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半歩 ~守・破・離 短き刃 長き道~  作者: 止水


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第二十八話 先に在る者 ーそこに在れー

夕方。

さすがに秋も深まれば、この時間でも日が落ちるようになってきた


訓練場には、もう誰もいない。


窓から差し込む夕日だけが、差し込む

春日は、一人。


静かに、立っていた。


構えも取らず。

ただ、呼吸だけを整えている。


――吸う。

――吐く。


それだけ。


やがて。


ゆっくりと、足を運ぶ。


一歩。


もう一歩。


踏み込みは、速くない。


だが――


止まらない。


そのまま、小太刀を振る。


そして、止まる。


そして、また最初に戻る。


繰り返し。


何度も。


何度も。


同じ動き。


同じ間合い。


同じ呼吸。


ーーーーーーーーーーーーーー

「ねぇ、勝ちたいの?」

ーーーーーーーーーーーーーー


(勝ちたい。 でも、違う!)


春日の中で、わずかな違和感が残る。


(届いているのに――)


(まだ、足りない)


小太刀を下ろす。


目を閉じる。


その時。


ふと、浮かぶ声。


――「忘れろ…」


振り方なんぞ忘れてしまえ

わからなくなるまで”振れ…”


祖父の声だった。


低く、静かな声。


幼い頃から、何度も聞いた言葉。


――「見るな」


――「測るな」


――「合わせるな」




そして。


――「先に在れ」


春日は、ゆっくりと目を開ける。


――「強く 強く在れ」


もう一度、構える。


今度は――


考えない。


呼吸だけ。


一歩。


踏み込む。


その瞬間。


“そこにあるべき場所” に、身体が入る。


振る。


音が、変わる。


鋭い。


だが――静かだ。


止まる。


(今のは……)


わずかに、感触が残る。


だが。


すぐに消える。


(違う)


首を振る。


まだ、再現できない。


もう一度。


踏み込む。


振る。


違う。


また。


繰り返す。


――「積め…」


再び、祖父の声。


――「分かるまで、ではない」


――「出来るまで、でもない」


一拍。


――「ここに、在るまでだ」


春日の呼吸が、少しだけ深くなる。


一歩。


踏み込む。


何も考えない。


ただ――


“そこに在る”


”ここに在る”


振る。


今度は、止まらない。


自然に、次へ繋がる。


一手。


二手。


三手。


流れが、途切れない。



ほんのわずかに。


手応え。


だが。


春日は止めない。


そのまま、繰り返す。



――「心は鬼と在れ」

 鬼に成れ!じゃないのか?

 ”在れ”が分からない!


何度も。


何度も。


何度も。


何度も。


同じように。


同じではなく。


同じように。


少しずつ、ずれながら。


積み重ねる。



外は、もう暗くなり始めていた。


そして――


誰もいないはずの場所に、


もう一つ、気配があるような気がした。


振り向かない。


必要はない。


もう分かっている。


――「そうだ」


祖父の声。


ほんの、わずかに。


柔らいだ気がした。


春日は、剣を振る。


ただ、それだけを繰り返す。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「春日くん」


振り向くと御影さんがいた


「……まだやってるんだ 真面目だね…」


足音は小さい。

けれど、不思議と気配ははっきりしていた。


「灯りもつけずに。見えにくくないの?」


春日は、わずかに首を振った。


「…見えて… ます …」


御影は少しだけ目を細めて――


「そっか。…… ふ~~ん」


「面白いね やっぱり…」


そのあと、何も言わず春日を見ていた…


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