大きな手の中に鞭を丸めて隠してるの。小さいからリーチは短いけどね」

体を起こし問うと乙姫はあっさりと答えを明かした。手を開くと中には折りたたまれた小さな鞭が見える

(スピードは厄介だけど避けられない程じゃねぇ。最悪当たっても我慢すれば1発入れられる距離だ)

1度目を閉じ深く息をして、吐く

目は相手を真っ直ぐと見つめ走り出す

乙姫は迎え撃つために鞭を構える

だがそのタイミングは先ほどの2回よりも圧倒的に早い

「だから この鞭はここまで」


ピシィィン!


「!!」

幸助の体はまたしても吹き飛ばされた

(おかしい、あの鞭のリーチには入ってないはず、しかもさっきよりも痛てぇ)

幸助は驚愕の表情で顔を起こし乙姫を見る

乙姫はその表情を見透かしていたかのように幸助の顔をニヤニヤしながら見下ろしていた

「リーチには入ってないのにおかしい、って思ってるのよね?」

表情だけでなく心まで見透かされ幸助の顔は悔しさを隠しきれなかった

「正体見破られたならそこまでってだけよ。それなら今度はこっちで相手してあげる」

乙姫の両手には先ほどの鞭よりも長く、太さも増した鞭が握られていた

「休む暇なんて与えないわよぉ!」

乙姫は腕を振り上げ鞭を振るうと同時に幸助はすかさず横へ飛んだ

(デカくなった分さっきよりスピードが落ちてる。これなら…)

鞭を回避した幸助は一直線に走る

「あたしを見つめてくれるのは嬉しいけど、こっちも見てないとダメよ」

先ほど回避した鞭が次は薙ぎ払うように幸助へと襲いかかる

「そんくらい分かってんだよぉ!」

幸助は左足に力を込めるとそのまま大きくジャンプした

鞭は空振り、幸助と乙姫の距離は一瞬で縮まる

宙に浮いたまま残った右足を振りかぶりカカト落としの態勢に入った

(とった!くらいやがれ!)

「とか思ってんじゃないでしょーね」

フリーだった片手から出てきたのはさっきしまった小さい鞭

それは避けられないスピードで幸助を地面へと叩きつけた

「甘いわね、だから言ったでしょ。こっちも見てって」

「甘いのはお互い様みてぇだな」

地面へ叩きつけられたまま片手を軸に回転し足払いを狙うが乙姫はジャンプで軽々しく躱した

しかし着地した時には態勢を整えた幸助の拳が乙姫の目の前に迫っておりそのまま左頬を捉えた

すかさず後ろへ飛び2発目を回避する

「驚いたわ。まさか1発貰うとはね」

頬を抑えながら眉間に皺を寄せる

だがそれ以上に苦しい顔をしていたのは幸助の方であった

(まだたった一撃入れただけだ。せめてクロの力があればもっとなんとかなんだろうけど)

幸助がそう思った瞬間だった

「待たせたね、幸助」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