55.迷宮5階(2)
3人が最初に遭遇したのはクレイゴーレムだった。
視界に入ったので隆一が早速魔道具を転がして待ちうけたのだが・・・。
「とろいな」
3メートル程あって足の長さだって隆一の1.5倍ぐらいあるにも関わらず、ゴーレムの歩く速度は隆一よりも遅い。
ストーンゴーレムも同じ程度の速度で歩くのだとしたら、なるほど簡単に逃げられる訳だ。
先日の森狼なんかは視界に入ってすぐに魔道具を転がしてちょうどいい感じだったのに、驚くほどの違いである。
まあ、反対にゆっくりなのに慣れていたところへ素早い狼タイプが来るよりは探索者にとっては良い事なのだろうが。
やっとゴーレムが魔道具の力場に接触して粘着網の結界が展開した時点で、既に鑑定は終わっていた。
鑑定結果は『クレイゴーレム:ゴーレム系魔物。硬度2(含水すると0.5)』。
なるほど、水系の魔術に弱い訳だ。
水をかけたら剣でも十分倒せる・・・と思ったが、考えてみたらクレイゴーレムだったら普通に剣で倒せるらしいから、単に水系の魔術に極端に弱いと考えるべきなのだろう。
核の場所を意識してもう一度鑑定してみたら、患者の血流が診えたように核の場所も分かった。
そして待ちに待った結界に引っかかった際の結果だが・・・。
辛うじてというところか。
ちょっと軋んでいる感じだったので時間をかけすぎたら結界が破られるかもしれない。
「おっけ~。
倒しちゃってくれ」
隆一が言った途端に、デヴリンの斬撃が正確にクレイゴーレムの核を砕いた。
「ちなみに、俺は鑑定したことで核の位置が分かったんだけど、デヴリンはどうやって分かるんだ?」
デヴリンが肩を竦めた。
「なんとなく?」
・・・流石高ランク探索者というところか。
どのくらいの硬度まで斬撃が効くのか、興味深いところだ。
「ちょっと結界の強度を上げるから少し待ってくれ」
粘着網を解除して粘着粉を魔道具の中に戻し、魔道具の上にしゃがみ込んだ隆一にダルディールが呆れたように声をかけてきた。
「魔道具の改造は流石に帰ってからやった方がいいのではないか?
別に今日はリュウイチがゴーレムと戦うつもりはないのだろう?」
「そうだけど、次回の俺が戦う時はスペアも含めて幾つか持ってくるつもりだから、どちらにせよ微調整は迷宮の中でしなくちゃならない。だから今のうちこれだけやっちゃってスペアの調整は後でやるから、少し待ってくれ。
すぐ終わる・・・というか、出来た」
魔道具の横を開け、術式の一部を消した後にポケットから取り出した錬金筆で書きこみながら隆一が答えた。
「はぁ??」
デヴリンが素っ頓狂な声を上げて隆一の手元を覗き込んだ。
素人が覗き込んだところで魔道具の術式の何がどう変わったのかは分からないのだが。
「結界強度なんて術式のパラメータを一か所変えるだけなんだ、すぐに終わる。
肝心なのは変えたパラメータでゴーレムの攻撃を凌げるかなんだから、またゴーレムが来たら根気よく待ってくれ」
はっきり言って、魔道具の調整よりもゴーレムがたどり着くのを待つ方が時間がかかる。
次に現れたのはアイアンゴーレムだった。
鑑定結果は『アイアンゴーレム(小):ゴーレム系魔物。硬度5』。
クレイゴーレムよりは速かったもののそれでも動く速度は成人男性がのんびり歩く程度だった。
足止め用魔道具に接触して粘着網の結界が展開したら今度は何の問題もなく拘束されていた。
「う~ん、何体かゴーレムが寄ってきて、後から来たゴーレムが展開済みの結界を殴ったらどうなるのか気になるところだが・・・まあ、あまりそういう状況にはなりにくいと考えるべきなのかな?
まあいいや、倒しちゃって」
「了解~」
今回もゴーレムはあっさり斬撃で倒されていた。
鉄でも切り裂く斬撃とは中々凄い。
たとえ拘束しても隆一が剣で鉄を壊して核を破壊できるとはちょっと思えないので、明後日は足止め用魔道具で拘束して、中級魔術の練習と思って火球でもガンガン撃つとしよう。
・・・魔力回復用ポーションも持ってきておく方が良さそうだ。
久しぶりに本格的な魔術訓練になるかも知れないから、これで少しは魔術の技能が上がる・・・かも知れない。
ちなみに、その後現れたストーンゴーレムの鑑定結果は『ストーンゴーレム:ゴーレム系魔物。硬度4』だった。
粘着網結界に引っかかった時に魔道具から消費された魔力から鑑みると、改造版では余裕で拘束できたが力はアイアンゴーレム(小)より大きいようだった。
結局、鑑定では弱点は注記として出てくることはあるものの、魔物の強さや危険度というのは分からないようだ。
それとももっと魔物鑑定に慣れてきたら対象の得意攻撃とかパワー、速度といった情報も得られるようになるのだろうか?
取り敢えずは迷宮に潜ってひたすら魔物を鑑定しまくり倒していくしかないのだろう。
やっていくうちに鑑定情報が増えるとしたらそれはそれで面白いので、楽しみだ。




