798.素晴らしいけど頭も痛い:スフィーナ
「まあ、ヴァサール王国内は俺が飛行具でマッピングを兼ねて飛び回って、未発見な迷宮があったとしても小型か中型だったら攻略に参加させてもらおうと思っているから、追加で複数見つからない限り新しい迷宮は見つからないと思うが」
迷宮を発見出来る魔道具の発明と聞いて思わず聞き返してしまったが、リュウイチ殿は失礼だと怒るどころか多少申し訳なさげに肩を竦めながら応じた。
そう言えば。
デヴリンとダルディールの仲間だったアザィールが久しぶりにヴァサール王国に戻ってきたという話を暫く前に聞いた。
しかも、デヴリンの妹の容体が良くなったという話もダルディールがちらっと口にしている。
・・・小型か中型の迷宮を既にこの新しい魔道具で見つけて、攻略報酬に弛緩病の治療薬を入手したのか。
迷宮攻略の情報は探索者ギルドに伝えなければならない義務ではない。
リュウイチ殿の飛行具を利用して見つけた迷宮だとしたら国もある程度は知っているのだろうから、そのうち探索者ギルドの方にもある程度の情報は流れてくるだろうが・・・どうやら未発見の迷宮は先に攻略してから情報を流すつもりのようだ。
とは言え。
小型や中型迷宮を攻略することで難病の治療薬が得られるのだったら、王都迷宮やペルワッツのような大型迷宮を攻略してエリクサーを得ようとするより現実的かつ手早く治療できる。
そう考えると未発見な迷宮が原因な大繁殖の防止という意味だけでなく、デヴリンの様な家族の不治の病に対する治療薬を求める人間にとっても魂を売る・・・とまで言わなくてもその次位に欲しがる魔道具となり得る。
が。
大繁殖対策ではなく、エリクサーに代わる『特定の難病に対する治療薬の入手』という手段は最初の攻略者にしか使えない。
リュウイチ殿の飛行具はまだ暫く出回らないだろうが、飛竜乗りを雇う程度だったら多少の時間と金があれば難しくないのだ。
最初にこの魔道具を入手して、飛竜乗りを確保できた人間の一人勝ちとなる。
となると、誰にこの魔道具の情報を与えるかがとてつもなく重要になりかねない。
国の方が先に手を打つ可能性もあるが、ヴァサール王国外へのリュウイチ殿の情報の流出はまだかなり限られている。
そうなると他国へのこの魔道具の提供元が探索者ギルドになる可能性もあり・・・その情報を誰に渡すかに関して、熾烈な戦いがおきるのが簡単に予見できる。
頭が痛い。
デヴリンと言う身近な例があり、既に手を貸したとみられるリュウイチ殿が大繁殖対策しか考えていないのは不思議だが。
本人が医療特化の錬金術師との話だから、必要になれば薬を創れるという無意識な思いからあまり治療薬への思い入れが無いのだろうか?
「デヴリンだけでなく、家族の疾患に対する治療薬を探している探索者も、有力者もそれなりにいますから・・・その魔道具の最初の使用者になりたがる人間は多いでしょうね」
これが国に強固に護衛された招かれ人であるリュウイチ殿でなければ、あっという間に家に押し入り強盗が入って魔道具ごと本人まで消えていても可笑しくない案件だ。
国がもっと強硬にその魔道具の使用権を要請していないことも驚きだ。
「・・・そうか、エリクサーじゃなくても特定の病気の治療薬だったら入手できるのは重要だな。
ちなみに、迷宮の攻略報酬っていうのはやはり攻略者が切望する物が出てくるようだが、サイズの限界があるのか小型迷宮では切望してもエリクサーは出てこなかったらしい」
微妙に眉を顰めながらリュウイチ殿がため息を溢しつつ教えてくれた。
「ちなみに場所はどちら辺か、聞いても?」
「詳しくは聞いていないが比較的王都の近くだったらしい。見てないから多分西側かな?
ただ、攻略報酬を取り出したせいかもう消えかかっているとの話だ。
詳しい場所に関してはこっそり・・・デヴリンに聞いてくれ」
ダルディールもほぼ間違いなく知っているのだろうが、探索者ギルドの職員として情報の共有をしなかったことが問題になるかもと思ったのか、デヴリンの名前を言ってきた。
まあ、リュウイチ殿関連だったらそちらの機密保護契約もあるのでダルディールを責めてもそれを盾にされるだろうが、騎士団に所属しているデヴリンから話を聞く方が色々と問題はないだろう。
「そうですね・・・。
いつぐらいに売り出される予定ですか?」
「ちょっとヴァサール王国のマッピングを終わらせたいんでな。
来月辺りになると思う。
中型迷宮が見つかったら、ダンジョンマスターに会えることを期待して攻略に参加したいんだ。
仮に小型迷宮が見つかった場合は・・・利権交渉をどうするのが一番無難だと思う?」
そんな頭の痛くなる問題、此方に聞かないで欲しい!
利便性が高い上に最初のお一人様限定となると、頭が痛い調整となりますねw




