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マイトランプはハートのエース

作者: 千知

いつもは沢山の人が居るであろうカジノのホールも4人しか居なくてシーンとしている。

「さあ、ゲームを始めましょう。ねぇ良いでしょ? ゲームマスター?」

 そのシーンとした中に長い髪の女性――リンネが余裕な表情を私に見せつけてからスピーカーの方に向かって問いかけた。

「良いですよ、勿論」

 それに答えるゲームマスターの楽しそうな声がスピーカーから流れてくる。

 自然とその場に嫌な空気が流れ始める。

「じゃあ、始めようか『ホイスト』を……」

 どうして私はこんなところに居るのだろうか。

 帰る方法はただ一つ。

 ――ゲームで勝つ。



12月8日の朝。           

私、高城羽音だかぎはおとはテレビ局

へ向かっていた。

 マジックのオーディションに受かったからテレビに出演が決まったのだ。

 今日はそのリハーサルに参加することになっていた。

 「休みなのに良いの?」と母に言われたが大好きなマジックのためなら全く嫌では無かった。

 むしろ嬉しかった。

 しかし、私は寝坊をしてしまった。

 寝坊したのは、昨日興奮して、寝るのが遅くなったからか?

とにかくこのままでは遅刻してしまいそうだ。

とっさに思いついた方法。タクシーを利用するという考えにたどり着いた。

持っていた沢山のマジック道具を押し込んだ重たい鞄を下に置いて手を上げる。

 止まってくれた車に乗り込む。

「暁テレレビ局までお願いします」

「それは出来ません」

「え?」

 にやりと笑う運転手の顔がこちらに向けられた。

 次の瞬間後ろに隠れていた誰かに強い衝撃を与えられ気を失ってしまった。




 目を覚ました私はロープで手足を縛られ身動きが出来ない状況にいた。

 周りは真っ暗で何も見えない。何処に壁があるのか何処にどんな物があるのか。

 そして自分が今何処に居るのかさえ分からなかった。

「お目覚めですか? 高城羽音さん」

 突然聞こえてきた声に驚く。

 この声は一体誰のものだ?

「あなたは誰? そして此処は何処? 早くロープをほどいて!」

「落ち着いてください。此処はカジノの一室です」

 そのとたんロープがプツンと切れて身動きが取れるようになった。

 声の主を探そうと手探り探すがそれらしき感触のものは一切なかった。

「ああ、私はそこに居ませんから探しても無駄ですよ? スピーカー通して話していますから」

「そんな事どうでも良いから! とにかく此処から出してよ!」

 そう言うと何がおかしかったのか相手は笑い始めた。

「何がおかしいの?」

「此処から出るなんて羽音さんには無理ですよ。あ、そうそう。もう一つの質問ですが、私はカジノのオーナーです。まあ、ゲームマスターとでも呼んでください」

 オーナーでゲームマスターということは此処で何かゲームでも開催しているのか?

「ど~しても帰りたいと言うなら方法がありますけど……どうします?」

「本当!? どんな事でもするから出して」

 そう言った瞬間電気がついて周りが見えるようになった。

 ゲームマスターが言う通り此処は、カジノだ。

 テーブルにチップがあったりトランプがあったりする。

「じゃあ、ホールに来てね。待っていますよ……」

 ドアを開けて部屋から出ると廊下の真ん中に『ホールはこちら』という貼り紙が貼ってあった。

 そっち側に行けばホールがあるようだ。

 私はホールを目指して歩き出した。

 レッドカーペートが敷かれた長い廊下を歩くこと3分。ようやくホールへの入り口が見えた。

 ホールに入るとそこにはスロットもチップもあるのにそれらの音は一切しなかった。

 それは人が居ないからだ。

 突然後ろから足音がした。驚いて反射的振り向くとそこには……。

「神崎?」

 此処に絶対居るはずの無い奴がいた。

「高城!? お前、何でこんなところに居るんだ?」

 今、私を見て驚いたのは同じクラスの神崎聡也かんざきそうや

 クールな性格で近づきにくいオーラだから話した事は無いけど。

「固まってないで答えろよ!」

「あ、御免。けど、私も知らないんだよね」

「どう言う事だ?」

「誘拐されたと言いますか……拉致されたと言いますか」

「はぁ?」

 そう言われても事実だし仕方がない。

「もういい」

「御免」

 私は悪くないが一応誤っておく。そうじゃ無いとなんかまた言われそうだから。

「あーら。今回の相手は高校学生? 雑魚そう」

 声がした方を向くと髪の長い痩せた女性と10歳くらいの可愛らしい男の子が居た。

「ママ。この人たちが今回の僕らの敵?」

「こいつ等しか居ないでしょ」

 どうやらこの人たちは親子関係のようだ。

「皆さん席に付いて下さい」

 スピーカーから流れてきたのはゲームマスターの声。

 言われた通り席に付く。

「おおっと。羽音さんそこはリンネさんの席です。貴方はその右隣りです」

急いで席を立って右隣の席に座る。

「この配置って事は『ホイスト』かな」

 『ホイスト』?

