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半歩 ~守・破・離 短き刃 長き道~  作者: 止水


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第五十話 知りたい  ー届かない距離ー

訓練場の二人を邪魔してはいけない



御影は、出口へと身体を向けた


(……知りたい)

身体は立ち去ることを拒む


言葉にならない“何か”。


やはり――確かめたい。



澪は身体に残った感覚を確かめるように

一人で軽く動いていた。


無駄のない足運び。

力の抜けた構え。


御影は、意を決して声をかける。


「湊川先輩!」


澪が振り向く。


「ん?」


「……あの、お願いがあって」


一拍。


「試合、していただけませんか」


静寂。


澪は一瞬だけ、御影を見た。


上から下まで、測るように。


そして――ふっと笑う。


「いいよ」


御影の目が、わずかに開く。


だが、その次の一言。


「でも、また、今度ね~~」


「……え?」


「もうちょっと、面白くなってからがいい。」


軽い口調。


だが、その言葉はやわらかく、そしてはっきりと距離を示していた。


「……そう、ですか」


御影は、わずかに視線を落とす。


言われてみれば当然

普通は簡単には相手をしてもらえないーランク差ー


ただ――“まだそこにいない”という事実だけが、静かに残る。



「つれないな~~」

蓮が、からかうように言う。

「君、春日の彼女だろ」


(それは違う… でも、今はそんなことはどうでもいい)


「代わりに」


「俺でいいなら、やる?」


御影が顔を上げる。


「……いいんですか?」

ランキングは湊川先輩よりも上 そんな先輩が声をかけてくれた


「軽くだけどね」

軽い笑み。


だが、その目は少しだけ真面目だった。


(まぁ……放っとけない、か)


そんな色が、わずかに混じる。


向かい合う。


間合いに入る。


(……違う)


構えた瞬間、分かる。



(この人、やっぱり “あっち側”だ)


「……行きます」


踏み込む。


速さはある。


迷いもない。


だが――


「うん、いいね」


軽い声と同時に、


“流された”。


(……消えた?)


確かに捉えたはずの軌道が、手応えなく抜ける。


崩そうとする。


踏み込む。


だが――


当たらない。


触れない。


“いなされる”。


(……違う)


技が効かないんじゃない。


(……通ってない)


自分の動きが、“相手の中に入っていない”。


「焦らなくていいよ」


蓮の声は、どこか穏やかだった。


「ちゃんと来てるから。」


来ている?。


だが――届かない。


踏み込む。


もう一度。


今度は、ほんの少しだけ意識を変える。


間合いを取る


御影は一呼吸おいて

「行きます!」


手裏剣が放たれる

御影のお家芸


(……崩す、じゃない)


(……見る)


その瞬間。


わずかに、触れた。


ほんの一瞬。


私も先輩と“噛み合う”。


そう思えた――



次の瞬間には、また外されていた。


息が上がる。


距離が詰まる。


御影は、肩で呼吸をしながらも、視線を外さない。


蓮は、少しだけ頷いた。


「今の、よかった」


御影の目が揺れる。


「……本当ですか」


「うん」


一拍置いて、


「“当てようとしてない” いい動きだったよ」


御影は、その言葉を反芻する。


(……当てない)


言葉と記憶、どこかで繋がる。


何かが込み上げる


「次、行きます」


大きく間合いを取る


六間


御影の得意とする間合い


手裏剣が放たれる


影打ち


蓮は一気に踏み込んできた。


間合いを、壊す。


弾かれる。


(…打ち込まれる )


御影の受けが間に合わない


蓮の踏み込みが 打ち込みが


……止まる。


「今日はここまでにしよっか」


蓮が軽く御影の肩をたたく


完全に間合いを支配されていた



御影は、すぐに頭を下げた。


「……ありがとうございました」


「こちらこそ、ありがとう」

「いいもの見せてもらったよ」


蓮は、いつものように軽く笑っていた。


御影は、小さく息を吐く。


(……やっぱり)


言葉にする。


「すごいですね」


素直に。


飾らずに。


蓮は、少しだけ驚いた顔をしてから、


「まだまだだよ」


と、軽く返し雪の方を見る。


雪は微笑んでいる



(やっぱり……違う)


御影は、はっきりと感じていた。


技じゃない。


強さでもない。


“向き合い方”。


その中にある、何か。


深く一礼する。


さっきよりも、少しだけ自然に。


「……また、お願いします」


蓮は、少しだけ目を細めた。


「うん」


短い返事。


一礼


訓練場を出る。


冬の空気が、頬に触れる。


(……知りたい)


あの日と同じ言葉。


でも――


今は、少しだけ違う。


ただ遠いものじゃない。


届かないものでもない。


“向き合えば、見えてくるもの”。



訓練場を出る足取り――


ほんの少しだけ、変わっていた。




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