ツンデレ義弟はチョロすぎる
「大体、あなたがチョロすぎるのよ!」
チョロ……?
時々義姉は不思議な言葉を使う。
どんな月のない夜でもこれほどの黒さはないと思うほどの見事な黒髪。艶めいたそれは長くゆるく優しい曲線を描き、腰ほどまでにある。瞳は深いサファイアのような色を湛え、少しゆらゆらと揺れていた。
一体誰だ。義姉様を泣かせたのは。
さっきまで俺と義姉様は話をしていた。義姉様には婚約者がいる。王子だかなんだか知らないが、義姉様と釣り合っているとは到底思えない優男だ。その婚約者は聖女で平民の女と恋に落ちたらしい。義姉様はやっぱり婚約破棄されてしまうんだと、その美しい瞳からぽろりと涙をこぼした。
はぁ? あり得ないだろう、それは。王子の婚約など政略的問題だぞ。そう簡単に婚約破棄などできるはずがない。
義姉様にはちょっと常識はずれなところがあって、今みたいに到底あり得ないことを心配する時がある。そういうことを心配している暇があったら、後期試験を心配したほうがいい。前期の試験が散々な結果だった。まあ、多少勉強ができなくても、義姉様なら公爵家の女主人は務まる。義姉様は毎日美しく楽しく笑っていればいい。面倒なことは全部俺がやる。
まずは義姉様の涙を止めねば。
「義姉様。泣くと化粧が崩れてみっともないことになりますよ」
義姉様の化粧は社交界の華と呼ばれるマリエッタ嬢よりも遥かに薄い。義姉様の美しさを際立たせるように薄くはいた化粧は瞬きとともに剥がれ、珊瑚色の涙を作った。
「だって……だってぇえ」
幼い子供のようにドレスをぎゅっと握りしめて義姉様は泣き続ける。
「悪役令嬢……婚約破棄……テンプレすぎる」
あくやく? てんぷれってなんだ?
よくわからないが、ちょっと付き合い始めたくらいで婚約破棄されると思考が飛躍してしまうところは、なんとも義姉様らしい。こんな義姉様にはもう僕はすっかり慣れてしまっている。だからまぁ……冗談だ。冗談。あわよくば……むしろそうなるべきだとか思っていない。
「大体、王子が勝手に婚約破棄なんてできないでしょう?」
「それはいいのよ。別に王子は好きじゃないし。断罪されないように証拠も固めたわ。そもそもヒロインとしゃべらないように頑張ったし、取り巻きが勝手にやらないように取り巻きも作らなかったし。なんなら私のほうがずっと頭が悪いから、張り合うとかないしぃ……」
自分で自分をけなして泣くとかすごいな。
ともかく、義姉様はぽろぽろと涙をこぼし続ける。そんなに泣き続けたら目が腫れるぞ。明日はきっと目が腫れているからと朝から大騒ぎだ。場合によっては僕も午前中は休まなくてはいけない。
「じゃあ、どうして義姉様は泣いているんです?」
「だって……ヨハンが私とけっ……けけけけ、結婚するって、言うからああ!!」
「僕だって別にどうしても義姉様と結婚したいってわけじゃないですよ。でも僕と義姉様は血が直接つながってませんし、僕が公爵家を継ぐのであれば直系の義姉様と結婚するのに何の問題もないのでは?」
だからつい、婚約破棄されるのならば僕と結婚すればいいと言ってしまったのだ。
別にどうしても何が何でも義姉様と結婚したいわけじゃない。王子から婚約破棄されればとんでもない醜聞だ。誰も貰い手がいなくなるだろう。好都合……いや、だったら仕方がないから僕がもらってやろうというわけだ。義姉様に触れる権利は誰にも渡さない。
