ダイヤモンドは見ている(後編)
現場には、二人の刑事と、熊田に警備員らしき人物が集まっていた。
「皆さんにお集まり頂いたのは、他でもありません。」
どう言う事なのか、と首を傾げる刑事。
「今回、被害者を殺害し、ダイヤモンドを奪ったのは、報関 啓介さん、貴方です。」
新一は啓介を指差した。
皆さん同時に驚く。
「待ってくれ。
俺は殺していない!」
啓介は殺害を否定した。
『そう、啓介さんは、誰も殺していない。』
突然、スピーカーから真理絵の声が聞こえ、会場中に響いた。
啓介が驚く。
『啓介さんは、熊田さんにお金で雇われ、犯人の振りをしていただけ。真犯人は、熊田さん、貴方です。』
「これからその全容を話すわ。」
そう言って、物陰から真理絵が顔を出した。
「真理絵、犯人が熊田さん、ってどう言う事だよ?」
新一が聞く。
「事件当時の状況を思い出して。あの状況で、殺害、ダイヤの交換が出来るのは、現場にいた熊田さんだけよ。」
確かにそうだ。あの時、現場には熊田しかいなかった。だからって、熊田が犯人と言う証拠は無い。
「恐らく、動機はダイヤの窃盗。」
「面白い。だがな、停電が起きた時、俺はこの会場にいた。どうやって、停電を起こしたと言うんだ?」
「タイマーですよ。
此処の変電室に、各部屋の電気を管理するコンピュータがある。」
「・・・・・・。」
顔色が変わる熊田。
[バチッ!]
会場の電気が消え、真っ暗になった。
「3、2、1。」
真理絵が数えると、電気が点いて明るくなった。
「貴方はこうやって、停電を起こし、その間にダイヤを盗み、報関を殺害したんです。
タイマーをセットした後が、ログに記録されていましたよ。」
「おい、啓介!
どうして消さなかった!?」
キレる熊田。
[カチャ]
熊田は、啓介に拳銃を突き付けた。
「お前みたいな使えない奴、殺してやる。」
「やめなさい!」
真理絵が叫んだ。
[パアン!]
熊田が真理絵に向けて発砲!
「真理絵!?」
新一が叫ぶ。
[カン!]
真理絵に当たった弾丸は、音を立てて下に落ちた。
「ば、化け物目!」
[パンパンパアン!]
熊田は連射した。
[カンカンカン!]
やはり、今度も音を立てて下に落ちた。
[カチ、カチカチ、カチ]
弾切れである。
「ふっ、これならどうだぁ!?」
熊田は拳銃を手放し、グレネードランチャーを出して構えた。
[ドーン!]
熊田はグレネードランチャーを発射した。
放たれたグレネード弾は、猛スピードで真理絵に飛んでいく。
「真理絵、避けるんだ!」
新一は叫んだが、時既に遅し。
[ズドーン!]
真理絵にグレネード弾がクリティカルヒット。
爆発と共に、爆風が起き、熊田と真理絵以外は皆吹き飛んだ。
煙が晴れると、素っ裸で、無傷の真理絵が立っていた。
あれほどの爆発だ。服は霧散してもおかしくは無いだろう。
「ば、ば、化け物だ!」
[ドーンドーンドーン!]
熊田はグレネードを連射した。
[ズドーンズドーンズドーン!]
巨大な爆発が起きるが、真理絵は傷一つ無い。
熊田は、グレネードを落とし、震えた。
真理絵は、そんな熊田に歩み寄る。
「く、来るな!」
熊田は、懐から、ダイヤモンドで作られたナイフを取りだし、真理絵に向けて構えた。
「近付いたら、お前を切るぞ!」
熊田は言ったが、真理絵は平気で近付く。
「斬れるものなら、斬ってみろよ?」
真理絵はニヤ付きながら言う。
「今、お望み通りにしてやらぁ!」
熊田はダイヤモンドで出来たナイフを、真理絵に突き刺した。
[バキッ]
ナイフが真っ二つに折れた。
真理絵には傷一つ無い。
熊田は驚いて腰が抜けてしまった。
真理絵はそんな熊田を、胸倉を掴んで持ち上げた。
「お、お、降ろしてくれ!」
「いぃやぁだ。」
真理絵は高く可愛らしい声で断った。
「もう好きにしてくれ。」
熊田は力を抜いて言った。
「自首、しますか?」
「し、しますします!」
それを聞いた真理絵は、熊田をゆっくり降ろす。
「馬鹿目!」
熊田はそう言って、逃げ出した。
が、目にも留まらぬ速さで、真理絵が熊田の前に移動した。
熊田は真理絵にぶつかり、後ろに引っくり返った。
「ひやあああああ!」
熊田は悲鳴をあげながら、床を這った。
が、再び真理絵が高速移動で熊田の前に移動。
熊田は、もう駄目だ、と観念したのか、その場で動かなくなった。
「あんたみたいな奴、生きていても、特にならないわ。」
[ズシン!]
真理絵は、熊田の頭を踏み潰した。
[グシャ!]
熊田の頭がペシャンコになり、血が吹き出た。
真理絵は返り血を浴び、真っ赤に染まった。
後日、真理絵が行った事は、GATによって揉み消しにされ、犯人は爆発に巻き込まれて死亡、と言う事で片付けられた。
にしても、真理絵が人殺しても捕まらないとは。改めて、GATの凄さを感じた。
良い子の皆は、真理絵の真似しちゃ駄目です。
絶対捕まります。