魔改造と惨劇と予感
※グロい箇所があります。苦手な方は飛ばして下さい。
私が全てを注ぎこんで建造した鐡の超弩級戦艦。
決戦兵器の為にホテルと揶揄されているけれど、他国への牽制にはなっている。
しかし、しかしだ。今見上げれば何かが足りない。
「どうした? お嬢」
親方が声をかけてきた。
「ねぇ、親方。この戦艦。そろそろバージョンアップさせてみない?」
「は? はぁっ!? 何言ってんだお嬢!! コイツはあの頃の最高傑作じゃねぇか!! お嬢が人生賭けて大枚を叩いて造り上げた戦艦じゃねぇか!?」
「私は案を出しただけよ。造り出したのはアールヴとドワーフ、それにマーメイド族の皆よ」
ハラハラと携わった者たちが成り行きを見守っている。
「皆の腕もあの頃からブラッシュアップされているでしょう?」
「まぁ、そりゃあな……」
「それで姫さん、どう改造する気なんだ?」
「ソーナ様。確か、この超弩級戦艦は戦争のため、という他に海上の魔モノを屠る目的もお有りになられたはず」
あれからいくつもの戦艦を造ってきた親方たちが頷き、自負が見える。ラファーガの心はすでに改造された超弩級戦艦に思いを馳せていて、現実的な反応はアリシア。
「そうね。唯人でも小型、中型の深淵の魔モノを斃せるように、という目的もあるけれど、やはり、海を縄張りにしている深淵の大罪を相手に、とも思ったのよ」
そう考えた時に今のままでは火力不足。
「変形して電磁砲や荷電粒子砲とか、色々な砲撃が搭載されたらと思ったのよ」
変形して砲塔が顕になって星を砕く砲撃とかロマンじゃない?
「いや、お嬢……変形ってなぁ……」
「親方、兵器は人型や動物型に変形したり、それを模した兵器が兵器の行き着く先なのよ。魔法少女、聖女だって物理攻撃、インファイトが出来て当たり前。むしろそれが最強なのよ? 魔法を準備するより高速で接近して殴った方が早いもの」
こんな風にね、と私がシャドウボクシングをして見せる。
心が少年な青年は目を輝かせて親方たちに魔改造しようと熱く説得している。
アリシアが頭を抑えて呆れている。
私は完成予想イラストを描いて、ラファーガに渡して燃料を投下する。
「ソーナ様……街を灰燼と化す魔法や兵器だけでは飽き足りませんか?」
「そうなる前に降伏して欲しいものよね」
アリシアが言っているのは法都を壊滅させた事を言っているのだ。
「わざわざ初手から殲滅戦をするのではなく、宣戦布告に降伏勧告もして、投降した者は救って衣食住、仕事の補償をしたわよ? 降伏せず投降しないと決めた者の命まで責任持てないわよ。だってそれが貴族の冷酷さと言うものだもの」
支援をする者を潰し、補給物資を運ぶ隊を潰し、物が少なくなれば物価が高くなる。それは法都だけではなく取引先にも及ぶ。通常よりも高値で買い取りもした。
私がしたのは兵糧攻め。街に砲撃をして市民を教皇がおわす御座す法城へと追い込んだ。
贅を尽くす彼らは本性を隠さねばならず、市民に施しをしなければならない。それを後押ししたのが愚弟と皇子、聖女候補生フォーリアたちだ。
魔法士のお蔭で長期戦にはなったけれど逃げ込んだ総ての市民の食料を賄える程の魔力量を誇る魔法士は存在しない。そもそも種が無ければ作物は育たない。
種まで、雑草まで食わなければ最下級の人々は腹を満たすことが出来なかった。
再三再四降伏勧告及び投降を呼び掛けた。炊き出しもした。それでもプライドが、負けを認めなかった。だから一度目は平原で戦略魔法を見せた。
何人かは餓鬼の様に痩せ細った姿で助けを求めていた。救い出したけれど、それが惨劇の始まりだった。
裏切り者、売国奴、非国民、異端者。そう言って狩りが始まった。人が他人を襲い、殺して喰らい始めた。カニバリズムの始まりだった。
死んだ者より、鮮度があった方が美味しかったのだろう。
それを目の当たりにした兵士たちは必死に降伏と投降を呼び掛けた。炊き出しも続けた。
期限を区切ったのは私だ。期日までに返答はなかった。故に終わらせた。
教皇たちは灰燼と化した女神の都と人々を見て漸く降伏した。降伏宣言をさせて彼らを族滅させた。
支援した者、参戦した者を戦犯とした。
その中には廃嫡された愚弟や聖女候補生フォーリア、元婚約者もいた。彼らには役立って貰わなければならないために捕虜として扱った。
生かしてちゃんと婚約破棄してもらわなければならなかったから。それが冤罪なら、ハーティリアが有利にその後の話を持っていけるからだ。
多額の身代金と慰謝料などなどもあり、ローゼンクォーツ皇国は死に体だ。
「第2の法都にならなければ良いけど……」
「ソーナ様、死に体の国でも買い取る国があると?」
「在るわよ。海に呑まれ消えそうな島国が陸地を欲しているわ」
海だけでは暮らして行けない。水が肉が野菜が必要だ。大陸に国が在れば高額で補給しなくて済む。
港も在る皇都は海の民に丁度良い条件が揃った国なのだ。
「ソーナ様……」
アリシアが複雑な表情となる。
私が『殲滅姫』や『血塗れの公爵夫人』などと謂われているからだろう。
――血を好むから『灼炎の吸血姫』なんて言う二つ名もあるわね。
「そもそも殲滅なんて今更じゃない。奴隷商組合に裏社会の支配者とその住人も大掃除をしたわ」
綺麗事を言っている余裕などないのだから。