薬草採取
俺は、それからしばらくの間、体調を崩した。高熱時特有のテンションのおかしさで、ポテトで家のはじからはじまで町を作ったりしようとしたり、大学に無理やり行こうとしたりするのをルイスに止められたりしたが、ついに俺は快復し薬草採取のバイトを始められた。
「ここが、今日の採取場所だよ」
「ありがとな!たくさん採取しようぜ!」
薬草に関する古本を片手に、俺たちは薬草採取を始めた。ここは、薬草がかなり群生しているところなので、薬草がとり放題だった。だが、ここに生えている「ラッゲル草」はよく生えているものなので、量を多くとらなければならない。
薬草本によれば、「世界が不死と死の間で揺らいだ時、魂腐の地より現れたいかなる暗闇の中でもうすぼんやりと光る、希望を示す植物」とされている。
…この古本、大丈夫か?ちなみに、この薬草の薬効は、ストレスの軽減や、抗うつ作用、これで濃く抽出した茶は、腹痛に効く。とくに、ストレス性の胃痛に効くそうだ。
スコップで薬草の下を、根を傷つけないように掘る。薬草を引っ張ってもあまり抵抗がなくなれば、採る。それの繰り返しだ。簡単なお仕事すぎて、後々、きつくなってくるかもしれない。
「ここが今日の採取場所となりますわ」
「ありがとうございますわ。今日もたくさん薬草採取いたしますわよ~」
案の定、きつくなっていた。毎日毎日、薬草を採取しては大学に届ける。そしてカリーナと遊ぶ。これの繰り返し。薬草採取を始めて早数週間、もう俺たちは飽き始めていた。そう。口調をその日その日で変えて話すくらいには。これはもしかしたら、高熱時のテンションよりひどいかもしれない。
「カリーナちゃん、どう過ごしているかなぁ」
ルイスは、こういった作業が嫌いなようで、もう口調が乱れていた。
最近、ルイスはこの作業をすると、カリーナについて話すことが多くなっていた。多分、最近の一番の癒しだからであろう。
「ルイスさま、口調が乱れておりますわよ」
「ああ、本当ですわ。いけない、いけない」
夕暮れ時になって、本日三度目の大学に行くと、ルイスは手早く手続きを終え、シャドウマンを呼び、カリーナと遊びに行った。俺はルイスのように体力がないため、大学のベンチに座って、ルイスの帰りを待つことにした。夜の九時まで遊んでいそうだが、大丈夫だ。待つのはなれている。
「そちらも待ち人か?」
何か話しかけられたのなら、何か話すのが礼儀というものだろう。だが、ただ話すだけでは疲れた体は応対したくないと言っている。ので、ゲームコマンド風に考えることにした。
曲がり角からイムパレライ先生が現れた!どうする?
▶話す
「はい、そうです。イムパレライ先生は誰を待っているのですか?」
「ああ、副学長を待っている。以前、私は怪我をしただろう?」
「イムパレライ先生と初めてエンカウントしたときのですか?」
まだ、ゲームテキスト気分が抜けきっていなかった。失礼に思われたかもしれない。
「懐かしいな、その用語。その通りだ。それを話したら、『疲労をためすぎだ、きちんと休め、休めるようになるまで同居する』と、言われてしまってな。それで、今日も彼女を待っているわけだ」
これは聞いていいことなのだろうか。うーん。わからない。
「ああ、彼女は一人暮らしではないことを言い忘れていたな。すまないね。少し、きみを驚かせたくって。」
ああ、よかった。一人暮らしよりは断然いい。すっぱ抜かれても、政略結婚として騒がれるくらいになるから。
「それでも問題があるから、私も反対したのだがな。彼女の家族にも心配され、こういったことになっているわけだよ」
一応、イムパレライ先生もまずいと思っていたのか。よかった。それにしても、学長はたくさんの人から心配されているんだな。俺もこれから心配しよう。
「そうなんですか。俺もこれから心配するようにしますね」
「やめてくれ。これ以上、私を心配する人が増えたら、仕事がしにくくなる」
イムパレライ先生は苦笑している。だが、その表情には嬉しさがにじんでいた。
「ああ、そういえば、君たちは何をしにここまで来たのだ?今日は講義をとっていないはずだったが」
「大学が募集していた薬草採取のバイトをしていたので、来たんです」
イムパレライ先生は少し嬉しそうにした。
「そうか。薬草採取のバイトといえば最近、品質がいいラッゲル草が薬学科で売られるようになったんだが、あれは薬草採取のバイトがとってきたものを売っているそうじゃないか。あれを採取した人は、きみたちか?」
「そうです。根本をかなり丁寧にとっていたので、そういわれると嬉しいです」
イムパレライ先生は、うなずいた。そして、ジェスチャーをしながら話し始めた。
「こう、ある程度、掘ったらぶちっととってしまう人が多いのでな。きみたちのように丁寧に採取してくれると、とても嬉しいよ。」
学長はすっごく、にこにこしている。
「それで、私から提案なのだが」
「コーサくん、帰るよ、あ、学生さんと話の途中だった?」
曲がり角から、白髪に赤紫色の瞳をした女性が立っていた。この人が、イムパレライ先生の言っていた、副学長だろうか。
「すぐ終わるから、少しそこで待っていてくれないか?」
「わっかた。じゃ、きみの隣に座らせてもらうね」
「私からの提案なのだが、君たちが採ってきた薬草を、私に売ってくれないか?もちろん、薬学科で買うより多少色はつけられる。どうだ?」
薬学科で売られている薬草は、俺たちが売った値段より、高く売られている。まぁ、そうしないと商売というものは成り立たないから仕方ないのだが。だが、それについて少し思うところはあった。これくらいの値段で売れないかな、と。イムパレライ先生の誘いは、そのちょっとした欲望を満たすのにぴったりだった。
「わかりました。俺の友人にもその話を通しておきますね」
「そうさせていただくと、ありがたい。そういえば、明日、君たちは私の講義をとっていたな。それが終わってから、聞きに来るよ。それまでに、彼に話をしておいてくれ」
イムパレライ先生は、ひらひらと長いマントをなびかせ、副学長に薬の使用量と、仕事の多さを指摘され、苦笑いしながら去って行った。
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