幕間
ソーナが断罪された後のお話。
私たちが娘の冤罪、そして断罪が行われ炎に焼かれ、その魂が純白の焔の鳥となって、様々な柵から解き放たれて自由となって旅立ったのを涙しながら見送った。
私たちの娘こそが聖女だった。
誰もが後悔し悲嘆にくれた。たが、全ては遅かった。
娘と懇意にしていたり、育て、ともに事業を成し遂げようとしていた商人、職人、新興貴族、学園に通っていた平民が皇都から姿を消した。彼らは皇族、貴族に、平民を見限ったのだ。彼らは恐らく自治国家となったトーヤに亡命したのだろう。
今の魔法貴族――旧貴族には皇家を皇国を支える力など無かった。国庫はフォーリアの打ち出した政策を鵜呑みにしたアルフォンス皇太子が使い込んでしまっていた。民たちの血税を、聖女とされたフォーリアの家族にも使われたからだ。
彼女を支持したアルフォンスも貴族も民も愚かな選択をした。税は上がり、食料危機に陥った。
最期の時まで娘は訴えていた。何故、公爵家の娘である自分と皇族が婚約を結ばなければならないのか、何故必要なのか、と。
そして、陛下や懐柔していた皇后アネモネ様、民にも向け、アルフォンス殿下が皇族であることの責務を放棄し自由恋愛を求めるのなら、フォーリアと結ばれたいと願うなら皇族であることを辞め、離籍して結ばれるべきだと。
それを拒否し続けて娘を蔑ろにし、婚約を破棄した結果が荒廃した皇都の現状だ。
治安悪化。目新しいもの、名物がない都に商人も冒険者も旅行者も訪れない。娘がいつかの日に言っていたゴーストタウンと化していた。
信用がない、国民に全世界に通用する常識がない国は孤立していく、と言っていた通りになった。
公爵家が商売など、と蔑んでいた者達が支援援助を求めてくる。
皇家は税金で成り立っている為に国として維持出来なくなってしまっている。滅亡は目の前に迫っている。
公爵家の維持、交際費は事業で、領地の運営は税金で。娘は皇室にも適用しようとしていた。皇太后、陛下、皇后までもが承認した。
それを許容出来なかったのが旧貴族派だった。面子、誇りに拘って、
だが、贅に縋り付くにはそれらもかなぐり捨てられるものらしい。
しかし、何故他国のたかが貴族にハーティリア公国の民が納めた税金で支援援助をしなければならない? 友好関係にもない使えない貴族に我がハーティリア家の資金で助けてやらなければならない?
「すまぬ……すまぬ……私が決断を下すのが遅かったのが全ての原因なのだ」
「あの娘の献身をこのような仇で返すことになってしまうなんて……」
陛下と皇后が本当に嘆き苦しんでいる。
――あのアネモネ様が……。
アルフォンスを早々に廃嫡しても裏技があったのだ。
ソーナを猶子に迎え、側妃に産ませた庶子を王配――国婿とする、という強引な手段があった。
そうすれば他国との繋がりも強くなったはずだ。少なくともアルフォンス殿下が他国の姫を迎えるよりは。
義父殿も有能な者を纏めて領地へと戻った。軍は烏合の集団にまで落ちぶれて戦力には、抑止力にもならない。
騎士団は一対一の対人や真正面から鉾を交える戦は得意ではあるが、ソーナが執る様な戦には最弱だった。
まして、騎士では最早意味がない。上空からの空襲爆撃。超長距離からの砲撃。
頭の痛い事に、ブラッドストーン侯爵領では戦姫やら勝利の女神なんて謳われている。
商業の女神、技工の女神、農業の女神、漁業海運の女神、旅の女神、安産の女神、他にもあるのだろう。
――一つに纏めて寺院を建立しなければならないか?
だが、恋愛だけは云われていない。それだけは我々親の落ち度だ。