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006 否定

 大男の無表情な顔がこちらに向く。

 僕の目は自然と大男の目に向かい、改めて()()がカメラであることを再確認した。

 それを確認したからなのか、現実逃避の一環なのか、僕は脳裏に一つの疑問を描く。

 すると、僕の口は思考を待たず、それをそのまま言葉にした。

「お前、ロボなの?」

 直前まで、大男が僕のツッコミに対して、どんな反応をするかを恐れていたのに、口は思い付いたことをタイミングなど全く考えなく放つ。

 混乱のまっただ中とはいえ、あまりにもチグハグな僕の行動に、変な笑いが出そうになった。

 それは、僕の様子を見てた女の子も同じらしい。

「あはははは」

 軽やかな女の子の笑い声に、少し恥ずかしくなる僕の耳に、男の無機質な問いが届いた。

「ロボというのは、ロボットの略称と言うことでよろしいですか?」

「は?」

 思わず目が点になる。

 想定してなかった質問だけに、頭が真っ白になったけど、ともかく聞かれてる以上は答えなくてはいけないという思いが、僕に首を縦に振らせた。

 対して大男は「はい。私は試作五号機アダムです」と大きく頷いてみせる。

 そしてそのまま僕に視線を向けたまま、ピタリと動かなくなった。

 直後、僕の視界が明滅する。

 それが僕自身の瞬きだと気付くまでにしばらくの時間を要するくらい頭がフリーズしてしまっていた。


「え、マヂで?」

 確かに目がカメラだし、なんかスゴイ重そうだし、筋骨隆々で堅いかと思ったら肌は柔らかいし、あと、軽々僕を持ち上げたし、ロボだって方がいろいろ腑に落ちる。

 腑に落ちるけど、受け入れられるかどうかは別問題だ。

 正直、世の中にもロボットは少しずつ姿を現わし始めている。

 だけど、まだ一目で機械だと、ロボットだとわかるものであって、人間と見分けの付かないものなんて無かったはずだ。

 だから、最初にドッキリを疑ったし、今でも僕は受け入れられていない。

 けど、アダムから声が発せられるよりも先に、さっきまで笑っていた女の子から、僕の信じられないという思いのこもった言葉に対する言葉が放たれた。

「あら、疑うの、私の現時点の最高傑作といってもいい、このアダムを」

「へ?」

 いつの間にかアダムの横に立っていた女の子は無遠慮に、アダムの太い腕をバシバシと叩く。

 女の子と、その彼女の行動に不快を示すどころか、身じろぎ一つしないアダムの顔を、交互に幾度も見るが、直前の発言を直ぐには飲み込めなかった。

 それでも、時間が経過すれば、さすがに意味だけは理解出来る。

 半信半疑どころか、ほぼ疑いの気持ちで、僕は普通に女の子に尋ねていた。

「えっと、つまり、このアダムを、君が作った……の?」

「そういってるじゃない」

 自信満々の表情で断言して見せた女の子の言葉に疑う余地なんてないように思えて僕は受け入れるしかないことを悟る。

「そうなんだね」

 そんな僕の言葉に、女の子はどこか満足そうに頷いて、満面の笑みを浮かべた。

「信じて貰えて嬉しいわ」

 思わず見とれてしまうほどの、輝くほどに目映い笑みを浮かべた女の子は、僕が固まっている間に、またも顔をぐいっと近づけてくる。

 無防備なのか、僕なんか眼中にないのか知らないけど、男相手にあんまりすべきじゃ無いと思うよと、何故か言うことが出来なかったので、強く念じることにした。

 そんな僕に、笑顔を引っ込めた女の子は、顎を少し引いて上目遣いで声を掛けてくる。

「それで、ね、エル。私、あなたにお願いがあるんだけど……」

 近づいてくる女の子の顔に、心臓がバクバクと暴れ出す中、僕の中に残った冷静さが叫ぶように声を発させた。

「まって、人違いじゃないかな!? ぼ、僕、エルって人じゃないよ!」

修正報告

2021.05.18

前:自然と大男のの目に向かい

後:自然と大男の目に向かい


前:男の無機質な樋が届いた

後:男の無機質な問いが届いた

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