OP2//ドラゴンスレイヤー
ローザリア王国国境沿いの地方都市エスタミル領は先の大戦で暗黒皇帝を討ち取った英雄レオンの治める領地である。
このエスタミルは十余年前の大戦では帝都であったことは人々の記憶には薄々と残る程度になる。
法と秩序を重んじる帝国軍と自由と理想を求める貴族連合軍は貴族連合軍の大勝利で終結したものの、2大盟主である白虎王は西のローザリア、黒狼王は東のグランベルで自らを王と名乗ったことで分裂する。
そんな冷戦時代のエスタミルには稀有な冒険者がいる。
ドラゴンを専門に狩るドラゴンスレイヤーと呼ばれる冒険者だ。
その大剣こそドラゴンスレイヤーと呼ばれ、本人は「俺に名はない。ただ……この剣がドラゴンスレイヤーと」と言うのは冒険者ギルド内では有名で、彼の登録名はアレフ。
エスタミルでは本来5段階の冒険者ランクを飛び越えた唯一のLv6、Sランク冒険者である。
噂では先の大戦で活躍した帝国軍の将軍のひとりで〝黒衣の将軍〟と呼ばれていたそうだが、エスタミルの冒険者たちは敢えて知らないフリをする。
今では〝黒い戦士〟の名で呼ばれ、恐らくは将軍時代の黒い鎧〝ダークヴィルダー〟も塗装は剥げ、至る所にある痛みは隠せない。
だが、それを指摘する者も今はいない。
大剣と黒い鎧は彼の一部であることは明白だからだ。
冒険の後に飲む一杯の酒は格別だ。
供の3人はシャワーを浴びた後に合流すると言い帰ったが、
「お隣空いてるかしら? ドラスレ様♡」
「当たり前だ。お前のために空けといたんだからな」
美しい金髪のエルフィン族の少女メルルは冒険者ギルド受付嬢である。
このエスタミルの冒険者ギルドでは営業成績No1。
「ドラスレ様にしか頼めない案件があるの……もちろん報酬とは別に私の大サービス付きでね!」
「ちょうど、溜まっていたところだ。んで、なんだ?その案件ってのは?」
メルルは依頼書である羊皮紙を渡す。
「水の都市サイラ―ジュ……そこに現れたドラゴンはどうやら記録にないドラゴンのようなの。そしてサルモン神殿の大司祭と神殿騎士団長がドラゴンの犠牲になったわ。大司祭の代行である高司祭のフラーマ様から直々に黒衣の将軍アレフを指名しているのよ」
そして、もう一枚の手紙を差し出す。
「ドラスレ様……ローザリア王国レイア教団長ギメル様直筆の貴方宛の紹介状も……」
「ちっ……ギメルの野郎……」
メルルは僅かに黒い戦士の口元が緩んだのを見逃さなかった。
戦闘に身を置く者は至高神の加護で老化が遅いが黒い戦士は30代後半。
ローザリアの最高司祭のギメルも元帝国将軍であった。
詳しく言うならローザリア聖騎士団長ダレスも元帝国将軍だ。
ローザリア王ブランシュバイクは地下迷宮の魔人将を倒した彼らが望むならローザリア軍の上級大将の席を用意したという。
だが、彼と帝国軍最強と言われる剣匠ザインは独自の道を歩むことになる。
――――ガッ
黒い戦士は席を立つと大剣ドラゴンスレイヤーに手を伸ばす。
「アユリアとククルナには所用で出かけたとだけ言え……あ、あとスメディーにもな」
スメディーは彼のパートナーをスポットで務めるグランベル出身のエルフィンだ。
「も、もぅ行くのですか? 私と一晩遊んでからでも……」
その言葉が宙を泳ぎ、黒い戦士は酒場をあとにする。
(やっぱり、根っからの英雄なんですよねドラスレ様は……)
「無事に帰ってきてくださいね。私の勇者様♡」
そして、テーブルに残る彼のグラスを一口味わう。




