サイラ―ジュの守護龍//炎の制裁
◆◆◆約1ケ月前◆◆◆
「どうしました? 神殿騎士団が揃いもそろって1体のドラゴンと、まともに戦うことすらできないなんて」
「うぉぉぉ!」
歯を食いしばりながら、サルモン神殿に所属する神殿騎士団長以下、数名の神殿騎士たちがドラゴンに剣を叩きこんだ。
――――――手応えはある。
だが、その刃を受けたドラゴンのキズはまるで神聖魔法の加護を受けたかのように、みるみると再生していく。
神殿騎士団長はドラゴンから目を離した。
「これが望みかっ!! 貴様のっ!?」
その視線の先には、女神の降臨とまで謳われた高司祭の姿がある。
高司祭を警護するかのようにドラゴンは彼女のもとで相手を睨みつけた。
ドラゴンを操ることは神以外に不可能。
彼女に一体何が起こったのか?
「私のではない!」
高司祭がヴァルキリーの杖を天にかざす。
「これは至高神の制裁だ! お前らは民から奪い、飢えさせ、私腹を肥やした罪を死を以って償うがいい!! 私はレイア神の使徒として貴様らに天誅を下す!」
ドラゴンが、上体を起こし全身を力ませた。
高司祭が杖を振り下ろすと同時に騎士団に向けドラゴンが口を大きく開ける。
危険を感じた神殿騎士らは盾を構えたが、ドラゴンが放った炎のブレスで神殿騎士たちは瞬時に絶叫し、灰と化した。
ただのドラゴンブレスではない。
ヴァルキリーの杖から放たれる奇跡が更にドラゴンを強化しているのだ。
「フ、フラーマ…この獅子身中の虫め!」
大司教は怒りに震えたままその場を動こうとしない。
いや、動けなかったのかもしれない。
「不思議ですわね。大司教様。私が子供の頃に見た貴方は高司祭の分際でノワールハイムやブランシュバイク、レオンと対等に話していたと言うのに」
高司祭が大司教にゆっくりと近づいてゆく。
「大司教にまで上り詰めた男が、事実、傷ついた騎士たちの癒しの奇跡も唱えることができないとは」
「お前こそ、神に裁かれるわ」
怒りで大司教は錫杖を高司祭に向ける。
だが、奇跡は何も起きない。
司祭にとってそれは神に見放されたことを意味する。
そもそも彼は偶像を崇拝していただろうか?
「なら、なぜしない?」
「なんだと?」
「なぜ、神は私を罰しないのかしら?」
「貴様ぁ!」
「お前は必要ない。神殿騎士団も。法をという権力を乱用し、盗賊のように奪う!貴様らは神に見放されたオルグ以下だわ」
「わ、わしは……大司教なんだぞ」
「私は知っている。先の大戦でローザリア王から賄賂を掴まされ、イシュタルで帝国軍と戦うグランベル軍を挟撃しようと進言したことを。そしてイシュタルに集結した帝国軍にグランベル軍の進軍を伝え、奇襲させたこと。ノワールハイムに気付かれたお前と神殿騎士団はグランベル軍を狙える位置に陣取り、ローザリアに支援していたことを」
「せ、戦争を知らぬ小娘が! 戦争は政治だ。お前なんぞ、ワシが見出さなかったら女郎小屋で――
――――ズグッ!
ヴァルキリーの錫杖で大司祭の腿を突き刺したフラーマ。
「ぎいぁいぃああぁぁぁっ!」
「それだけではない!お前が暗黒教団の司祭にサルモン神殿の秘宝を渡し、大司教を暗殺させ、連合に加担し、今の地位を得たことを!その秘宝で悪魔が降臨したことも!神官の身でありながら、私利私欲のために混沌に加担したお前をドラゴンの炎にて骨をも残さん!」
再び、高司祭はヴァルキリーの杖を天にかざした。
「待てっ!金をやる……孤児院にも!」
「真の英雄とは、今助けを呼ぶ目の前の者のために命懸けで戦う者だ!罪なき者を罪人にしてきたお前は至高神の使徒たる竜の炎で制裁せん!」
高司祭が杖を振りおろすとドラゴンは逃げる大司祭に火を噴いた。
「ぐああぐああぎゃあぁぁぁぁっ!!」
大司祭は塵となりて消える。
「そんな英雄……果たしているかしら?」




