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修羅場・胸糞・人生シリーズ

名もないサラリーマンからの遺言

作者: 家紋 武範

キミたちに分け与えて送るものなどないから、言葉だけでも送りたいと思い筆をとった。


人間は誰も一人だ。自分でやらなくてはいけない。

甘えて誰かがやってくれなんて思わないでくれ。


友だちとケンカもするし、相手から嫌われるかも知れない。

だけど、キミの持っているゲーム機と一緒だ。少しばかり傷がついたからとそれを捨てようとはしないだろ?

少し嫌なところがあったとしても全部を嫌いにならないで欲しい。


キミが大きくつまづいたときにそばにいてくれる人を決して忘れてはいけないよ。

慰めてくれる人。叱ってくれる人。

それを大切にして欲しいんだ。

黙って去って行く人は、無理して追いかけずに忘れてやって欲しい。

そこがキミとの縁なのだから。


成功して喜んでいるときも、周りへ感謝をして欲しい。たった一人の無人島じゃないんだ。

与えられた電気も、いつも通っているあの道も、心が和む緑だって誰かのおかげなんだよ。


お金は大事だけど、それと幸せは直結しない。

幸せは普通の日常にあるんだ。

働いて休む。それだけのことが幸せなんだよ。

ヒマだろうとなんだろうと、ベッドの上でスマホをいじくれるなんて、なんて幸せなことだろう。

次の日に、家族揃って出会えるってのは幸せなことなんだ。


それからな、母さんがもし再婚したいっていったらさせてやって欲しいんだ。

キミたちにも幸せがあるように、母さんにも幸せが必要なんだ。父さんはそれを実現できなかった。快く許してやって欲しい。

もしも天国に母さんと新しい旦那が手を繋いでやって来たとしても、「やぁ久しぶり。幸せそうだな」って言えるよ。心では泣いてるかも知れないけどな。……ウソだよ。言える。きっと言うよ。だから安心させてやってくれ。


父さんからキミたちに遺せるものなど何もないけど、遺るものがある。

それは父さんにとってキミたちだ。

未来への種。将来美しく花を咲かせて欲しい。


キミたちも一生に一度くらい、海外旅行にいけるかもしれない。今の時代だからたくさんいけるかもな。是非とも愛する人と行って欲しい。

そこで大きな太陽が海の彼方に沈むのを見て感動するだろう。

だけどな、この国の夕焼けも美しいんだぞ?

スマホから顔を上げて見てみてくれよ。きっと誇りに思うよ。その時、父さんは一緒にキミの横に立っているかも知れない。


魂があるのなら。いつもキミのそばに──。


ただ、恋人とイチャついてるときは黙って部屋から出ていくから安心してくれよな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 温かいおとうさん。 ほっこりしました。 最後、ちょっと笑えたのが、よかったです(^^)
[良い点] 等身大のお父さんの言葉が、胸に沁みました。 [一言] 最後に男同士の約束のような事を言いつつも、「魂があるのなら」と仮定している所がどこか切なくて、もっと「普通の日常」を送っていたかったん…
[一言] 父を亡くしてから、本当にもう、こういったお話に弱くて・・ 優しく包み込んでくれるような温かい言葉にうるうるしました。 素敵なメッセージが散りばめられた作品、ありがとうございます。
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