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半歩 ~守・破・離 短き刃 長き道~  作者: 止水


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閑話 ズレの距離感  ー 意味が分からない人たちー

休み時間 校舎のベンチ。


「……っていうことがあってさ」


御影は、紙パックのジュースを持ったまま言った。


向かいに座る友人が、ぽかんとする。


「いや待って。どの話? 試合?それとも昨日の練習?」


「金曜日の試合のあとだよ~。いきなりベーカリー・カフェ? に誘われた」


「なんで?」


「それが分かれば苦労しない」


即答だった。


「え、告白とかじゃなくて?」


「絶対、違うと思う。ないない」


「なんで言い切れるの」


「顔」


御影はストローを回しながら、少しだけ目を細める。


「“あ、これ思いついたから言ってみた”って顔だったし…」


「あー……」


妙に納得した顔で、友人が頷く。


「春日くんってさ」


「うん」


「たまに変だよね」


「いや、たまにじゃない」


「常に?」


「そう! 常に 毎回!」


二人、しばらく黙る。


「でもさ」


友人が、ふと笑う。


「悪い人ではないよね」


「うん、それは分かる」


御影も、あっさり頷いた。


「怖い人でもなかった…  むしろ優しくて、いい人」


「だよね」


「ただ――」



「意味が分からない ホント、イ・ミ・フ!」


「そこ致命的じゃない?」


御影は、ジュースを一口飲む。


「でも」


「ちゃんと考えてるのは分かるよ」


「え?」


「この前もさ、試合のあと」


視線を落とす。


「勝ったのに、全然納得してなかった 逆に悩んでた…」


「あー…… 何かわかる…」


「そういうとこ、嫌いじゃないんだけど…」


少しだけ、笑う。


「一緒にカフェは行かない」


「そこは行ってあげなよ!」


「なんで!?」


「なんか可哀想じゃん!」


「そんなの、知らないよ! 彼女でも、母親でもないし~」


「姉じゃなくて母親までいくの? ちょっとウケる!」


少しだけ、声が大きくなる。


周りの視線が一瞬だけ集まって、すぐに離れる。


「……で、その美味しいベーカリーってどこ? あの湊川先輩の押しでしょ」


「知らない」


「え?」


「行ってないし」


「誘われたんじゃないの!?」


「場所は言われてない」


「うわぁ、雑!!」


御影は肩をすくめた。


「じゃぁ、今度聞いとくよ」


「行く気あるの?」


「ない! 全く!」


即答だった。


少しだけ考えて。


「でも、また意味分かんないこと言ってきたら」


「その時は、う~ん ちょっとだけなら、考えるかも。」


友人が、にやっと笑う。


「優しいじゃん」


「だいぶ違う」


御影は、軽く首を振る。


「あえて言うなら…… 興味?」


即答。


「研究対象かよ」


「うん!  それそれ!」


さらっと言い切り、

御影は立ち上がる。


空になった紙パックをくしゃっと潰す。


「まぁ、飽きないし…」


軽く笑って。

「それと、」


少しだけ視線を逸らして。

「私の手内剣、真面目に学ぼうとするし」

「……そういうところは、嫌いじゃない」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

三年の教室


「なぁ、鷹宮」


蓮が振り返る。


「ん?」


そこに立っていたのは――新開地だった。


相変わらず、圧の強い立ち姿。


蓮は軽く肩をすくめる。


「どうした、改まって」


新開地は、一瞬だけ言葉を選ぶように沈黙し――


言った。


「先日の試合についてだ」


一瞬の静寂。


「次に戦うときは 必ず、勝つ」


「おー、いいね それで行こう!」


軽い。


あまりにも軽い。


新開地の表情が、わずかに固まる。


「……その反応は、なんだ?」


「いや、楽しみだなって」


「俺は真面目に言っている…」


「俺も真面目に言ってるよ」


蓮は笑う。


新開地は、しばらく黙ったあと――


「お前は…」


新開地が、じっと蓮を見る。


「なぜ、あの場面で“合わせた”」


「どの場面?」


「二度目の踏み込みだ」


「ああ、あれね」


蓮は少しだけ視線を上げる。


思い出すように。


「なんとなく」


「……なんだと?」


「なんとなく長治がズレてたから、そこに合わせただけ」


新開地の思考が、一瞬止まる。


「……それは」


「うん」


「理屈 ではないな」


「まぁ、たぶんね」


「……」


新開地は、深く息を吐いた。


「理解できん」


「そう?」


「理解できん」


二回言った。


蓮は笑う。


「長治にも、分かるって」


「悔しいが、分からん!」


食い気味だった。


少し間。


蓮が、ふと新開地を見る。


「そういえばさ…」


「なんだ」


「なぁ、お前、このあと暇?飯食わない?」


「……?」


唐突すぎる質問に、新開地の眉がわずかに寄る。


「今日は、稽古の予定はない」


「じゃあさ」


蓮が、にやっと笑う。


「カフェ 行かない?」


「……は? カフェ? お前と?」


「いや、最近 よさそうなお店を聞いてさぁ。」

「マジでパンが美味いらしいんだよ」


一瞬の沈黙。


新開地の脳内で、何かが処理されている。


「……なぜだ」


「なにが?」


「なぜ、試合の話からパンになる」


「いや、流れで」


「流れていない」


即答。


蓮は、けらけら笑う。


「いいじゃん、たまには。俺たちも、お洒落なとこ行かなきゃね」


「……」


新開地は、しばらく考えた。


真剣に。


無駄に真剣に。


そして。


「……断る」


「えー」


「意味が分からん」


「そこ大事?」


「大事だ 彼女でも誘え!」


きっぱり。


蓮は肩をすくめた。


「じゃあいいや」


「一人で行く 腹も減ったし…」


「そうしろ」


即答だった。


新開地が背を向ける。


数歩、歩いて――止まる。


振り返る。


「……蓮」


「ん?」


「その店 ……場所だけ教えろ」


蓮が、一瞬だけ固まって… 笑う


「行く気あるじゃん 気になる?」


「行かん」


「じゃあなんで聞くの」


「確認だ」


「何の?」


「……分からん」


蓮は、声を出して笑った。


「お前もだいぶズレてきたな」


「黙れ そこだけは、お前には負ける」


そう言うとーー

新開地は、なぜか柔らかな顔で去っていった



――数秒。


「……あれ?」


「もしかして… 長治、彼女が出来たのか?」

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