義姉様はぐっと唇を噛みしめる。しゃくりあげるのを止めたかったのかも知れない。どちらにしろ、唇に傷をつけるなんて言語道断だ。
「義姉様。唇を噛むと腫れます」
「わかってるわよぉ」
義姉様は何度も深呼吸をする。かわ……こんなに子供っぽくていいのか。義姉様の言うとおりなら数カ月後には学園を卒業して僕と婚約するというのに。妃教育は終わっていると聞いているが、公爵家としての女主人としての教育はまったくしていなかったな。今からでも義父上にお願いして教育係を用意してもらうか。
「……王子が学園にいるという聖女とお付き合いをしているのは間違いないんですね?」
「そうよ……って、あなたアリスのことを知らないの?」
「ああ、アリスってあの?」
よく王子の腕にぶらさがってる猿みたいに小さい女か。髪がミルキーローズと同じ色でバラ園のアーチと見事に同化していた女か。あのバラは義姉様にとても良く似合う。婚約披露のときのドレスはあのバラをイメージしたドレスを作ってもらおう。ちょっと子供っぽい義姉様にはちょうどいいしな。
「なんかそんな女いましたね。学業成績は……」
「悪かったわね! 私のほうが下よ!!」
「平民より下なんですか……」
義姉様はキッと僕を睨みつけるがまったく怖くはない。いい塩梅に涙も止まったようだ。
「いいじゃない! 別に成績優秀で卒業しようとか思ってないもの」
「だからって手を抜くのはどうかと思いますけどね」
「うるさいわね!」
全力であの成績とか本当だろうか。妃教育は問題ないと言われているということは、学業でもそれなりの成績を残せるはずなのに。
義姉様には不思議なことが多い。
公爵家の令嬢だというのに考え方が妙に庶民的だ。庶民的というのも違うか。常識とは違うことをよくやる。どこかおどおどしていて卑屈なのかとおもえば、自信満々におかしなことをやらかしたりする。天真爛漫かと思えば、変に達観したところもあり、さっきみたいに聞いたことのない言葉を時々口にする。
「もおおおおお! ……もうちょっと優しくしてくれてもいいじゃない」
僕はびっくりして目をそらした。心臓が止まるかと思った。
恥じらうように目を伏せた義姉様。かわい……いやいや。めがみ……いやいや。義姉様との婚約を破棄してバラ園のアーチを選ぶとか王子は正気か?
恐る恐る視線を義姉様に戻す。
少し俯いて軽く唇の内側を噛むような仕草。逸らされたちょっと泣きそうな瞳。
あ、心臓とまった。
瞬きをすると目の前に小さな義姉様がいた。黒い髪はきつく縦にローリングしている。濃いピンクのドレス。この義姉様は見たことがある。ドレスは水色だった気がするが。
僕の目の前に立っている義姉様は、少し顎を上げて僕を扇子で指した。
「今日からあなたはわたくしの下僕よ!」
あ?
――まあ、どうしても義姉様が僕を下僕にしたいっていうなら、やってあげなくはないですけど。
「そればいいですけど、義姉様。どうしてそんなに小さくなっちゃったんです?」
全部言い終わる前に僕は扇子で殴られた。無茶苦茶痛い。がむしゃらに手を動かすが、何度も何度も義姉様に扇子で殴られる。一体何があったんだ。さっきまで泣いていたじゃないか。
庇う自分の手が目に入った。義姉様より小さい……だと?
