現代版リアル『三匹の子豚』!
リアルシリーズ第6弾です。
ちょっと長め?ですけど、ご感想等いただけると嬉しいです。
むかしむかし、あるところに3匹の子豚がいました。
長男ブタ10歳、次男ブタ8歳、三男ブタが5歳になったある日のことでした。
子豚たちのお母さんは夜の街で出会った若い男と駆け落ちし、家を出て行ってしまったのです。
その際、「お母さんは未知なる愛の世界へ旅に出ます。 探しちゃだめよ♡」と、置手紙がされていました。
なんちゅう自由奔放な母親でしょう。
思わず3兄弟そろって「母親に倍返しだ!」と叫びたくなりましたが、ここはグッとこらえて我慢です!
まあ母親がアレなんで、3兄弟は己の力で生きていくことにしました。
まずは就活です。
お金が無くては何事もままなりません。
真っ新なスーツに袖を通して商社へレッツゴーです!
幸いにも円安好景気に恵まれ、3匹の子豚は子供といえども一流企業に就職先が決定しました。
就活ニートな筆者には羨ましい限りです。
さて、これでお金には困りそうにありませんが、住む家がありません。
そこで3匹の子豚はそれぞれの家を建てることにしました。
まずは三男ブタです。
好奇心あふれる5歳児なので、オモチャのブロックで家を作ってみようかと思いましたが、耐震性に難ありと反省です。
そこで市場に行き、ブロック以外の適当な材料を購入することにしました。
すると丁度ワラを持った農夫に出会いました。
これでお家を作れば素敵な家ができあがるに違いありません!
「ちと、よいかそこの者」
5歳児とは思えぬ発語です。
「どうしたんだい、子豚君?」
「実は今度、余の家を建てることになってな。 うぬの持っておるワラを譲ってはもらえぬか」
農夫は色んな意味で震えあがりました。
かれこれ40年間生きてきましたが、『オッサン』や『オジサン』と呼ばれることはあっても、まさか5歳児から『うぬ』と呼ばれる日が来ようとは夢にも思わなかったからです。
一人称が『僕』ではなく『余』とは末恐ろしい魔王ブタです。
やはりここは要求にしたがうべきでしょう!
「ど、どうぞ」
「うむ、確かに受け取った。 また家が完成したら、余の家に親子ともども雁首揃えて来るが良い」
三男ブタは農夫からワラを受け取ると、マントをひるがえして去って行きました。
出だしからこれまたハードな家になりそうです。
お次は次男ブタです。
次男ブタは寝る前にお母さんに読んでもらったグ○ム童話を思い出し、お菓子の家を作ってみようかと思いましたが、耐震性および耐久性etcに難ありと猛反省です。
そんなこんなで結局市場に出掛けました。
すると途中で木の板を持った男と出会いました。
このまま声をかけて板を譲ってもらおうかとも考えましたが、最近はシロアリ等がさわがれているご時世です。
虫によって家が腐食してもアレです。
「ぬぅ」
次男ブタは木の板を諦め、市場に戻りました。
すると今度は鉄筋コンクリートを所持した農夫と出会ったのです!
あんなチートアイテムでお家を作れば素晴らしい家になるに違いありません!
「そこの御仁!」
「ん? どうした――んだね、子豚君」
農夫は目の前に現れたブタを見て一瞬、狼狽しました。
どうやらさっきの魔王ブタとは違って安全そうですが、やはり口調に難ありのようです。
「その鉄筋コンクリをもらえぬか? 今度家建てることになり、必要となった」
「悪いね坊や。 これは工事に使うやつだから無理だ」
「そこを何とか! おぬしの力量でなんとかして見せよ!」
「ムリだと言ってるだろう!」
農夫が苛立って言い放つと、次男ブタは一気に表情を曇らせます。
「も、もう我慢ならん……」
次男ブタは懐から一枚の写真を取りだしたかと思うと、それを水戸黄○の如くご丁寧にも提示しました。
「キサマはこの写真が目に入らぬか!!!」
「そ、それは俺の愛人とのキスシーン!!!」
そうです!
用意周到な次男ブタは農夫のオヤジが浮気していることを知り、事前に証拠を集めておいたのです。
こんなのを嫁さんに見せられたんでは、家庭崩壊モノです!
