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不破 幸助

 [黒猫村]


 古くからある村で黒猫を神様として祀っている

 村の中心に神社がある以外は見渡す限りの山、畑、田んぼで“ド”をいくつ付けても足りないくらいの田舎である

 テレビがなくラジオもなければ新聞もない。そんなセルフ鎖国状態のこの村の外れにある古びた小さな家で生活しているのが「不破幸助ふわ こうすけ」18歳


 幼い頃に両親を亡くし、遠い遠い親戚に引き取られこの村にやってきた幸助だがこの村のことは正直好きではなかった

 理由はこの村で神として崇められている黒猫

 それは幸助がこの世で最も嫌いな存在であったからだ


 事の始まりは幸助が5歳の頃

 母親に連れられて公園で遊んでいた幸助の目の前を1匹の黒猫が横切った


 その直後、幸助は遊具から落下、右腕の骨を折るケガを負う

 思えばそれが幸助と黒猫の因縁の始まりであったのだろう


 それからというもの黒猫は幸助の前に現れ続けその度に幸助は痛い目を見続けた

 転ぶ、ぶつかるは日常茶飯事で何かが落ちてくることもあったがどこからともなく降ってきたナイフが頬を掠った時は腰を抜かして動けなかった


 そして幸助が10歳のとき、当時仲の良かった友人が車に轢かれる大事故に巻き込まれた。命に別状はなかったが数ヶ月入院する大怪我を負ってしまった


 幸助の力は自分だけではなく周囲にも影響を与える程強くなっていた


 幸助の話をよく聞かされていたその友人の両親は大激怒。2度と幸助に近づくなと厳しくしつけ、学校も転校、幸助と友達が顔を合わせることはそれ以降1度もなかった


 その事件以来、もともと避けられていた幸助の周りに人はいなくなりいつの間にか「不幸助」などというあだ名まで付けられ疎まれた

 今まで見守ってきた両親たちも今回の件でさすがに不安になり幸助を病院に連れて行くことを決めたがその途中で事件に巻き込まれ、亡くなってしまう


 年を重ねるごとに大きくなっていった幸助の力は遂に両親の命を奪うまでになってしまっていた

 幼くして両親を亡くした幸助を可哀想に思った親戚は幸助を引き取ることに、こうして黒猫村にやってきた幸助の新しい生活が始まった


 村にやってきた幸助を村人達は孫が出来たようだと可愛がり、子供がいないこの村で村の宝だと呼ばれたりしていた

 そんな村人達の優しさに触れ、次第に心を開いていった幸助は家事をしたり、畑仕事を手伝ったりして逞しく成長した

 その間、まだ黒猫に遭遇することはあったものの回数は減り、力は治まってきたものだと幸助は思っていた


 この村では絶対に秘密にしようと決めた自分の力。バレたらきっと自分の周りからまた人がいなくなってしまうから

 しかし、幸助が12歳になったときである


 よく家事を手伝いに行っていたとある猟師が熊を獲るところを見せてやると数人の猟師仲間と幸助を連れて森へ行ったのだ

 村で1番の腕を持つ猟師だったため親戚も安心して送り出した

今夜は熊鍋をご馳走してやるなんて言う猟師達に幸助は胸を踊らせた


 だがそんな時


 みゃおーん


 黒猫が彼らの前を横切った

 黒猫を神としているこの村の猟師達は当然喜んだ。この狩りが上手くいくように神に向かって掌を合わせる

 同じように幸助も掌を合わせる。どうか何も起こらないように、と。


 そんな幸助の願いは虚しく森に着いた彼らを待っていたのは熊の群れであった

 熊には慣れていたはずの猟師達の足がすくんでしまうほどの数であった

 熊に襲われながらも彼らは命からがら逃げ切ることに成功した


 出発前、両手では数えられなかった猟師達を片手で数えられるまで減らして


 数日後、村にはとある噂が広まっていた。村に帰ってきた猟師達が口を揃え言っていたのだ

 逃げている最中、幸助の背後に巨大な黒猫の霊を見たと

 小さな村なこともあり噂は瞬く間に広がって幸助の耳に入るのもすぐであった

 幸助を批判する声も多少あったが村人達は幸助を庇った。熊に襲われて無事帰って来れたのはきっと黒猫の神様のおかげだから


 もし神様がいなかったらきっと全員死んでいたはずだ、と


 しかし実際に多数の死者がでていることから幸助を庇う声は徐々に減り事件から1年経ったある日、幸助は村の外れにある小さな家に隔離された

 噂を聞いた時から幸助自身そうなる気は薄々していたし、むしろ1年もったことに驚きを感じながら素直にそれを受け入れた。それから今まで、幸助はずっと1人で暮らしてきた


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