お先真っ暗
かくれんぼをしていた。
目を閉じて100数えて、隠れていた子供達を探しに行く。
1から順番に数え始めてちょうど100の時に手のひらを退けて目を開けると、異世界でしたとかどゆこと?
窓の外を流れる風は寒いくらいで、肩に掛けたブランケットをさらに手繰り寄せた。
近所の子供達とお母さん達が買い物の間公園でかくれんぼしていたら、次に目を開けた時には全く見覚えの無い場所に居た。
綺麗なアイボリーの壁紙に金の細工、尻もちをついていたその掌に伝わる上質な素材で出来ていると予測出来るカーペット、大きな執務机の上には山の様に積まれた本。
そして私の目の前に居るのが、驚き顔で私を見詰めている2つの蒼。
ありえないくらい綺麗な、アニメの世界にでも出て来そうな銀の髪と蒼い瞳を持つ男の人。
スーツとも違う、かっちりした服装のその人は「やってしまった…」と小さな声で呟いて、手に持っていた本と私を交互に見やった。
結論、ちょっとした出来心で召喚魔術を試みたところ出来ちゃったとの事。
もちろん一方通行で帰り道の保証無し。
彼は固まるばかりでその綺麗な蒼の瞳を輝かせるだけ。
自分のした事の罪の重さと召喚出来てしまった興奮度で半々だったので「後日話しをしよう」とだけ行って部屋を用意して貰った。
「……異世界転生とか召喚とかの本は色々読んで来たけど、自分がガチで異世界来るとは…。
子供達大丈夫かなあ、お母さん達と合流出来たのかな。
そもそも私の存在ってどうなるんだろ、スッパリ抜き取られたり消されたり……?
うーん、答えが全く思い付かないな」
外を見上げればまだ薄暗く、山向こうから太陽が登って来る様子が伺える。
用意して貰った部屋はホテル以上に綺麗で広くて素晴らしい。
知ってるホテルのランクも全然少ないけども、それでも上等だと分かるくらいなので、彼は恐らく良いところの育ちが産まれで、好きに出来る部屋もあったのだろうと推測。
パッと見はそんなに歳を食ってない印象、大人と言うよりはまだ精神面子供にも見えたし…この建物はめちゃくちゃ広いし、どこかの貴族とかかな。
メイドさん美人だし、この部屋に案内された時に赤い髪の女の子が付いてくれる事になったらしく朝には起こしに来てくれるとも言っていた。
まだあの蒼い人とはちゃんと話せてないし、許されるなら身分と当面の資金だけ貰って街で働くかと観念する事にした。
空はまだ明るくない。
薄暗い朝焼けを見詰めながら、これから始まる何も分からない世界に溜め息を吐き出すのだった。