「この我を誰と心得る!! おそれ多くも先の副将軍、水戸光ブタ公であるぞ!! 頭が高い、控えーい!!」
「へへーっ!!!」
なんか反射的にひれ伏します。
またまた色んな意味で震えが止まりません。
「もしおぬしが鉄筋コンクリを譲ると申すなら、この写真の件は不問としよう」
「へへー!! どうぞお好きなだけ持って行ってくだせえ!」
かくして次男ブタもたくましく資材を手に入れ、建設予定地に帰っていきました。
次男の家も超ハードになりそうです。
最後は長男ブタです。
ブロックやお菓子の家を作ろうと考える幼稚な弟たちとは違い、いつかは作ってみたい愛と夢であふれる素晴らしいお家にしようとしました。
しかしよくよく考えてみると、無形物の愛や夢では家を作れないし、耐震性・耐久性以前の問題だと大反省です。
さて、そんなこんなで市場に出掛けると、レンガを持った農夫に出会いました。
「あーちょっと、そこの兄ちゃん」
「なんだね、子豚――」
農夫の男は手にしていたレンガを落としてしまいました。
一難去ってまた一難。泣きっ面にハチとはまさにこのことでしょう。
やっと魔王ブタが去ったと思ったらお次は副将軍ブタ。
しかも今度はさっきの2ブタよりも大きめのブタがやって来たではありませんか!
「今度俺の家作るんやけど、レンガもらってええか?」
「もうやだこの会話」
農夫は子豚の前で泣き崩れました。
きっとこのブタさんもロクでも無い御身分に違いありません。
また印籠とか見せられる前に、農夫は手にしていたレンガのすべてを長男ブタに渡して去って行きました。
――☆――☆――
3匹の子豚がそれぞれの家を建てたある日のこと。
ブタさんたちが一人暮らしをしていると耳にしたオオカミがやってきたのです。
「ぐへへ、これがブタの家か」
よだれを垂らしながらやってきたのは、チャーシュー県トンカツ市にある三男ブタのお家でした。
これまた見事にワラで家が作られてあります。
こんなヤワな家は楽勝だろうと余裕をぶっこいていたオオカミでしたが、魔王ブタ攻略がハードモードになるとは、予想もしていませんでした。
コンコン、
「やあブタさん! この戸を開けてくださいな!」
すると中から返事が返ってきました。
『余はブタなんぞではない』
「えっ!?」
『余の名は魔王。 この宮殿を支配する闇の帝王ぞ』
「なにーッ!!」
オオカミはあわてて家の表札を確認しに戻りました。
「はうっ!」
なんと表札には確かに『まおー』とアンニュイな字で書かれているではありませんか!
どうやら襲う家を間違えたようです。
これはとんだ失礼を、と帰ろうとしましたが、『まおー』の文字の下にカッコ書きで“ブタの家”と書かれていたのでリターンしてきました。
「おいブタ野郎! 騙しやがったな!!」
ブタのくせにファンタジーを語るとは許せません!
闇の宮殿の原材料がワラとは笑止千万なのです!
そこでワラの家を吹き飛ばしてやろうと思い、オオカミは息を吸い込みました。
「フーフーフーの、フーッ!!!!」
力いっぱい息を吐きだします。
これでもかつては水泳選手だったので肺活量には自信があります!
しかし、どれだけ一生懸命息を吹きかけても家はビクともしません。
オオカミが首を傾げていると、またまた家の中から魔王――いえ、ブタが話しかけてきました。
『うぬには不可能だ』
「な、なぜだ!!」
『この建物はワラでできておるが、うぬの吐息で崩れるほどヤワな造りに非ず。 法を順守して設計しておるわ!』
兄弟をはじめ、魔王ブタも5歳児にして法律家です。
建築基準法で最低でも震度6に耐えれるよう設計しなければいけないことを、熟知したうえで建築しております。
「ならば燃やすまでだ!!」
オオカミは手にしていたライターでワラに火を点けようと試みました。
しかしワラには防火剤が塗られており、火が点きません!
「むぅ!」
オオカミは火炎瓶を窓から投げ入れる作戦に移行しました。
外面はコーティングしていても、中身は単なるワラに違いありません。
所詮はもろ刃の剣です!
「行けぇ!!」
パリーン! ボボッ!!