「流石10歳にして大天才のリュウトさん。その通りです。いやいや母親のリンネさんも鼻が高いでしょう?」

「ええ。自慢の息子ですもの」

 大天才ってなんか敵とか言っていたけどまさか戦わないよね?

「ほのぼの会話してる場所じゃ無いだろ。ゲームマスター早く説明しろ」

 会話の中に割って入る聡也。

「そうでしたね。御免なさい」

 笑いながら誤るゲームマスターからは全然反省している態度は見られない

「では、改めまして私のカジノ。通称、ランプのカジノへようこそ皆さん」

「ようこそって言うか私、無理やり連れて来られたんですけど!」

「まあまあ、怒らないで下さいよ。せっかく選ばれた者しか参加出来ないゲームに参加できるんですよ。しかも勝てば3つの願いを叶えてもらえる特典付き!」

「3つの願い?」

「ええ。例えば、お金が欲しいと言う。私は叶えます。お金の願いは100万円までですが。単位が京とかだったらお財布スッカラカンですからぁ。まあ、その3つの願いを叶えてくれるって事で通称がランプのカジノなんですよね」

 少し笑いながら話すゲームマスター。

 その喋り方からか自慢しているようにも聞こえた。

この場に集まっている人は皆それが目当てなのかな。

「余談だけど、なんでお金だけじゃないか分かる?」

「はーい!」

 そう元気に手を上げたのはさっき大天才とか言われていたリュウト。

「ゲームマスターさんが何でも出来る魔法使いだからー!」

 魔法使い?あの、アニメとかに出てくる?そんな人が存在するのか?

「だ・か・ら『絶世の美女になりたい』とか

『大天才になりたい』とか簡単に叶えられちゃうんですよね」

「僕はそれでこんなに頭良くなったんだよ。本当にゲームマスターさん凄いよ」

 魔法で頭が良くなった?そんなのありえない。それにそうだとしても……。

「ゲームマスター! 今すぐリュウトにかかった魔法といて!」

「何でです? 私の魔法のおかげでリュウトさんは幸せなですよ」

「そ、それは本当の幸せじゃ無いと思うならです自分で努力したから幸せを手に入れるんです!」

 本人はそう言っているかも知れないけど心の奥では……。

「羽音さん貴方は甘い。吐きそうになる位甘ったるいケーキのように」

 急にゲームマスターの態度が変わりおとなしくなった。

 なんか変な事言ったかな?

「え?」

「まあ、それはさて置き今回やるゲームの説明をするよ」

 さっきの態度をすぐに辞めいつもの態度に戻るゲームマスター。

 本当に不思議な人だ。

「今回やるゲームは『ホイスト』って言うトランプを使った2VS2のゲームだよ! 本来はエースを引いて決めるんですけど今回はリンネ&リュウトVS羽音&聡也にさせて頂きます」

 神崎とかなんか凄い頭切れそうだし安心かもしれない。

「高城」

「何? チームとして宜しくね」

「お前に協力するなんか無いぞ」

「え!?」

 安心していたのにさっそくこの気持ち裏切られた。

「お前まさか俺を頼る気だったのか? 呆れた。それ位自分でどうにか……そんな顔で見るな」

 当たり前だ。

 不安だった状態に強そうな知り合い登場!この状況でこんな台詞言われたら誰でもこうなるよ。

「お願いだよ。協力して」

 土下座しそうな勢いでお願いしてみる。

「分かった。だが、お前に協力はしない」

「何で!?」

 分かったって言ったのに!? どうして?「逆なんだよ。お前が俺に協力するんだ」

「あ。そうだったんだ。良かった安心した」

「いざとなったら」

「まさか捨てる!?」

 それだけは勘弁だ。1人で何て無理に決まっている。

「違う。いざとなったら助けてやるって言いたかったんだ」

「有り難う! 神崎!」

 なんだ案外良い奴じゃないか。

「え? 様は?」

 違ったSだ。

「冗談だ」

「辞めて。これからやるって時に」

「すまん」

 ちゃんと良い奴で安心した。

 それに今の会話で少し緊張がほぐれた気がする。これは、神崎の気遣いか?

