奥村 真理絵
「大変大変! 遅刻しちゃう!」
いま焦っているのは、この話の主役・奥村 真理絵である。
真理絵は、東京の水利高校に通う女子高生である。
彼女は、タレントの芳賀 優里亜と瓜二つで、クラス一番の人気者である。
でも、そんな彼女が、Cybernetic organism=サイバネティックスの有機体である事は、誰も知らない。
勿論、家族や親戚もだ。
と言っても、彼女の親戚達は病気で他界し、両親は夫婦喧嘩の際に殺し合いになって他界してしまっている為、ずっと一人暮らしなのだ。
真理絵は、制服に着替えると、走って学校へ向かった。
(全く、こんな時に目覚ましが壊れるなんて)
{キーンコーンカーンコーン}
学校のチャイムが聞こえた。
(あ、完全に遅刻だ)
真理絵は、遅刻だと言う事が解ると、走るのをやめてゆっくり歩く事にした。
「おう、真理絵じゃねえか」
真理絵が歩いていると、後ろから声が聞こえた。
真理絵は立ち止まって後ろを向いた。
そこには、一人の男が立っていた。
彼の名は黒崎 新一。世界各国で有名な高校生探偵だ。
新一は、男の中の男、水嶋 ヒロに似ているらしく、女の子にはモテモテである。
その所為もあってか、新一の家にはファンレターやラブレターが何億通以上送られて来る時がある。
だが、その内のラブレターは全て、真理絵の手によって処分されてしまっている。
真理絵は、新一がモテるのが気にくわない上に、新一を自分だけの物にしようと考えているらしい。
その為、新一が何処かへ行く時は、必ず付いて行く事にしている。
「あら、新一君も遅刻?」
真理絵は首を傾げながら聞いた。
「いや、今日はサボりだ」
「新一君、駄目だよ。学校はちゃんと行かなくちゃ」
{ボン}]
真理絵の鉄拳が新一の腹に決まった。
「うっ!?」
かなり痛い様だ。
「これでも行かないと言うなら、もう一度やるよ?」
真理絵は新一の耳元で囁いた。
「わ、解った。行くよ、行けば良いんだろ?」
「うん!」
真理絵はニッコリ笑って頷いた。
こうして、二人は一緒に学校へ向かった。
新一は、未だに腹を抑えている。
「ごめん、そんなに痛かった?」
「痛い……お前の腹パンチは特別強烈だ。完治するまで一日は掛かる」
それはそうだ。真理絵は手加減と言うものを知らないからな。
「わざとじゃないの。本当にごめんね」
「もう良いよ!」
「酷い。新一君、私の事許してくれないんだ?」
と言いつつ、拳をポキポキ鳴らす真理絵。
だが、新一はシカトをした。
(こいつに関わるとろくな目に遭わないからな。無視しよう)
なんと、新一はそんな事を思っていたのだ。
{ズガーン!}
真理絵は新一の背中に正拳突きをした。
「いってえええええ!」
甲高い悲鳴をあげる新一。
「無視すんじゃねえよ」
真理絵は蹲る新一に言った。
恐い、怖いです。顔が鬼になってますよ!?
「おめえに……関わると……」
{ズシン!}
新一が泣きながら、途中まで言い掛けると、いきなり真理絵が、前に回って新一の頬を殴った。
{プチン!}
新一の堪忍袋の緒が切れた。
「なんの理由も無しに人を殴るな、よ!」
新一は仕返に真理絵を本気で殴った。
{カーン!}
金属に物が当たった時の音がした。
「いっってえええええ!」
新一は、再び悲痛の叫び声をあげた。
全く、こんな状態で、日本に事件が一つも発生しなくなるんでしょうか?
先が思い遣られます。
今度の真理絵は攻撃的です。その証拠に、愛する新一に愛のムチ・・・では無く、ストレス発散の為、気に入らない事があると直ぐに人を殴ります。
今まで何度人を殺して来た事か。
GATはこんな危険なサイボーグを始末しなくて良いのだろうか?
それが、良いらしい。と言うか、回収して処分しようと、GATが真理絵を捕獲しようとすると、そいつらを殺してしまうらしい。
全く、こんな不良品を作ったのは、何処のどいつだ!?