投げ入れられた火炎瓶は割れ、家の中で燃え広がろうとしました。
このままでは中にいる魔王ブタも焼き豚になってしまいます。
『フッ、愚かなオオカミよのう』
「なにっ!?」
火炎瓶が投げ入れられた瞬間に家のスプリンクラーが作動し、オオカミの作戦は意図も容易く挫折してしまいました。
魔王ブタの家は大型なので、こちらも建築基準法及び消防法をもとに設計されております。
法律家の家でアウトローなコトは許されません。
『フン! 余の宮殿を壊そうなんぞ、1兆年早いわ小僧!!』
小僧に小僧と言われる日が来ようとは思いませんでした。
5歳児のブタにすっかりバカにされ、激怒したオオカミはこう言ったのです。
「ブタに倍返しだ!!」
ヤケになったオオカミは自衛隊に頼み込み、金を積んで戦車を借りてきました。
もちろんメイド・イン・ジャ○ンです。
しかし羊さんがメェ~と鳴くメルヘンな世界で、白昼堂々と砲弾をぶっ放すのはよくないと猛反省です。
そこでアナログ式にもシロアリ作戦で行くことにします。
一旦自宅に戻ってお隣さんの床下に潜り込み、大量のシロアリをゲッチュです!
「さあ、家を食い荒らせ!」
オオカミは魔王ブタの家にシロアリを放出しました。
するとどうでしょう。
『あっという間にすぐに沸く~♪ ティファ○ル♪』的な感じに魔王ブタの家は崩れました。
住む家を失った魔王ブタは逃走し、次男の副将軍ブタのところに逃げ込みました。
――☆――☆――
オオカミがその後を追いかけると、いつの間にか目の前に巨大なビルが現れました。
明らかに鉄筋コンクリート製でスカイツリーくらいあります。
これを吐息で吹き飛ばすのはちょっと――いえ、めっちゃハードです。
「むぅ」
そうです。
副将軍ブタは鉄筋コンクリで見事な高層ビルを建築し、その中に同時にオフィスも持っているのです。
よく見れば入り口に『子豚レストラン株式会社』と書かれているではありませんか!
「ぬぅ!」
オオカミはバカ正直に一階のフロントに向かって歩き出します。
ところが入ってすぐにフロントにいた美人なお姉さんに止められてしまいました。
「申し訳ございません。 オオカミの方は入社不可となっております」
「な、なぜですか?」
「子豚社長の意向です。 まことに申し訳ございません」
どうやらこの会社では人種差別ならぬ動物差別が行われているようです。
法律がどうちゃら語っておきながら“法の下の平等”を無視するとは、許しがたいニワカ法曹もいたもんです!
かくしてオオカミは子豚レストラン株式会社から門前払いを受けてしまいました。
しかし家畜相手に門前払いにされ引き下がっては、男のプライドもなんちゃらです!
怒ったオオカミは最上階の社長室にめがけて言い放ちました。
「ブタ共に10倍返しだ!!!」
オオカミは一旦家に戻ると、財布を所持して子豚レストランの支店に向かいました。
そしてそこで食品の不正表示を暴き、産地の虚偽表示やバナメイエビを芝エビと偽証していたことを挙げ、みごと子豚レストラン株式会社を倒産に追い込んだのです!
かくしてビルは撤去され、別の角度から副将軍ブタの家を壊すことに成功したオオカミは、2ブタの逃げ込んだ長男ブタの家に向かいました。
長男ブタが家で本を読んでいると、可愛い弟たちがとびこんできました。
「兄上!!」
「兄者、お助け!!」
「ど、どないしたねん!」
「大変ですぞ!」
「余と兄者の家が破壊される由々しき事態ぞ!!」
とても血のつながった兄弟の会話とは思えません。
まず5歳児が一人称で『余』と言っている時点で由々しき事態が生じています。
その後、長男ブタは可愛い可愛い自分の弟たちからオオカミの悪行について聞かされ、激怒しました。
そして立ち上がりこう言ったのです。
「オオカミに100倍返しだ!!」
――☆――☆――
そんなことも知らず、オオカミは家を壊す用のハンマーを所持して関西弁ブタの家に向かいました。
最後の家がレンガ造りなのはメルヘンのお約束なのです!
