【一話完結】~赤ずきんの婚活~
以下のポイントが分かれば、この話からでもお読みいただけます
・名作の部類に入る文学が人の姿になった世界
・擬人化した文学のことを「名作」と呼ぶ
・「名作」は各々の特性に応じた強大な異能力を持つ
・「名作」たちは図書館で共同生活をしている
更級日記が図書館で働いていると、図書館利用客の男性と歓談している司書の女性が目についた。その女性は赤いベレー帽をかぶっており、ゆるふわ系で可愛く、いわゆるミルクティー系女子、という感じであった。利用客が随分と楽しそうにしているのが気になり、更級日記は近くにいた館長に尋ねてみた。
「館長、あちらの女性は……」
「ああ、彼女は赤ずきんさんですよ。」
「赤ずきんさんと話している方はお知り合いでしょうか?」
「多分違うと思います。ナンパじゃないでしょうか?」
「ナンパ!?」
「はい、赤ずきんさん、モテますからね〰️。ほら、声量を抑えているけどすごく楽しそうでしょう。」
「だ、大丈夫なんですか……?」
「うーん……彼女、すごくかわいいんですけど、すごくチョロいので、大丈夫かは微妙ですが……。」
「チョロいんですか!?あんなにかわいいのに!?」
「惚れやすいし、人を信用しやすいんですよね。そこが良いところでもあるんですけど。」
「危険じゃないですか!……止めに行ってもいいですか?」
「いえ、彼女自身、よく恋人を欲しているのでそれは無粋かもしれません……それに……」
「それに?」
「それに、彼女は危険な目には合わないので、ね。」
館長は最後にいたずらっ子っぽい笑みを浮かべた。
「ねえ、シンデレラ〰️!私の今日の合コン、これでいいかなあ?」
「うん、今日も可愛いよ、赤ずきん。相変わらず、赤いベレー帽が似合うね。」
「えへへ、ありがとう!」
赤ずきん曰く、ずきんをかぶるのはは今日では「流石にダサい」そうで、代わりにベレー帽をかぶっている。
「今日こそ運命の人に出会えるかなあ?」
「そうだといいね……でも気をつけてね?男の人はほとんど…」
「オオカミ、だもんね?もうそのお説教聞き飽きたよ〰️。」
ごめんごめん、とシンデレラは返した。
それにしても赤ずきんはチョロいのだ。ビジュアルが良く、話も上手い、が、男性にいつまでたっても免疫ができず、少しほだされるとすぐに好きになってしまうのだ。
「じゃあ、夢の舞踏会へといってきまーす!」
赤ずきんは明るく叫んで出て行った。シンデレラは苦笑いで見送った。
「それでさ、とうとう俺は言ってやったのよ!「そんな条件を飲むのは部長のお小遣いくらいです」ってさ!」
「えー、すごいですね!」
赤ずきんは今回の合コンでもやはりすぐに打ち解けた。たくさんの男の参加者がこぞって彼女に話しかける。赤ずきん自身も目の前のイケメン外資系企業のサラリーマンを気に入ったようであった。
「……ねえ、赤ずきんちゃん、君おもしろいね!俺、まだちょっと飲み足りないんだけど、一緒に飲まない?」
「私も飲みたいですー!」
そして2人は合コンを抜け出し、雰囲気の良いバーで飲み出した。
互いの他愛のない身の上話を一通り終えると、少しずつ恋ばなが始まった。
「赤ずきんちゃん、どんな人がタイプなの?」
「え〰️よく分かんないです……お酒が強くて、話が面白い人、かなあ。」
そう言うと赤ずきんはチラリと男に目配せした。
男は自信があるかのように含み笑いをした。
「…もう、やっぱり恥ずかしいです!それじゃあ、好きな女性のタイプはどんな感じですか!?」
赤ずきんは聞き返した、
「俺?俺は、かわいくて、赤が似合う人、かなあ。」
「やだ、もう!」
「あれ、赤ずきんちゃん、自分で赤が似合ってるって思ってるの!?」
「いや、そういう訳じゃないですけど……え、似合ってませんか?」
「ううん、……すごーく似合ってるよ。」
そひて2人は互いをじっと見つめあった。
「……赤ずきんちゃんには今までどのくらい彼氏がいたことあるの?」
「えー…実は、いたことないんです、彼氏。」
「えー、うそだ!モテそうなのに!」
「本当なんです〰️。全然モテなくて〰️。というか、男の人達と話すのも全然なれなくて。」
「えー。本当かなあ!?」
「はい〰️。男の人達は皆オオカミって言うじゃないですか。それに、名作として人の姿になったのも結構最近ですし。」
「そうなの〰️?じゃあさ……」
そう言うと男はそっと赤ずきんの腰に手を回した。
「俺と一緒に、初めてのこと、いっぱいしてみない?」
男が赤ずきんの耳元でそっとささやいた。赤ずきんは既にメロメロになっていたので、男の肩にそっとしだれかかって応じた。
2人はしばらくそのままでいた後、
「……じゃあそろそろ行こうか。」
「はい……。」
と言い合い、席を立った。
男が会計をしている間に、赤ずきんに電話がかかってきた。
「もしもし、赤ずきん?」
「もしもし?……あ、館長。どうされましたか?」
「実は今、警察が図書館に来ていまして。」
名作は強大な能力を持っている。警察はその能力を借りようと、ちょこちょこ図書館に依頼に来るのだ。
「赤ずきんさんが気にかけていた強盗強姦魔が車に乗っているのが近くで目撃されたみたいで。もし時間があったら赤ずきんさんが捕まえたいかと思って一応報告させていただきました。ほら、今まで頑張っていらっしゃったので。いえ、忙しいならこっちで対応しておくから気にしないで……。」
「私、行く。行きます。場所は分かります?送っていただけませんか?」
赤ずきんはすぐに返事をした。そして会計を済ませた男に対して、すみません、急用ができまして、先に行っていていただけませんか、と言い残して駆け出した。
「兄貴〰️。今回も大漁でしたね~。」
「だな。しかも女の方もなかなか具合が良かったな。」
「本当に!あのおっぱい、たまらなかったですね~。」
強盗強姦魔の2人は、車を運転しながら今日の感想を言い合っていた。彼らの手管はなれたもので、毎回なかなかの成果を上げていた。
「今日は祝杯ですね!」
「だな!……動画を見ながら、美味しい酒でも飲むか。」
そう言い合うと、突然、
パアンッ!
