064 対話
最初に陽菜ちゃんに伝えることにしたのは、アダムについてだ。
アレがロボットだと言えば、インパクトもあって、会話の主導権を握れるだろう。
「まず、学校に来てたあの大男、アダムはロボットだ」
「そう」
淡泊な陽菜ちゃんの反応に、僕は早速目論見が外れていることを理解したが、まだ方向転換するタイミングではないと、話を続けることにした。
「そ、それとアレはヤヤが造ったんだ」
僕がヤヤの名前を出した直後、陽菜ちゃんが何故か怒りのオーラを纏う。
僕はそこに踏み込むのは危険と判断して、気付かないふりをしながら話を進めることにした。
「ど、どうも、この国の政府の人と繋がりがあるみたい……だね」
そこで一旦話に区切りを付けて、陽菜ちゃんの様子を覗う。
すると、陽菜ちゃんは視線を下げて、深く息を吐き出した。
僕の経験上、それは陽菜ちゃんが気持ちを仕切り直す時の癖の筈である。
なので、僕はただじっと、陽菜ちゃんが切り出すのを待った。
「あの後……」
陽菜ちゃんの言葉を待っていた僕だが、陽菜ちゃんの口にした『あの後』がいつのことか誤解するとややこしくなると判断して、敢えて彼女の言葉を遮るように問い掛ける。
「あの後って?」
僕の言葉で、口を少し開いた状態で一瞬固まった陽菜ちゃんは、キュッと口を結んだ。
それから、もう一度深く息を吐き出す。
「レンと、ロボと、彼女が、出て行った後ね」
何故か強調された『彼女』の響きに、それがヤヤをさしていて、陽菜ちゃんが苛立ちを覚えているのは感じ取れるのだけど、理由が思い当たらず、返事が「あ、うん」という少し間の抜けたものになってしまった。
陽菜ちゃんは僕を少しの間見た後で、目を閉じてから続きを話し出す。
「教室に政府関係者がやってきたのよ」
「政府関係者?」
「そのやってきた人が自称するところによると、内閣直下の組織らしいよ……まあ、本当かどうかはわからないけど、校長先生や教頭先生も立ち会いで来てたから、少なくとも冗談とかの類いじゃ無いと思う」
陽菜ちゃんは、話に細かく区切りを入れては、その度に内容を吟味するように頷いている。
真面目な性格の陽菜ちゃんが、自分自身でも話の内容に疑問を持っていたり、納得し切れていない時に見せる癖だ。
まあ、確かに僕も言葉だけでは、ヤヤ達の言っていることを受け入れられなかったから、わかる気がする。
なので、陽菜ちゃんが受け入れやすいように、僕が何よりも納得した事実を告げることにした。
「アダムは空を飛べるんだよ」
だが、援護射撃の筈だった言葉に、またも陽菜ちゃんの怒りのオーラが膨れ上がる。
「……知ってる、見たからね」
普段の穏やかな口調とは大違いのとても冷たい響きがする返しを、陽菜ちゃんは口にした。