「ぐっふっふ、これが最後の砦か」
オオカミはレンガ造りの一軒家の前で立ち止まると、さっそくハンマーを構えます。
これで叩けば流石の建築基準法うんぬんも及ばぬでしょう!
「見たか法律家の野郎共!」なのです!
「そぉい!!」
ブンッとハンマーを振り上げた時、つい手が滑って近くの泉に池ポチャしてしまいました。
強いて言うなら泉ポチャです。
「ああ、俺のハンマー!」
高かったのです。
一つ100万円もした超高級ハンマーだったのに。
ガックリと四つん這いになっていると、突然泉が光だし、中から女神さま――ではなく女神ブタが出現したのです。
無駄に巨乳なので複雑な気分です。
「あなたが落としたのはこの青酸カリ入りチャーシューですか? それともフグの毒入りトンカツですか?」
ハンマー関係ありません。
「いえ、打撃兵器です。 食品兵器じゃないです」
「?」
「なんかこう、先端に金属のカタマリ付いてて叩くやつ」
「あなたはウソつきです」
早すぎます。
「ウソつきなあなたには何もあげませんわ」
「待って女神さん!!」
このまま女神を泉に戻してはたまりません。
ハンマーを返却せずに泉に帰ろうものなら『女神ブタに倍返しだ!』と叫んでやるところです!
「美人で可愛い女神さま! どうかお待ちを!!」
適当に彼女の喜びそうなことを口にすると、現金な女神さまはピタッと動きを止めました。
お世辞は使い時が大事です。
「べ、別に褒められたって嬉しくないんだからね!」
ブタ女神さまはツンデレだったようです。
オオカミもツンデレ少女は大好きですが、根本がブタなのでどうも興奮できません。
「お願いです! ハンマーが無いと困るんです! だから返してください」
「それはできませんわ。 だってあなたはわたくしにウソをつきましたもの」
そんなバカな。
「そんな……これから俺どうすればいいんだよ」
「大丈夫。 あなたは道具に頼らなくとも自分で人生の道を切り開いていけるはずです」
切り開くのはブタの家なのですが。
「もっと自分に自信を持ちなさい。 さすれば道は開けるでしょう」
「あっ、女神さま!」
女神は意味の分からん名言を残し、泉の中にGo Homeしてしまいました。
でも落ち着いて考えると確かにそうです!
「そうだ、確かに俺は道具に頼り過ぎていた! 俺には父ちゃんからもらったこの筋肉があるんだ! ハンマーで壊さなくたってレンガの家くらい!」
ハンマーはもらえませんでしたが、自信をもらってしまいました。
立ち直ったオオカミはさっそくレンガの家に戻ります。
「ブタ共に100倍返しだ!!!」
『はん! 俺のレンガ造りの家を壊そうたって、そうはいかへんで!』
ブタ共は余裕のようです。
怒ったオオカミはレンガに向かってグーでパンチしました。
するとどうでしょう。
魔王ブタは建築基準法とかうるさかったのに、関西弁ブタの家はレンガ造りでありながら意図も容易く壊れてしまいました。
「なにーっ!!」
驚いたのはブタさんたちです。
建造が面倒なので関西弁ブタだけ業者に委託して造ってもらったのですが、やはりメイド・イン・チャ○ナはよろしくなかったようです。
偽装建築とは許せない業者です!
『次に会う時は法廷だぞコノヤロウ』なのです!!
「ふはは、観念しろブタ共」
「ぬぐっ……」
絶体絶命かと思われた3匹の子豚でしたが、長男の関西弁ブタはオオカミへの100倍返しを忘れてはいませんでした。
「お願いします!」
“半沢ブタさん”が部屋の奥に向かって叫びます。
するとどうでしょう。
オオカミよりまだ一際大きいメスのオオカミがブタさんの後ろから出てきたのです!
「タケシっ!!」
「げっ、母ちゃん!!!」
関西弁の半沢ブタさんはオオカミの弱点を知り、わざわざオオカミのお母さんを家に連れてきていたのです。
「まーた弱いものいじめして!! 店番はどうしたんだい!!」
「ちょっ、ごめんよ母ちゃん!!
「今日という今日は絶対に許さないからね!!」
「ぎゃああああ!!!!」
かくして、『ドラ○もん』の某キャラの要領で、ブタさん達はオオカミを撃退することに成功したのでした。