「ゲームの進行の仕方を説明するよ。

 まず、ディーラー(親)が全員に均等にカードを配る。

その時に、最後の一枚はディーラーに来るようにしてね。

 そしたらディーラーはその最後の一枚を公開する。

 そのカードと同じスート(マーク)のカードがゲームの『切り札』となります。

 そしたらディーラーの左隣の人がカード(台札)を一枚だけ出します。

 ただ、最初だけは『切り札』は出せないから注意してね。

 その後は時計回りに台札と同じスートのカードを出す。それが無い場合は違うカードでも良いけどそのカードは『切り札』以外最弱だからね。だから強さは『切り札』→台札→その他のカードってこと。

 出だしたカードの中で一番強いカードを出した人が勝利です。

 ちなみにカードの強さはA→K→Q……3→2の順に強いからね。

 こうやってゲームを重ねて先に7回勝った方の勝ち。

 これで説明を終わりまーす」

 だいたいルールは分かった。どんなカードが来るかが決め手ってことか。

「ちなみにこのゲームは私なりに改造があるんだよ。そ・れ・は~このルールさえ守れば何をしても良いのです!」

「え!? それじゃあ、イカサマを使われちゃうけど?」

「それが良いのです。羽音さんみたいな頭がお子ちゃまな人には分かりませんか?」

「正義感と言って下さい!」

「まあ、良いです。では、バァ~イ」

 全く分からないゲームマスターだ。少しは私を丁寧に扱って欲しいものだ。無理そうだけど。

「ねえねえ、そこのおじさ……じゃ無かったお兄ちゃんはこれやって何年?」

 今おじさんと言おうとしてたよリュウト。絶対。神崎の反応はどうなんだろう。

「3年だ」

 声は冷静だけど眉間にしわが寄っている。

「あー! しわ寄ってるからおじさんだー」

「黙れガキ」

 もう、限界だ。

「ねえ、おばちゃ……じゃ無かったお姉さんは初めて?」

「なめんなよこの馬鹿! ぼこぼこにしてやる!」

 意外な事に結構イラッてきた。

神崎良く耐えたな。

「高城、挑発に乗るなこれじゃ相手の思うつぼだ」

「自分も挑発に乗ってたじゃん」

「あれはちゃんと耐えていた。何しろ相手はガ……子どもだからな」

 絶対のっていると思う。

「もう、始めましょうよ」

 リンネの冷静な声が響く。

「お前がだいたいリュウトにやれたでも言ったんだろ! 読めてんだよ」

「分かっていたのね。まあ、いいわリュウト席に座りなさい」

「は~い」

 リュウトが席に付くと再びリンネが口を開いた。

「さあ、ゲームを始めましょう。ねぇ良いでしょ? ゲームマスター?」

 そうリンネが言った瞬間空気が凍りついた気がした。

「良いですよ、勿論」

 聞こえてくるゲームマスターの声は私達がゲームをやるのを喜んでいる楽しそうな声だった。

「じゃあ、始めようか『ホイスト』を……」

 神崎がトランプをとる。

 皆、無表情で怖い。

 そこに割って入ってくる陽気な声。

「ごっめ~ん。言いうの忘れてた事あったよ」

「雰囲気ぶち壊すな馬鹿ゲームマスター!」

 びびった。

「これでも有名大学卒業してるよ。で、言い忘れてた事だけど羽音さんってリアルなるとと嫌なことってある?」

 いきなり!? 嫌なことか……。

「幸せな出来事が無くなることかな」

「馬鹿! どうでもいい事を言え」

「え!?」

「は~い。了解です。ではゲームをどーぞ」

「なんかあったの?」

「はい。今羽音さんが言った事が負けた場合現実の事になっちゃいます。まあ、リンネさん達が負けたならリンネさんが不幸になりますが」

「え!?」

 だから神崎どうでもいい事を言えなんて言ったんだ。

 ディーラーのリンネがカード配った。

 リンネは最後に来たカードを見せた。

 『切り札』はハート。

 リンネが見せたのは二番目に強いハートのKだった。

「残念だったなリンネ。Aじゃなくて」

 神崎が笑いながらリンネに話しかける。

「ええ。でも、こうなるようにしたのは貴方でしょう?」

「ばれていたか」

 神崎は笑っていた顔を無表情にした。

「神崎何かしたの?」

「ああ、お前にAが来るように仕組んどいたんだ。リンネはシャッフルの時自分にAが回ってくるような仕方をすると思ってな。見事予感的中だった」

「え!?」

 急いで手札を確認する。

 言われた通りにハートのAとダイヤのAがあった。

「あとのAは、俺のとこには1枚。たぶんリュウトのとこにも1枚だろう。配り方は最後のカードが親に来れば良いだけだからな」

