60.リサーチしましょう(5)
色々と合金に関するコメントをありがとうございました。
今後使ってみたいアイディアをいただき助かりました。
魔道具の作成は基本的に錬金術ギルドでやってきたのだが、取り敢えず今日の作業はジュラルミン合金に反重力の術式を刻んだらどうなるかをテストするだけなので、態々ギルドまで戻らずに神殿の自室でやることにした。
ミスリル板を使う場合などは内包される魔力がそこそこあるので、危険(もしくは未知)な術式を私室で試したりしたらあちこちからお叱りを受けてしまうが、なんと言っても魔力を全く保持できないことがギルドでも屈指の錬金術師に証明されたジュラルミン合金である。
取り敢えず動力源として屑魔石を使う分には大丈夫だろう。
ということで隆一は素材の抽出の仕方をヴァダスに見せた時に作ったジュラルミン合金の残りを板に加工し、反重力の術式を書き込み始めた。
魔道具の術式は基本的に魔法陣の形を使う。
円の外周に条件付けのパラメーターを列記し、円の中を適当に分けて魔道具にやらせたい作業に分けた術式を書き込んでいく。
術式が長くなる場合はこの魔法陣を立体化して書き込める範囲を広げたり、別の魔法陣と繋ぐ形に分けることも可能だ。
立体化した魔法陣に書き込むのはかなり難しく、以前ヴァダスに教わったもののまだ隆一は上手く成功出来ていない。
こちらの世界の術式は妙に非効率的なのが多い。
お陰でそういった術式の不要な部分を削って繋げばそれなりに平面の魔法陣でもなんとかなるので、『時間を見つけて立体式魔法陣の練習をしよう』と思いつつも先延ばしになっているのも未だに成功していない要因の一つだ。
今回の試作品は、合金の板の端に作った窪みに落とした屑魔石から魔力を引き出して板の反対側の角に反重力の力をかけるという術式・・・を隆一としては造ったつもりだ。
力がかかりすぎて板が飛び上がれば魔石が穴から零れるので、その時点で動力が切れるから危険はないはず。
多分。
錬金筆でちゃちゃっと術式を描き込み(錬金術のギフトの効果なのか、召喚後はコンパスや定規なしでも真円や直線が正確にフリーハンドで描けるようになっていた)、合金板に魔石を入れる窪みをつけ、机の上を整理して試作用の板と屑魔石を準備してザファードが座る角の防御結界の後ろへ移動する。
「・・・なんでこっちに来ているんです?
危険ならちゃんと錬金術ギルドの実験室でやって下さいよ」
ザファードが嫌そうに隆一を見上げた。
「いや、多分大丈夫だから。
だけど、もしもの事があっても部屋の備品が壊れる程度だったらこっそり買い替えておけば良いだけだけど、俺が怪我を負ったら青痣程度でも大騒ぎになりかねないだろ?」
「だから安全なギルドの実験室を使ってほしいんですが」
ザファードのジト目が隆一の背中に突き刺さる。
「今日は基本的な実験だけのつもりだから、態々またギルドに戻るのは面倒なんだよ。
まあ、反応が思っていたよりも大きかったら諦めるからさ」
ザファードをなだめながら隆一はそっと風を起こして屑魔石を試作品の窪みに落とし込んだ。
かたん!
一瞬、板の端が持ち上がり、また元に戻った。
「「・・・。」」
「な?全然危険はないだろ??」
ザファードに声をかけながら隆一は試作品の所に戻った。
一応突然反応があったら避けられるように用心はしていたものの、試作品の屑魔石は空になっていたのでこれ以上の反応はなさそうだ。
「う~ん。
屑魔石とは言え、一瞬で使い切るかぁ。
まあ、動いただけでも御の字なのか?」
試作品を取り上げて見回してみたところ、特に術式が侵食している様子はない。
「・・・こないだのレッサートレントの板でやったらどうなるか、試してみるか」
先日そこそこ大量にゲットしたレッサートレントの素材は板に加工されて既に戻ってきている。
あれだったら多少は魔力が籠っている上に魔道具の素材としても定番な物なので、この世界の素材を反重力の術式に使ったらどうなるか確認するのにも良いだろう。
今度は素材に魔力があるので、屑魔石が入ることで魔法陣が完成する形にして再度ザファードの傍へ。
「大丈夫なんでしょうねぇ・・・」
再び一応の為の避難に寄ってきた隆一をザファードが睨む。
「多分?
元々反重力の術式って素材を壊すだけじゃなくって魔力もバカ食いするらしいから、暴発したってレッサートレントの板20センチ平方程度だったら板が天井まで飛ぶ程度・・・なはずだと思う」
肩を竦めながら隆一はまた屑魔石を試作品の窪みへ落とし込んだ。
バン!
ガン!
ゴス!
板が机から飛び上がり、天井にぶつかり、落ちてきて机に再度ぶつかった。
「・・・まあ、天井も机も破損していないみたいだし、問題なしってとこだな」
実験と言えば爆発ですよねw
隆一も錬金術ギルドの実験室では色々と爆発させています。
隆一がこれから魔道具の開発を増やして色々と実験をするなら、ちゃんとした実験室のある家か錬金術ギルドのそばの家に引越すべきかもですね〜。




