023 疑問
若干の時間を挟んでどうにか全身の熱が少し引いてきたのを感じた僕は、エルに視線を向けながらヤヤに問い掛けた。
「それじゃあ、ヤヤは作り上げたんだね?」
ここにエルがいることが、何よりヤヤの目標達成を物語っているのだと確信してそう問い掛ける。
だが、ヤヤは僕の言葉に表情を曇らせた。
「あれ?」
思わず疑問が声に変わると、ヤヤは渋い表情のままで首を振ってみせる。
「まだ完成には至ってない」
「……そっか」
他に思い付く言葉もなく、慰めにもならない言葉を返した僕に、ヤヤは「だから」といって詰め寄ってきた。
「だ、だから?」
上擦る声でどうにか聞き返した僕に、ヤヤは一度目を閉じて何かの覚悟を決めるような態度を見せてから改めて続きを口にする。
「だから、レンタに力を貸して欲しい」
真剣な目を向けてきたのはヤヤだけではなかった。
エルもまた僕を真剣な眼差しで見ている。
僕に求められている役割を理解し、二人の真剣な様子を目の当たりにしたことで、僕の考えはあっさりと一つにまとまった。
だから、確認の意味も込めて、僕は二人に問う。
「力を貸すのはかまわない……というか協力するつもりだけど、僕は何をすれば良いの?」
僕の言葉に、ヤヤとエルが同時に表情を明るくした。
その表情の変わり方が余りにうり二つなので、そういえばヤヤが自分のデータも使っていると言っていたのを思い出す。
すると、コテリと小首を傾げてエルが質問をしてきた。
「レンタさん、どうされましたか?」
質問の答えを待っていたところに、思いがけず質問が来たことで僕は「え?」としか返せない。
そんな僕にエルは言葉が足りなかったと思ったのか、説明を加えてくれた。
「あ、いえ、質問された後に、笑みが柔らかくなったように感じましたので……」
丁寧なエルの言葉を聞きながら、本当に普通の女の子みたいだと、その言動に感心してしまう。
そんな余計なことを考えてしまったせいで、エルに上目遣いで困り顔をさせてしまうことになった。
申し訳なさでいっぱいになった僕は、慌てて声を発する。
「あ、た、大したことじゃないよ。ヤヤとエルがまるで姉妹みたいにそっくりだなって思っただけで」
気にしないで欲しいという思いも込めて言った言葉だったけど、予想外の反応をヤヤが返してきた。
「それは、何が?」
「え!?」
「何がそっくりだったのか、詳しく!」
ヤヤがぐいっと顔を近づけてそう尋ねてくる。
話すまでは離れないと言わんばかりの真剣な態度に、ヤヤの興味、それもどこか狂気じみた興味を引いた締まったことを悟り、大人しく思ったままを答えることにした。
「ひょ、表情の変わるタイミングとか、その浮かべた笑顔の雰囲気とか、ば、漠然と似てるなって感じたんだよ!」
妙に恥ずかしさを感じつつ、どうにか絞り出したというのに、ヤヤは顎に手を当てて「なるほど」と頷いて思考を始めてしまう。
揶揄われたいわけじゃないけれど、触れられないのはそれはそれで肩透かしを食らった気分になって、抱いてしまった羞恥心がむなしく感じられた。
「レンタさん、マスターは興味が向いてしまうと、直ぐに意識を集中してしまうので……」
申し訳なさそうにフォローしてくれるエルだが、その優しさが妙に痛い。
それでも気持ちが嬉しくて、エルに感謝の言葉を伝えることにした。
「ありがとう、エル」
「え、あ、はい」
僕の言葉に、目を瞬かせて、体をくねらせるエルは照れているようにみえる。
相変わらずスゴイ技術だと思ったところで……いや、待てよと、僕の思考の一部が待ったをかけた。
表情を始めとした言動や、感情を有してるように見える態度からして本当にロボットなのかという思いが思考を巡らすほどに強くなってくる。
大男のアダムは重量やら飛行能力やら、ロボじゃないと否定する方が難しいとんでも存在だったが、目の前のエルの人間離れした部分は、一切見てはいなかったはずだ。
そう思考が進めば、目の前のエルをロボと考える方が難しく、むしろ、ヤヤの妹とかの方がまだ頷ける。
僕はエルに向き直ると、浮かんだ思考に背中を押されて、ドキドキと鼓動を早くし始めた心臓の主張を強く感じながら、乾き始めた喉を無理に使って質問を投げ掛けた。
「エルはヤヤに造られた……ロボ……なのか?」
修正報告
2021.05.18
前:思いも込めて行った言葉だった
後:思いも込めて言った言葉だった
前:ヤヤの妹とかの法が
後:ヤヤの妹とかの方が




