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半歩 ~守・破・離 短き刃 長き道~  作者: 止水


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第五十三話 間の裏側 ー 届かぬ理由、崩される前ー

渦が森一刀流の道場。


乾いた音が、何度も響いていた。


竹刀が弾かれる。


「甘い」


次の瞬間には、もう一本。


――打たれている。


「……っ!」


読まれている。


受けられる。


そして、返される。


――負ける。


何度目か分からない打ち込みのあと、蓮は大きく息を吐いた。


「……くそ」


先輩は、笑いながら


「でもまぁ、強くはなったなぁ」


軽い言い方。



「中学の頃なんてさ」


「小学生の女子に負けてたやつと同一人物とは思えん」



蓮、即答。

「ああ、それ澪のことですよね」


「……あ?」


「あいつ、今でも普通に男、片手で投げるんですよ」


「いや、あれ 別枠」



――パシン。


軽く叩かれた。


「痛っ!」


「“澪”じゃない」


先輩の声が少しだけ低くなる。


「湊川さん、だろ」


「夢野流の御嬢様だぞ」


「気安く呼び捨てにするな」


蓮、少しだけ苦笑する。


「了解……湊川さんですね」


(あいつが御嬢様ってのが一番納得いかないけど)


心の中だけで呟く。


先輩は、ふっと息を抜いた。


「で?」

「お前、卒業後は?」


「一応、推薦で武徳大学です」


「ほー」


「でも、将来は……まだ」


少しだけ言葉が止まる。


「今は、とりあえず」


視線が、自然と前に向く。


「最後のランキング戦で、優勝」


先輩は、少しだけ目を細めた。


「本山さん、止める気か」


「はい」

即答。


「最後に俺が勝ちます」


先輩は、ふっと笑った。


「言うねぇ」


「まぁ、雪だけじゃないんですけどね」


指を折る。


「あと、最近だと――」


「一年生の春日」


蓮の目が、わずかに動く。


「……素手に拘っているって言う学生か?」


「あいつ強いけど、なんか違うんです」


先輩の言葉に、蓮は少しだけ考える。


(……違う)


それは、自分も感じていた。


その時だった。


「ほら」


先輩が、木刀を一本投げてよこす。


受け取る。


「脇差?」


「それで俺とやれ」


「……は?」


「いいから、やるぞ」


構え直す。


間合いが、変わる。


さっきまでの竹刀とは違う距離。


違う圧。


「行くぞ」


踏み込んできた。


――速い。


(……遠い)


距離が、一気に詰まる。


対応する。


だが――

脇差ではとどかない。


当てられる。


何もできないまま、終わる。


「もう一本」


――また負ける。


「もう一回」


――また。


何度やっても、同じだった。


蓮は、肩で息をしながら木刀を下げた。


「……っ」


悔しさが、残る。


先輩は、じっと見ていた。


「なぁ」


静かに言う。


「なんで負けた?」


蓮は、すぐには答えられない。


「……距離、ですかね」


「ほかは?何が嫌だった?」


その問いに、蓮は止まる。


思い出す。


さっきの感覚。


――入られる。


――触れられる前から、形を崩される。


――届かない。


(……ああ)


息を吐く。


「……やられたくない形、全部やられました」


先輩は、わずかに頷く。


「だろうな…」


「それなら」


「お前なら俺をどうやって倒す」


「先輩を…ですか」


「竹刀でも勝てないのに… 」

「脇差なんて…」



でも…


竹刀の距離を潰す。

踏み込みを狙う。


待つのも、ありか。


選択肢を削る。

“嫌な形”を押し付ける。


脇差だからこそできる、距離の歪み。


――そこに、入る。



先ずは

こんなところか…


こんな感じで…




「ん?」


その瞬間。

蓮の中で、繋がる。


「あっ…」


視界が、反転する。


(あいつには――)


(俺が、こう見えてるのか)


(あいつは――)


(こうやって、俺を倒したいのか)


静かに、理解する。


(……逆でみると、こうなるのか)




蓮の顔をみて、先輩は少しだけ笑った。


「気づいたか」


蓮は、小さく頷く。


「はい」



先輩、笑う。


「いいね」


その目は、少しだけ真剣だった。


「”俯瞰” それができたら」


「お前、もう一段上だ」


ーーーーーーーーー

再び、先輩の前に…


春日は今、剣士学園にいない


戻ってきたときには

きっと、小太刀を抜くはず……


(素手であの動き…)

(春日、お前… もし小太刀を抜いたら…)


(――俺は、止められるのか)


蓮は

さっきより、深く 深く


己の動きを、心の”鏡”へと映す…



ーーーーーーーーーーー


「蓮… 埠頭の道場に出稽古させてもらってるんだって?」


「はい!」


「恥ずかしい真似だけはするなよ~~。」


確実に強くなっていく蓮を見て、先輩は笑っていた


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