と音を立てて車がパンクした。
「な、何だ!?」
2人が慌てていると、次に、
カンッ!
と音を立てて車のフロントに穴が空いた。
「やばい!車が動かなくなりました!」
「狙われているみたいだ!降りろ!」
2人は強奪した物を入れた袋を持って、急いで車を降りた。並んで走り出そうとすると、2人の間にカンッと音を立てて銃弾が飛んできた。
兄貴と呼ばれている方がはっと弾の飛んできた方を見たが、どこから撃っているかはよく分からなかった。焦っていると、今度は足元に銃弾がかすめた。
「や、やばい……狙われているぞ!二手に分かれて逃げよう!」
そして2人は袋をその場に置いて、一目散に走り出した。兄貴が走っていると、少し離れた所から、子分の、「うわっ」という声が聞こえてきた。撃たれたのか、あいつ……?
だがぐずぐずしている暇はない。この暗闇の中でかなりの精度で撃ってくるとは。速く逃げなければ。そうして暗い夜道を走っていった。
パリン!
電灯が割れる音がした。まさか追手か……?周囲が何も見えなくなった。でもこの暗がりでは追手も俺を撃ちにくいはず。きっと外したんだろう。安心して遠くへ逃げよう。
すると、
ヒュッ!
前から頬を何かかすめた。
まさか先回りされている!?やばいやばいやばい!
男は元来た道を走って戻った。
車のある場所まで来ると、袋がそのまま置いてあった。
「はあ、良かった……。」
とりあえずこのまま袋を積んで車で逃げよう。うまく行けば取り分を多めにできるかもしれないな。
助かった、という思いから、ふうっと深いため息をついた。
だが、袋が妙に重い。担ぎ上げられない。
おそるおそる袋の中身を覗いて見た。
袋の中には、先程まで一緒にいた、子分が頭から血を流しているのが見えた。
「うわあああああ!」
男が叫びながら後ずさると、後ろからひゅっと何かがかすめた。
まさか、と思いおそるおそる後ろを振り向いた。
そこには、ベレー帽をかぶり、大きな銃を構えたかわいらしい女性が笑顔で立っていた。
「ねえ、あなたはどうして焦っているの?」
赤ずきんは男性に聞いた。
「それは、お前が撃ってくるからだろ!」
「それじゃあ、あなたはどうして強盗とか強姦とか、悪いことをいっぱいしたの?」
「俺はこいつに指示されてやっただけで……頼む、今回だけなんだ、見逃してくれ!」
「そうなんだ……認めないんだね?」
そして赤ずきんは銃を構えた。
「悪いオオカミさんはお仕置きしなきゃ、だよね?」
パアンッ!
ふう。犯人2人を麻酔銃で眠らせると赤ずきんはふうっとため息をついた。良かった。強姦何てするクズオオカミを成敗できた。すると、自分のことを見つめる目線に気がついた。
先程まで合コンで一緒にいた男性であった。彼が引きつった笑顔でこちらを見ていた。
「え、えーと……。」
やばい。見られてた!?
赤ずきんが戸惑っていると、男性が話し出した。、
「今、銃を撃ってた……?」
「あ、あのね。これはお仕事でお願いされててね、この人達は強姦と強盗した連続犯なの。それに麻酔銃で眠らせてるだけだから安心してね、あ、パンクさせる時は実弾だったけど。」
赤ずきんは焦りながら答えた。
「……じゅ、銃はどこから………?」
「こ、この銃はね、マゼピン商会っていう良い会社のおじさんがくれたものでね。すごいコンパクトになって持ち歩けるの!ほら、かっこいいでしょ?」
「いや、その前に、何で合コンに銃を………あと、ふ、ふ、袋………」
「あ、犯人の子分をね、眠らせてね、血糊をつけてみたの。ほら、そしたら親分が怖がるかな〰️って思ってね……」
男は少しずつ後ずさりし、とうとう、
「ごめん!」
と叫んで逃げ出してしまった。
赤ずきんはへなへなと座り込んだ。
あーあ。私に彼氏はいつできるんだろ。
赤ずきんからの通報を受けて駆けつけた館長とシンデレラは2人のやり取りを見ていた。
そして、同情するかのようにため息をついた。
赤ずきん:能力「狙撃者」。ものすごい精度でぶっぱなす。悪いオオカミさんには容赦しないぞ。
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