「私はシャッフルをしてるように見せかけてそのままの状態で配りAが来るようにしていた」

 リンネは悔しそうに俯いた。

 二人ともイカサマって……。

「イカサマは駄目だって!」

「じゃあ、お前がイカサマしなきゃいい」

「どうして? 神崎もリンネだよ!」

 ついさっきの私とゲームマスターの会話を聞いていなかったのか。

「ゲームマスターが言ってただろう。ルールを破らなきゃい言って。イカサマしないというのは高城。お前だけのルールにすればいいじゃないか」

「もういい」

 呆れた。

イカサマはしないでちゃんと戦う奴だと思っていたのに、がっかりだ。

「神崎早く台札出しなさい」

「ああ分かっている」

 神崎が出した台札はスペードのJ。

 それからリュウトがスペードの2。私がスペードの5。

「じゃあ、私はスペードのQ。まず私達が1ポイント」

 神崎がリンネをにらむ。

 それを見たリンネは満足げにそして神崎を見下すような笑顔で見た。

 神崎は嫌な顔を見せずクラブの2を出す。

「へー。そんな雑魚で良いんだ。負けちゃっても良いの?」

 リュウトはそう言ってクラブのKを出す。

 私はハートのQを出した。

リンネは私か神崎がハートのAを持っていると思ってハートのKは出さないと思ったからだ。実際そのハートのAは私が持っている。

 私の作戦が分かったのか神崎はこちらを向いて「やるじゃん」と言った。

 そしてリンネは私の予想道理ハートのKは出さずにクラブのKを出して来た。

 これで私達にも1ポイントだ。

 だが、ポイントを取っていくのは私たちではなくリンネ達だった。

 まず、3回目だ。

 神崎はダイヤのKを出した。

 リュウトはダイヤの4で私はハートの10を出した。

 ここで私がダイヤを出したらきっとリンネはハートを出してポイントを取ると思ったからだ。

 だが、甘かった。

 リンネは持っていたのだハートのJを。

 次に4回目。

 神崎はハートの4を出してリュウトはハートの8を出した。

 私はハートを出したかったがA以外8以上のカードは無かった。

 かと言ってAは出したくなかった。

 Aはこれからもっとも必要になると思ったからだ。

 そして、最後にリンネはクラブの4を出したがどっちにしろリンネ達にポイントが入った。

 5回目はこうだ。

 神崎はハートの6を出しリュウトはスペードの3を出した。

 私は神崎が勝つと思ったからダイヤの3を出した。

 しかし、リンネは神崎の上ハートの7を出した。

 そして6回目。

「案外やる奴だと思っていたけど、そうでもなかったのね」

 かなり危険な状態にいた。

 後、2回で私達は負けてしまう。

「そうか。がっかりだったか?」

「ええ。とっても」

「じゃあ、今回はがっかりさせないようにしてやろう」

 そう言って神崎が出したのはハートの9。

「ちょっと! 神崎リンネはハートのKを持ってるんだよ! それじゃ無駄だよ」

「大丈夫だ。リンネはハートのKを出す気なんか無いからな」

「あら良く分かってるじゃない」

 そう言ってリンネが出したのはスペードの4。

 私はダイヤの5。リュウトはクラブの5を出したから神崎の勝ちで私達にポイントが入った。

「なあ、高城。お前、残りのハートのK以外の全部を持ってるだろう。それ、ずっと連続で出せ。ただしAは出すなよ」

「あ、うん」

 次のターンからハートの5、3、2と出していった。

 そしたらすべて勝ったのだ。

「神崎凄いよ!」

「そりゃどうも」

 ちょっと嬉しそうに神崎は笑って見せた。

 そして10回目。

 神崎はダイヤの6。

 リュウトはダイヤの10。リンネはダイヤの7。

 そして私がダイヤの1を出して私達が勝利した。

「どうだリンネ。がっかりしないだろう?」

「そうね。けど、少し気分が悪いわ」

「それは大変だ」

「誰のせいだか」

 多分リンネは自分達が追い上げられているから機嫌が悪いのだろう。

「じゃあ、今回も勝たせて貰うぜ」

 そう言って神崎が出したのはクラブのJ。

 リュウトはスペードの6で私がクラブの6を出した。

「果たしてそうはいくかしら」

「え……?」

 リンネが出したのはクラブのQ。

「なっ!」

「予想外だったようね」

 リンネの高笑いが響く。

 次は神崎がダイヤのQ。

 リュウトはダイヤの8で私はダイヤの9.

