第六十七話 八間の外 ー渦が森流 八の形ー
八間
蓮は間合いを取る
踏み込み有っても届かない距離
壇の中央には長田
右手に兜割十手
左手に剣
変則二刀流の構えを取っている
蓮は、ゆっくりと歩く。
円を描くように。
間を測るように。
――八間。
観客席から見れば、明らかだった。
主導権は、長田にある。
蓮が走り込む
長田への斬り込み
斬り返し
長田は動かない
兜割で往なす
止める
絡めるーー
その前に蓮はそのまま走り去る
剣は長田に届かい
ーーーーー
再び
走り込む
斬り込み
斬り返し
走り抜け
それを――繰り返す。
三度。
四度。
五度。
静寂にあった観客席がざわつき始める
時間稼ぎか、逃げているかのような蓮の動き
長田の顔からは勝利への確信が見える
ゆっくりと蓮が長田の周りを歩く
ーーーーー
蓮が止まる
背中を…
徳井に見せるように
今津先輩に見せるように
ゆっくりと構える
霞の構え
刃が揺れる。
境界が曖昧になる。
どこから来るか――見えない。
ーーーーーー
次の瞬間
低く走り込む
深く踏み込む
斬り込む
兜割が止めるー
押し込む
絡み取られる
押さえつけられる
ーー完全に
長田の勝ち筋ーー
逆手から斬撃
ーー届いていない
長田の小手は
蓮の両手で止められていた
蓮の剣は、
すでに――手を離れていた。
踏み込む。
体が入る。
崩す。
軸を奪う。
ーー小手投げ
長田の身体が宙に舞う
背中から落ちる
蓮が奪った刀が喉元に
「一本」
「勝者 鷹宮蓮」
―――――――――
渦が森流 八の形「太刀取り」
「それで決めるのか」
今津先輩が、低く呟く。
言い終えて、
そのまま、座り込む。
「……そんなもん、昇段試験で――一度やるかどうかだろ」
小さく、吐き出すように。
「あいつ…… どれだけ、渦が森流が好きなんだよ」




