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半歩 ~守・破・離 短き刃 長き道~  作者: 止水


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第五十一話 鏡 ―向き合うということ―

終業式の夜

剣士学園の女子寮


御影は、一人


手の中には、手裏剣。


軽く回す。

止める。


(……当てようとしてない動き)


蓮の言葉が、頭の中で繰り返される。

「当てない」

「そこに 置く」


それは、正解だった。


それが――自分の武。


だが――


蓮先輩には、通っていない。


あの時の感覚。

確かに“置いている”のに、届かない。


弾かれたわけでもない。

防がれたわけでもない。


ただ――


御影は、誰もいない空間を――


見る。


打たない。


頭の中で、投げる。


「……違う」


小さく呟く。


今のは、“いつもの自分”。


これでは通らない…


もう一度。

今度は――少しだけ、意識を変える。


(……見る)

的じゃない。

距離でもない。


その“間”を。

踏み込む。


放つ。


意識が

――わずかにズレる。


外れる。

「……」



だが。

(……今の)

さっきとは、違う。


“置いた”感触じゃない。

“通った”ような、曖昧な感覚。


御影は、手の中の手裏剣を見る。

「……難しいな」


苦笑が漏れる。


「……これじゃ、通らない」


(……春日君は、“勝つ”つもりなんだ)



春日くんに問い掛けした自分…

(……どうして、手裏剣を学ぶのか…)


あの時、自分が投げた問い。


恥ずかしい


同じ問いを自分に問い掛ける

(江梨子 あなたは何故に手裏剣を学ぶの?)



同じ言葉。


でも、今は――

少しだけ異なる


「……もっと」


ぽつりと呟く。


相手を見ることか。

自分を見ることか。


御影は、もう一度構えた。

今度は、少しだけ――


“自分に”


自分の心に打ち込んだ



ーーー



翌日。

「へー、鷹宮さん だったっけ?」

「三年の筆頭で校内の三席でしょ。」


「うん…」


「で、どうだったの?」

弓場が、軽く聞く


御影は、一瞬だけ言葉に詰まる。

「うん……すごかった」


それしか、出てこない。

「いやいや、それはそうでしょ」


弓場は笑う。

「で? 何か学んだ?」


「……それが」

御影は、少しだけ視線を落とす。

「分からない」


「は?」

弓場が眉をひそめる。


「強いのは分かる」

「速いのも」

「でも……それだけじゃない」


弓場は腕を組む。

「じゃあ何?」


「まさか、恋?」

弓場が笑う


茶化したけど、弓場には

御影が本当に自分自身を見つめてる事がわかる


(ここまで江梨子が悩むなんて…)


御影は、少し考える。


言葉を探す。

「……向き合い方、かも」


「は?」

「何それ」


「そんなフワッとしたの、分かるわけないじゃん」

(言葉… そう言葉にしょうよ… 江梨子)


「向き合い方って? なに?」


「なんか足りてなったかも…」


「…」


「……私の中、かも」


「へー」

(江梨子… そんなことないよ…)



「何処が足りてないかも、分からない…」


「それ、分かるようになる?」


「それも、分かんない」

御影は、苦笑する。


一拍。


「でも」

御影の声が、少しだけ変わる。


「それしか、わからなかった」


弓場は、少しだけ黙る。

「……で?」

「どうすんの?」


御影は、迷わず答えた。

「やる」


「…」

弓場は江梨子の言葉を待つ


「分からないなら、やるしかない」

「……届かせたい」


弓場は、目を細め嬉しそうに


「江梨子 できるの?」

少しだけ、試すような声。


御影は、首を横に振る。

「分からない」

正直に。


「でも」

少しだけ、息を吸う。


「届かしたい」

「……そして狙いたい」

「やらないと、ずっと分からないままだから」


沈黙。


弓場は、

「……まあ、らしいね」


一言



「じゃあさ」

軽く拳を握る。

「まずは、私と一緒にやる?」


御影が顔を上げる。


弓場の目は、真っ直ぐだった。

「同じとこで止まってたら、意味ないでしょ」

「お互いに♫」


御影は、少しだけ驚いて――


そして、笑った。

「……うん」


その一言には、

さっきまでよりも、少しだけ芯があった。


廊下の窓から、光が差し込む。

まだ、見えていない。


でも。

進む方向だけは――


もう、迷わない。



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