イクスを信じる事にしました
「手紙見た、何アレ」
「謝罪文を色々と考えてたんだが……どれもしっくり来なくて。
だからストレートに書いてみた」
「なんで手紙?」
「君に負担をかけず、早く伝えなければいけないと思ったんだ」
「……なるほど」
何となく理解した。
この人本気で言ってる、それが間違ってないと思ってる。
いっぱい考えて出した結論だから間違いないだろう、でもなんか私まだ怒ってる、なんで?って顔してる。
せっかく綺麗な銀の髪はクッションかぶってぐちゃぐちゃだし、蒼い瞳は不安げに揺れている。
1部のお姉様達からはそれはもう、可愛がられそうな整った顔立ちだけど……私からすれば直前まで遊んでた子供達とそう変わらない。
となれば、私が言うべきは怒りじゃない。
指導だ。
「……イクスヴァーノさん」
「イクスで良い、長いだろう」
「分かったイクス、私はミヤで良い。
イクス、私はまず君に謝って欲しかった」
「え?」
驚いた様に私を見上げる。
それにじっと視線を返しながら「初めに」と付け足すと肩を落とす。
「あの時私、正直イクスに幻滅した。
無責任に私を召喚しておいて謝罪も無し、私があっちの世界で生きて来た時間や人間関係、両親や兄妹と過ごした全部を無くされた上に自己紹介は上から目線。
信じようとした私の気持ちを踏みにじる行動だったと思うよ」
「……」
「イクスは多分、ものすごく考える人…だと思うんだ。
この人はどう言う言葉を好むかとか、こう言えばきっとこう返って来るとかさ。
そうやって沢山考えて、1番自分が傷付かない方法を無意識に選んでるんじゃない?」
私の言葉に、驚いた様に目を見開く。
「それならやっぱり、まずは謝って欲しかった。
そうじゃないと何も知らない人を信じられないよ」
「そ……そう、か」
「そうか、で終わらせないで。
ちゃんと私の目を見て、今私が何を考えてるか考えて」
「えっ」
目の前まで来て、ソファの前に腰を降ろす。
小さい子もそうだけど、感情の整理が出来てない内に出す答えはまだ不安定で…だけどその分素直だ。
だから、ストレートにごめんなさいの言葉は正しい。
でもまだその過程が幼過ぎる。
目を泳がせるイクス、それを微笑ましげに見守るアネッサ。
私はじっと蒼の瞳を見詰めた。
「私はイクスを信じて良いの?
それとも信じるのは諦めてこの屋敷を出ようか、それならイクスに迷惑はかけないし一人で野垂れ死にでもしたらお荷物では無いよね」
「それは嫌だ!」
「なんでだか理由は説明出来そう?」
「……ええと、僕は……君に謝罪したい。
その上で…君から奪ってしまった時間を…返せ無いから、新たに……君が心から楽しいと思える時間を作る手伝いがしたいと思う!!」
「そう」
沢山考えてくれたんだろうその言葉を、今は信じよう。
私は頷いた。
「分かった、じゃあ信じる」
それは私自身が納得して出した結論だった。