驚いている間に義姉様の扇子が喉に当たって、僕は気を失った。
そして目覚めてわかったことは、僕は10年前に戻っていたということだった。
それも義姉様と初めて会った瞬間に。
義姉様は公爵家の一人娘。大事な家を取り潰すわけにはいかないと義姉様の曾祖母の子供の娘の嫁ぎ先がまた親戚でその息子の子供が……という僕も殆ど忘れてしまったが、直接は血は繋がっていないが優秀な僕を公爵様は養子にしたわけだ。
その僕を義姉様は弟ではなく下僕だと言って虐めてきた。
――おかしい。あの時義姉様は天使のような笑顔で「私を本当の姉だと思ってくださいね」と言ってくれたのに。
こんなのは夢だと思った。どうせなら義姉様が僕に甘えてくれたり、抱きしめてくれたり……好きだって言ってくれるようなのがよかった。何度寝ても悪夢は醒めなかった。
自分よりも僕のことを心配してくれる義姉様はいなくなっていて、底意地の悪い義姉様しかいない世界で、僕は生きていかなくてはいけないのだとわかるのにそう長くはかからなかった。
最初は機嫌でも悪いのかと思った。ちょっとからかっただけで義姉様は顔を真っ赤にしながら大声を出す。淑女とは思えない。それがまたかわいいのだけど。だがそういうことではないらしい。
今の義姉様は常にイライラしていて、ちょっとでも気に入らないことがあると使用人や僕に当たり散らす。それでも義姉様は義姉様なので、それなりに機嫌を取ったりしていた。真面目に付き合うと疲れてしまうので、戻る前よりずっと距離は取るようにはなったが。僕が公爵家の養子であることは事実だが、それを事あるごとに言われるのはいくら義姉様の声でも面倒くさい。
あまりに面倒くさいので、一度「それが何か?」と言ったら紅茶入りのカップを投げつけられた。当然義姉様のドレスにも紅茶が溢れて汚れたのは僕のせいだと喚いていた。やっぱり義姉様は馬鹿なんだとわかってほっとした。
14歳になると義姉様は貴族の子息が通う学園に入学した。義姉様のいない屋敷はとても平和で、でも――寂しかった。いや、寂しくない。清々した。
一年後、入学して僕はびっくりした。
義姉様の成績がいい。学年2位とか何があったんだ。12歳で婚約したこの国の第一王子が1位だった。そこはいい。戻る前と一緒だ。
だが学年1、2位なのでペアになることが必要な授業では必ず王子と一緒になる。義姉様は王子にも近寄りたくないと言っていなかったか? どういう心境の変化だろう。婚約が決まった時も絶望したような面白い顔になっていた。今の義姉様みたいに高笑いなんかしなかった。
成長すれば僕の知っている義姉様になるのではと、一縷の望みを抱いていたがそれが脆くも崩れ去ったことに気づいた。義姉様は初めて会った時のような縦ロールのままだし、赤とか紫とかちょっとどぎつい色のドレスを好む。以前の義姉様なら絶対に選ばなかった色だ。
そして学園の中でも屋敷にいたときのように、僕を下僕扱いするようになった。縦ロールでも変わらず義姉様は美しいが――なんというか、こう、心の奥がぎゅっとして泣きたくなるような笑顔をみせてくれることは一度もなかった。
その笑顔を忘れそうで、最近僕はイライラしている。また笑ってくれるんじゃないかと思って、義姉様の無茶振りに応えたりしているけれど、義姉様はあの笑顔では笑ってくれない。義姉様は相変わらず美しいけれど、ギラギラしていて、ちょっと――疲れる。
本当に、義姉様はあの義姉様なんだろうか。もしかして生き別れの双子がいたりして義姉様に成り代わっているんじゃないだろうか。
そんなありえないことも考える。義姉様が何を考えているのかわからない。
僕もさ、忙しいんだよ。学校の勉強だけじゃなくて、公爵家の跡取りとして、やるべきことはいっぱいあるんだよ。それなのに、義姉様は僕を急に呼び出して、どうでもいいことを命令したりする。僕はフットマンでも何でもない。命令に従う必要なんかない。
それでも――義姉様だから。
忘れてしまいそうな笑顔を求めて、僕は横暴な義姉様の言いなりになる。
義姉様は編入してきた聖女様に嫌がらせを始めた。なんでも婚約者である王子に色目を使っているからだという。色目を使っているかどうかは知らないが、王子が義姉様ではなく聖女様といることを選ぶのは仕方がないと思う。
「あなたは、あなたの思うように生きていいと思うわ」
バラ園のアーチ……じゃない。アリスが僕にそう言った。少し怒ったように続ける。
「あなたはリズ様のものじゃないもの。あなたはあなたのものよ」
棘を折ろうとしてちくりと指に刺さった。義姉様のために切っていたバラ。本当は勝手に学園のバラを切ってはいけない。でも、義姉様が今すぐ欲しいって言うから。
ミルキーローズ。義姉様との思い出のバラ。
「! ヨハン? どうしたの?」
うるさい。うるさいよ。ちょっと黙ってなよ。
「これ、使って」
アリスが僕にハンカチを握らせる。僕は持っていたバラごとアリスにハンカチを押し付ける。
「いらない」
どうして。どうして、その言葉を君が言うんだ。
――あなたは、あなたの思うように生きていいと思うわ。あなたはあなたのものよ。
記憶の中の義姉様はバラを抱いて笑っている。
ああでも、どんなふうに笑っていたっけ?
