第六十二話 斬撃 ー間合いの下でー
一回戦が終わった。
対戦表が貼り出される。
明日は二回戦、そして準々決勝――三回戦。
勝てば、連戦。
春日と雪
順当に勝ち上がれば、準決勝で当たる。
ーーーーー
「やっとやれる!」
対戦表を見て、澪が笑う。
新開地と澪。
明日の第二試合。
「――そして、王子さんとも」
第六席、王子真。
公式戦で初めて試合う
「明日は盛りだくさんだよ、雪」
雪は小さく答える。
「新開地さん……強いよ」
「知ってるよ。でも、負けない」
澪の視線が、対戦表に突き刺さる。
(澪……本当に好きなんだね……剣が……)
ーーーーー
新開地との試合。
澪には不利。
体格差。
剛剣。
一撃の重み。
対して澪は、
小さな身体と、細身の居合刀。
相性は最悪。
――正面からでは、勝てない。
(澪が、対策なしで挑むはずがない)
雪は思う。
(見てみたい……)
ーーーーー
「はじめ!」
澪が抜刀する。
(抜き打ちじゃ勝てない)
(――間合いに賭ける)
新開地は蜻蛉に構える。
距離を取る。
(警戒されてる……光栄です、先輩)
静寂。
数秒。
――動いたのは、新開地。
踏み込み。
渾身の斬撃。
受けない。
(受ければ、刀ごと斬られる)
澪が、飛び込む。
低い。
床に触れるほど。
――間合いの“下”へ。
圧倒的な体格差を逆に利用
斬撃の軌道を外し、足元へ入る。
下から。
天へ。
逆袈裟。
――胴を、抜く。
澪は転がる。
そのまま片膝で止まる。
残心。
「一本!」
お互いに、二の太刀はない。
捨てた。
一撃に、すべてを賭けた。
ーーーーー
澪が武道場を降りる。
「やっと……勝てた……」
再び武道場に礼をして、新開地の元へ。
「先輩! ありがとうございました!」
無言。
「先ほどの斬撃、勉強になりました」
沈黙。
――わずかな間。
「……湊川のお嬢様」
初めて、口を開く。
出稽古先の娘への、丁寧な口調。
一転
ーー先輩としての口調
「次は、ないと思え」
その顔は、笑っていた。