 リンネはダイヤのJ出した。

 これで6対6だ次で決まる。

「リンネ良いのか? 負けて。高城はハートのAを持っているんだぞ? まあ、出すすべも無いだろうがな」

 俯いたままのリンネは椅子から立ち上がった。

「何をする気だ?」

 ドン!

その時私の視界に映ったのは天井。

 リンネに椅子ごと倒されたのだ。

 椅子の背もたれが長かったから頭は打たなかったものの持っていたハートのAを離してしまった。

「大丈夫か高城!」

「うん、大丈夫」

 リンネはハートのAを拾うと蝋燭のあるテーブルに近寄った。

「リンネお前まさか……」

 次の瞬間、蝋燭の炎に包まれるトランプ。

「これで私達の勝ちよ」

 リンネはゲームをしているテーブルに戻りハートのKを置いた。

「認めねーよ」

「え?」

「なあ、高城?」

「う、うん」

 いきなり色んな事が起きたから混乱してしまった。

「知ってるか高城。トランプの意味って」

「このカードの事じゃないの?」

「いいや違う。トランプって言うのは『切り札』って意味なんだ」

 そうなんだ初めて知った。

 ていうか、なんで急にこんな事言うんだろう。

「取り戻せるか? お前の『マイトランプ』をさ……」

 言いながら神崎は私の鞄を指差した。

 私のマジックの鞄を。

 ああ、そういうことか。

 鞄から道具を取り出す。

「何をする気?」

「だから、Aを取り戻すんだよ」

「そんな無茶な……」

「見て下さい! 今からこのダイヤの8を使ってハートのAを取り戻します」

 箱に入れ火をつける。

 火が消えたところでトランプを取り出す。

「なっ!」

 取りだしたのは紛れもないハートのA。

「私達の勝ちです。リンネ」

「なんで……」

 その時あの陽気な声が響いた。

「おめでとう御座います! さあ、3つの願いをどうぞ」

 そんなの決まっている。

「1、私を此処からだす。2、リンネとリュ

ウトを不幸にしない。3、このゲームをもうやらない事」

「わっかりました~。じゃあ、皆さんお気をつけて」

 これ以降ゲームマスターの声はしなくなった。

「良くやったな。トランプ取り戻すの」

「あれ実は、炎でインクが取れる仕掛けなんだよね。父が作ったんだ」

「ばらしていいのか? ていうかお前もイカサマしてるじゃないか」

「確かにそうだね。」

 一つ置いて神崎が口を開いた。

「終わったな」

「うん」

「高城と高城の『マイトランプ』のAに助けられたよ。ありがとな」

「こちらこそ」

 これで、私のゲームは終わった。

 有り難う神崎。

 そして、『マイトランプハートのA』。


 この小説は確か5月の頃に書いたものだと思われます。UP遅くてすいません。

 ちょっとどころかこの小説書くの苦労しました。ホイストと言うゲームを知ったのはこの時が初めてで実際にトランプを使ってやったくらいですww。

 あと、皆さん『ここ、女子中だけど?キミ、男の娘だよね……。』を見ている方は分かると思いますが「神埼」が出てきています。私、未発表の物を含めてほとんど「神埼」と言う人が出てきています。自分の小学校にも中学校にも「神埼」と言う人はいません。もちろん知り合い、保育園にもです。自分で書いていて名前を決めるときなんとなく「神埼」と言う名前が出てくるのです。どうしてでしょうかね。

 長すぎました。すいません。そろそろ仕上げに入ります。この小説もともと賞に応募するつもりで書いたので信楽にしてはまともなハズです。できれば感想、評価などをしてくれると嬉しいです^^でわぁ~♪

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[良い点] 自分の意思とは関係なく危険なギャンブルを行なうことになってしまった主人公。 ギャンブルものの主人公でテレビに出演できるほど手品がうまいという設定は新しいと思います。 [気になる点] 誤字が…
[良い点] 伏線が絶妙でした。 [気になる点] 誤字が目立ちました。 それと、終盤は気抜けしたように急展開になっていくのを感じました。 [一言] ミステリアスで、伏線も絶妙に仕込んでありますが、ちょ…
2012/08/07 11:17 退会済み
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