――ヨハン。あなたが何をしようとも、何を望もうとも、私はあなたの味方でいるわ。
嗚咽はとまらなかった。
義姉様。どうして僕は、あなたを信じられないんだろう。僕もあの時、あなたが何をしようとも、何を望もうとも、義姉様の味方でいるって誓ったのに。
どうしても僕は、僕の大好きな義姉様が、もうどこにもいないことを受け入れることができない。
義姉様の卒業式の日。
いつか義姉様が言ったように、式後のダンスパーティで王子が義姉様に婚約破棄を告げた。
「婚約破棄……ですって? そんなことできるはずがありませんわ」
義姉様の言うことはもっともだ。でも義姉様の嫌がらせはちょっと度が過ぎていて、王家の顔に泥を塗るようなことまでしてしまっていた。貴族が平民に多少の嫌がらせをすることは何の問題もなかっただろう。
しかし教会の後ろ盾を持つ『聖女』にした嫌がらせだとしたら、義姉様がした嫌がらせのいくつかは国民から非難されるようなものだった。王族というものはただ王族だからと威張っていられるものではないのだ。
アリスの肩を抱いて王子は更に言い募る。
「罪人の血を王家に入れるわけにはいかない」
こんな衆人環視の中で王子は当然のこと、義姉様もアリスもお互いを睨みながら胸を張っている。どちらも自分は間違っていないと思っているんだ。
――僕の義姉様ならきっと、狼狽えて下を向いてしまうだろうに。
突然、義姉様の瞳が揺れた。サファイヤのような瞳がゆらゆらと不安げな揺らめく。わななくように唇が震えた。
「もうお前の顔は見たくない」
王子の言葉が合図のように衛兵が義姉様を取り囲む。絶望した表情のまま、義姉様は助けを求めて視線をさまよわせる。視線の先の者はみな、目を伏せたり他所を向いたりして目を合わせない。
義姉様はそのまま俯いて引きずられていく。
僕とは、一度も目が合わなかった。
僕は別の扉からホールの外へ出て義姉様を探した。もう表情なんか見えないくらいに遠くに衛兵と真っ赤なドレスが見える。
「……義姉様!!」
本当に、本当に本当に本当に本当に頭が悪いな、義姉様は! こんな事になったらやるべきことはひとつだろ。僕を見てただ一言、ただ一言助けてって言うだけでいいんだよ!!
ここから先、何が起こるのか僕は義姉様から聞いて知っている。明日になったら仮牢から修道院へ送られるのだ。護衛していた騎士たちは、途中で山賊がよく出るという場所に馬車ごと義姉様を置き去りにする。その後のことは何も語られていないというが、か弱い公爵令嬢がそんな事になって生きているはずがない。
だから僕が助けないと義姉様は死んでしまう。
◇◇◇
ネットで流行りの異世界転生。それも悪役令嬢として生まれ変わったというのは百歩譲っていいとする。でも、それを思い出すのが断罪イベントとか、私そこまでされなくちゃいけないほど前世で悪いことしたとは思えないんですけど!?
私は前世でどこに出しても恥ずかしくないゲーオタだったので、スマホのもPCのもswi○chのも色々やりすぎていて、今いる世界がどういう世界なのかイマイチわかっていない。わかっていないままに修道女のような服を着せられて、地味な馬車に乗せられた。
道が凸凹すぎてお尻が痛い。クッションとか用意されてるわけないですよね。罪人だもんね。でも痛いもんは痛いの!
