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実は召喚したくなかったって言われても困る  作者: 極楽とんぼ


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70.迷宮6階(2)

「このトレントはどうやって倒すんだ?」


尋ねた隆一に、デヴリンは肩をすくめて見せた。

「基本的に、トレント系は斧を持ってくるのが一般的だな。

伐採用の魔道具もあるが。

俺みたいに剣を使う場合は良い剣にしっかり魔力を通さないと折れるから気をつけるんだな」


そう言ってしなってきた蔓を足も止めずに切り捨て、トレントの幹にたどり着いたデヴリンがシュンッと剣を振るった。


「うん?」

何も起きたように見えない事に隆一が首を傾げていたら、デヴリンが再度剣を振るい・・トレントがゆっくりと傾き倒れた。


隆一が確認しようと倒れたトレントに近寄ったところ、40センチほどある幹に綺麗に切れ跡が2つついていた。

「木って剣でさっくり切り倒せるんだ・・・」


「デヴリンと6階のトレントの様に実力差が極端に大きい場合は剣でも切れるが、この界隈が適正レベルな探索者の場合だったら普通の木を伐採するのと同じように誰かが斧で幹に切り込みを入れていき、その間に襲ってくる蔓や他の魔物を仲間が倒していくのが通常の流れだ。

王都迷宮の場合だとトレントは階段の傍で倒して5階の転移門で持って帰る事が多いが、持ち帰るのに不便な場所で倒した場合は木の実とこの蔓、後は顔の傍の枝が高く売れるな」

ダルディールが幹を動かしてトレントの顔(とその傍の枝)を示しながら隆一に解説した。


レッサ―トレントと違い、6階のトレントにはしっかりと『顔』と認識できる部位があった。

もっとも『言われたら顔だね』という程度で、隆一には言われなければ単なる傷に見えたが。

「トレントってこの顔で何かするのか?

物を見るとか、口を利くとか、呪文を唱えるとか?」


木の形をした魔物の場合、どこかに頭脳があるのだろうか?

脳のある動物や昆虫からの進化系ではない魔物でも、ゴーレムやスライムのような核を潰せば倒せる魔物は核が頭脳っぽい役割を果たしているのだろうと想定できるが、木から魔物化したトレント系の場合、核が無いのでイマイチ考える能力があるのかと疑問に感じてしまう。


単に襲ってくるだけというのだったら食虫植物の進化系と考えればいいのだが、なまじ顔があると『考える能力があるのか?』『喋るのか?』『だとしたらその能力はどこから来るのか?』といった疑問がわき出てくる。


「エルダートレントの古いのだと話す個体もいるし、呪文の役割を果たしていると思われる音を立てることもあるが、トレントは基本的に何も言わないな。

この目みたいに見える窪みは潰したところで特に変化は無いから目を使った視覚は無いと考えられている。

ただし、剣をつきたてた際に他の部分よりもこの目のような窪みの方が深くまで突き刺しやすいから弱点としては機能するな」


ダルディールの答えに隆一は少し首を傾げた。

「そういう古いエルダートレントには脳や核のような、考える機能を果たしそうな部位はあるのか?」


「古いエルダートレントには魔力の凝った瘤があるからそれが核のような役割を果たしているのかも知れないな。

ただし、瘤を潰すと攻撃力は下がるが死にはしないから要注意だが」

デヴリンが教えてくれた。


いつか、古いエルダートレントの瘤とやらを解剖してみると面白いかも知れない。

そんなことを考えた隆一だが、取り敢えずは手元にあるトレントに注意を向けた。


買取価格が高いという部位を切り取って鑑定してみたところ、

『トレントの実:樹木タイプ魔物の実。錬金の触媒として硬化及び魔力を通しやすくする効果があり』

『トレントの蔓:樹木タイプ魔物の可動蔓。魔力によって柔軟性の可変性あり』

『トレントの肢枝:樹木タイプ魔物の主要枝。魔力の流れの調整機能あり』

とでた。


更に成分の事に集中しながらトレントの実をもう一度鑑定してみたら、

『BQA106(通称:トレント)#F3:蜘蛛系魔物AREP168~246の糸袋内液体、蛇系魔物RZQ143~356の毒液、ゴーレム系魔物GDV105~198の躯体粉末に対する触媒効果が高い』とでた。


どうやら成分鑑定をすると触媒効果が高い組み合わせも分かるらしい。

とは言え、役に立つ魔物タイプの範囲がありすぎて通称をつけてくれないので探すのに苦労するかもしれないが。


どのような触媒効果があるのかも、どの程度の量を合わせるべきなのかも不明だが、試行錯誤で試していくにしても中々楽しそうだ。


運搬用魔道具を造り終わったらちょっと魔物の素材の基礎研究をやっても良いかも知れない。


取り敢えず、売るつもりはないものの買取価格が高い(つまり使い道がある)部分をバックパックの中のゴーレムと入れ替えて隆一たちはまた歩き出した。


暫く歩いたところで中級薬草が生えていた。

1階の薬草はちょっと奥まった人通りのない場所にまとまって生えている様子だったが、6階の中級薬草はあちらこちらに雑草のごとく生えているようだ。


一本抜いて手に取り、鑑定してみた隆一は思わず莫大な量の情報に頭を押さえる羽目になった。

『BMS258(通称:中級薬草)E21:魔力を使った細胞の再生機能あり。

BMC135~146、BMF264~280、BMR450~453と合わせるとアルーン病に治療効果あり。

BMD168~172、BMG204~215、BML672~678、BMS575~580と合わせるとジャブロン病に治療効果あり。

BMF48~53、BMP487~492と合わせるとピタニース病に治療効果あり。

BMI98~105、BMF487~496、BMQ157~168と合わせるとデッサウ病に治療効果あり。

・・・』

延々と治療薬の組み合わせっぽい詳細が並び、更にその下には

『イリューヒン病の治療薬の素材の一つ。

ロイテール病の治療薬の素材の一つ。

ハーネル病の治療薬の素材の一つ。

ラスヴィタ病の治療薬の素材の一つ。

・・・』

治療薬の素材の一つという長いリストが出てくる。


医療特化の錬金術師は鑑定のスキルを上げると皆このように詳細が分かるのか、それともこれも神のお節介の一つなのか。

反重力という心が躍るような術式を使った魔道具に熱中しつつある状況なのに、治療薬の手引書のような物を見せられて、『この世界の人を癒すために身を粉にして働けと言うのか』と思わずむっとした隆一だった。


「どうした?」

ふらついた隆一の体を押さえながらデヴリンが尋ねる。


「あ~。

自分が医療特化の錬金術師だという事を初めて実感したよ」

薬草に対して鑑定から得られた医療関係の情報量が、他の魔物の鑑定結果と比べ物にならないほど多い。


1階で薬草を鑑定した時は単に回復役ヒーリングポーションの材料になるとしか出てこなかったことを考えると、どうやら色々鑑定や魔力を使うことに慣れてきたことでスキルから得られる情報が深化したらしい。


勝手に人を連れてきた神の思惑通りに働くつもりはないが、一応他の医療特化の錬金術師でも同じような情報が鑑定で出てくるのか、確認した方がいいかも知れない。



人を助ける能力って使わないと良心の咎めを感じることがありますよね~。

とは言え、それに束縛されすぎるのはどうかと思いますが。

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