58.リサーチしましょう(3)
「なあザファード、異世界人基金って現物とかも寄贈されてたりはしていないのか?」
錬金術ギルドで反重力の術式をこの世界にもたらした招かれ人レティアーナ女史の資料に目を通した隆一だが・・・。
どうやら反重力というのはレティアーナ女史の祖国での魔術を無理やりこちらの世界に適用させた物らしく、世界の『理』への負荷が大きいのか術式を特殊な媒体に刻むか、それこそ飛行船のような直径15メートルぐらいあるような巨大サイズに拡大・分散して刻まないと24時間程度使っただけで術式が魔道具を侵食しつくして消えてしまうと研究資料に書いてあった。
で、その特殊な媒体と言うのがオリハルコン。
これまた不思議素材である。
この世界には地球では想像上のファンタジー物質だったミスリルやオリハルコン、アダマンタイトやヒヒイロカネと言った金属が存在する。
前の世界にも魔法文明世界からの転移者や何らかの形での知識の共有化があって情報が流れていたのか、それとも単に異世界言語理解が勝手に『特別に不思議な物質』に地球上での想像物質の名称を当てはめているのか、微妙に分からない。
どちらにせよ。
錬金術ギルドの購買部で軽く聞いてみたところ、ミスリルはともかくオリハルコンは天文学的な値段がすることが判明。
とてもではないが隆一が自腹で買えるレベルではない。
異世界人基金を使ってなら買えるはずだが流石に『ちょっと探索して基礎能力アップ』程度の活動用の運搬具に城(しかもお洒落な屋敷に毛が生えたようなのではなく、がっつり要塞にもなるような昔の王宮クラスの城)が建つぐらいの金をかけるのは気が引ける。
だが、もしも過去の招かれ人がオリハルコンを入手していてそれを基金に寄贈してくれていたら、それを一時的に借りられないかと思って聞いてみたのだが・・・。
「現物は窃盗被害にあいやすいですし、リュウイチ殿が今回提案したように借りて使おうという権力者の欲を刺激するせいでどこに保管するかに関して軋轢を生むので、全ての物品は寄贈されたらすぐにオークションにかけられて現金化しているという話ですよ」
残念ながら、現物は無いらしい。
まあ、基金から金を出してオリハルコンを買い、探索をやめた時点でオリハルコンを売却して基金に戻せば差額は大した金額にならない可能性は高いが・・・。
やはりちょっと気が引ける。
「何か欲しいのでしたら異世界人基金からお金を出すよう申請を出しますよ?
異世界に疲れた招かれ人が酒に溺れる為に使ったって構わないお金なのですから、たとえとんでもなく贅沢な使い方になるとしたって迷宮を探索する為の魔道具を作る費用だったら十分堅実な使い道だと思いますし」
小さくため息をついた隆一にザファードが付け加えた。
「酒に溺れた招かれ人もいたんだ?」
「残念ながら、ええ。
いくら元の世界を捨てたいと召喚時に思っていたとしても、全くなじみのない異文化というのは疲れますからね。
しかも神に守られているからこそ、利用価値があると寄ってくる有象無象もいますし」
住めば都という諺にもあるように、人間なんて暫くすればなんにでも慣れる存在だと隆一としては思っていたのだが、どうやら慣れなかった人もいたらしい。
まあ、ある意味異世界基金があって日々の生活の糧を稼ぐために必死になって働かなくて良い状況にいたからこそ、失ったモノに関して鬱々と考える暇が出来てしまったのかも知れないが。
利用価値があるせいで寄ってくる人間が信頼できない可能性が高いというのも精神的には負荷になるだろう。
「慣れない世界に連れてこられた代償として、思う存分やりたいこと出来るギフトを貰ったというのにもったいないことだな。
まあ、それは良いとして。
オリハルコンはやはり俺程度の戦闘能力で持ち歩くには高価すぎるだろう。
他の人間でも買える程度の値段に魔道具を作り上げないと魔道具に護衛が必要になっちまうから、何か別の物を考えるよ」
そう。
折角足止め用魔道具が完成して街中の安全な地域を歩き回るなら護衛なしでも出歩いて良いということになったのだ。
下手に誰も買えないような高級な魔道具を造ってまたもや護衛付きの日々に戻るのは避けたい。
一人歩き権利を得る為に、危険な地域は全て避けられるように隆一は王都の地図を丸暗記しました。
勿論ザファードによる卒業試験付きw