昨日のあれは卒業パーティーよね? 卒業パーティーで断罪とか珍しくないし、王子が金髪でヒロインがピンクの髪とかも珍しくない。制服見たならまだ思い出せたかも知れないけれど、ドレスコードばっちりの格好じゃヒントがなさすぎる。
ヒントは私の見た目と、あの時着てたドレス。――縦ロールと真紅のドレスとかもベタなのよ! 引っ立てられてから私のこと名前で呼んでくれる奴もいないし!
この後一体私どうなるの?
本当に修道院行くのかなぁ……。修道院送りエンドってそんなに多くないわよね?
がたん
急に馬車が止まった。小窓があるんだけどこの小窓は中側からは開かない。扉に耳をつけてその様子を伺うけれど、よくわからない。あ! いきなり剣で刺されて暗殺とかなかったっけ? 生きていては困るとかで実際は殺されちゃったりするの! ベタですね! あはははは……
ひっく
何の音だろうなぁと思ったら、自分が泣いてる音だった。
「……う……ひっく……ぐ……えう……」
何で私泣くの堪えてるんだろう。別に大声出してもいいじゃない。きっとここは魔獣なんかが出る荒野で、食べられて死ぬのよ。死んでほしいけど手は汚したくないとか、そういうことで馬車ごと置いておかれたのよ。
もうやだぁ。
さっさと死にたい。できれば痛くないのがいいけど、もうそんなのどうでもいい。早く、この世界からいなくなりたい。
だってひとりなんだもの。ひとりは寂しい。怖い。こわいよ……
――あれ? 呼びかけようとした相手は誰だろう? お母さん? どっちの? ん?
なんか急にわからなくなってきた。だって、私はひとりで。つい昨日、転生者だってわかったばっかりで。断罪される悪役令嬢には、誰も頼れるような相手なんかいなくて。
いきなり、寄りかかっていた方のドアが開いた。
「うわあぁっ!!」
「なんですかそれ。もうちょっと可愛い声出せないんですか?」
転がり落ちそうになっている私を受け止めているのは男の子だ。いや男の子というよりはちょっと大きくて、でもまだなんか幼い顔に大人びた表情が乗っている。
「あーあ、ぶっさいくな顔ですね。ぶさいくなりでも笑えばもう少しマシになりますよ」
私は、この子を知っている。
「ひどぉい……」
「事実ですから」
口ではひどいことを言いながら、ヨハンは優しく私を馬車から下ろした。それから無事を確認するように体のあちこちに触れた。
「怪我は?」
「ないわ」
「おでこ、ちょっと擦ってるじゃないですか。公爵令嬢なんだから顔は守ってください」
「……もう公爵令嬢じゃないわ」
きっと勘当されているわ。
「そうですね」
ヨハンは私の前髪を押さえたまま、額にちゅっとキスをした。
――え? 消毒、とかじゃないわよね?
「ヨハン……私、あなたに優しくしたかしら?」
ええと、このゲームは確か。
私の義弟は、何を言っているんだという顔で私を見下ろす。あれ? 違った?
「……しましたよ。ずっとずっと昔に」
「覚えてないわ」
ヨハンはにっこりと笑うと、顔を近づけてきた。さすが攻略対象者。顔がいい。
ちゅ
「!」
なんか、なんか、なんかキスされた!!!
「覚えてなくても、あなたは僕の義姉様ですよ」
スチルのような照れた笑い方じゃなくて、それはそれは嬉しそうに、でもちょっと泣きそうな顔で悪役令嬢の義弟は微笑んだのだった。
巻き戻り前のヨハンが好きになった悪役令嬢と、断罪イベント中に前世の記憶を取り戻した悪役令嬢の中身は同じ人です。
平行世界が絡まっているということで、ここはひとつ薄目で眺めてください。お願いします。