98.飛行具開発(2)
取り敢えず、あの飛行船を浮かすのに反重力の魔法陣は1メートル四方ぐらいに収まっていたのだ。
自分一人プラスちょっとした荷物を浮かす程度だったらその半分もあれば十分だろう。
推進機能については・・・もしも足りなかったら後から付け足せばいいという事で、隆一は取り敢えず縦1メートル横50センチのジュラルミン合金の薄い板を錬金し始めた。
ちゃんとこの日の為にアルミを多く含む鉱石は先日錬金術ギルドに行った際にゲットしてある。
「あ。
ザファード、そう言えば重量軽減魔道具付きのバックパックの特許登録は問題なかった?」
先日バックパックの改善を諦めて長さを縮めることにした段階で、隆一はザファードに重量軽減魔道具として特許登録を頼んだのだが、その後のことについては特に気にしていなかった。
「まだ最終的な承認証は来ていませんが、質問も無いようですし大丈夫なのでは?
登録が完了したら探索者ギルドの方に知らせておけばいいんですよね?
スフィーナ女史がかなり興味を持っていて協力していたようでしたから」
ザファードが書類から目も上げずに答えた。
「おう。
背負える量なんて大したこっちゃないから魔道具として作る価値があるのか微妙な気もしないでもないが・・・まあ、下層の方に行くんだったら魔物からゲットする部位の価値が高くなるから、鞄が高くてもペイするんかもな」
スフィーナとしては次は個人のお遊び用の飛行具よりも、猫車やリヤカーを魔道具化して改善して欲しいところだろうが、異世界にまで来て周りの欲求に忖度する気はない。
既に隆一と煌姫はこの世界に召喚された事で、神に必要とされた役割は果たし終えているのだ。
まずは自分が遊びたい道具を作って、特にやりたい事がない場合には周りの利便性向上の為の魔道具を作ればいいだろう。
「そう言えば、神殿長が今回の簡易鑑定による感染症検査方法の発見に関してリュウイチ殿に報酬を払うと言っていましたよ。
幾らになるかは国とも相談するのでまだ金額は確定していませんが」
再びジュラルミン合金板作りに戻っていた隆一に、暫くしてふと書類から顔をあげたザファードが伝えた。
「あん?
別に国や神殿の為に鍛錬した訳でもリサーチした訳でもないから、金は要らんが・・・。
まあ、新しい発見に対して報酬を払わない前例を作るのが不味いというのなら、取り敢えず受け取るがその後にスラムでの炊き出しなり感染症探知網の予算なりに寄付しておいてくれ」
既に薬や足止め用魔道具、回復師のバイトで十分生活費は稼げているのだ。
下手に金を貰ってため込んでも経済の為にならないだろう。
一つの経済圏の中で流通する資金がどこかに吸い上げられたまま出てこないと、他に回る資金が足りなくなって景気が停滞しかねない。
ご褒美としての金一封を貰う程度だったらどこかで美味しい夕食でも食べるのに使い切ればいいが、下手に『画期的な発見だから!』などと頑張って大金を払われたりしたら、回り回って神殿や国の予算が足りなくなる。
神殿にしても国にしても、隆一の発見が次に伝染病が流行った時の損害を軽減するのに貢献したから払うというつもりなのだろうが・・・近代経済学も大学の一般教養で学んできた隆一としては、下手に金を貰いすぎるとそれをちゃんと使って経済に戻す労力の方が時間の無駄で面倒だ。
自分一人で、誰一人頼れる人間がいないような状況だったら『これで大抵の問題なら金で解決出来る』と安心できるまでひたすら金をため込んだだろうが、現実としてはどうせいざという時には異世界人基金があるのだ。
だったら既に自分の生活費はちゃんと回っているのだから余分に渡される金はさっさと寄付してしまう方が変に悩まなくて済む。
「良いんですか?
家を買うのに資金があっても無駄にはなりませんが」
ザファードが疑わし気に聞き直した。
「あ~。
それもあったな。
でもまあ、いつになるか分からないし幾らになるかも分からない家の購入費用は貯めておくよりもその時に異世界人基金から借りて後から返す方が面倒がないだろ。
どうせ飛行具の開発が終わったら探索者ギルドが欲しがっている運搬具の魔道具化に取り掛かるから、それで金は稼げるだろうし」
飛行具だって多分それなりに売れると隆一は見ている。
空を飛びたがる趣味人は異世界にだって多いだろう。
まあ、こちらに関してはどのくらい魔石喰らいになるかによって需要は変わりそうだが。
うむ。
ここは思いっきり拘って使い勝手の良いオモチャにしなければ。
経済の循環の為にはお金を溜め込まずに使った方が良いとは言っても、将来に不安があると貯金に走っちゃいますよねぇ・・・。




