51.足止め用魔道具(6)
「よし、一度実物サイズで試してみよう!
もしかしたら想定外にうまくいくかもしれないし!」
昼食を食べた後、隆一は今日の護衛役のエイザックに実動実験の被験者になってもらうことにした。
今までは適当に石をくるんだぼろ布や鞄を魔物代わりに投げてもらったのだが、部屋のサイズや物を投げるという制約から比較的小さな『魔物』でしか試せなかった。
もしかしたら人間サイズが相手なら想定外に上手くいくかもしれない・・・という希望的推測の下に、実際に突っ込んできてもらうことにしたのだ。
「俺は護衛なんで、身動きが取れなくなったら困るんですが・・・」
微妙そうなエイザックのコメントは聞かないふりをして隆一はそのまま実験場へ突入した。
「大丈夫、ちゃんと魔力で簡単に粉に戻るタイプだから!」
電撃ショックを与えるタイプの魔道具よりは粘着網タイプの方がずっと良心の咎めなしに被験者に協力を求められる。
服が少し粉だらけになるのは事実なので、神殿兵の制服は脱いでもらって実験用のオーバーオールを着てもらったが。
「よし、走って突っ込んできてくれ」
壁の前・・・だと結界の展開に失敗して被験者が勢い余って壁にぶつかっても困るので、部屋のほぼ真ん中に立って隆一がエイザックに声をかける。
護衛はため息をついたが、諦めたように隆一に向かって走り始めた。
爆破物も含む魔道具の実験場なのでそれなりのサイズはある部屋なのだが、真ん中に隆一が立っている為、ほんの10秒程度で魔道具が放り出された位置にエイザックはたどり着いた。
そのまま魔道具をまたいでしまうか・・・と思った瞬間に結界が展開し、それに伴って粘着網が生成した。
が。
「うわっちゃぁ!」
エイザックの勢いに負け、粘着網は後ろに立っていた隆一の方に倒れこんできた。
下手にしゃがみ込んで観察していたため、一部が隆一の髪の毛にくっついてしまっている。
粘着網の下の方はエイザックの足に付着していたので、お蔭で二人とも粘着網に中途半端に囚われた形になってしまった。
「やっぱり駄目か。
まあ、計算してもダメだろうなぁとは思っていたんだが、魔道具なら計算とは関係ないところで作動するかもと期待したが、やっぱりこれも『科学』なんだなぁ・・・」
ため息をつきながら隆一は粘着網に魔力を通し、引き抜くような感じで魔力を動かすことで粘着液を粉に戻した。
「まるでフケみたいに見えますね。
夕食前に入浴しておく方が良いかも知れませんよ?」
というエイザックの言葉に隆一は髪の毛と肩のあたりを再度はたき、立ち上がった。
「どうすっかなぁ・・・」
ため息をつきながら塵取りと箒で粘着粉を集める隆一に、エイザックが首を傾げながら尋ねた。
「網にせずに、単に柵で魔物が近寄れないようにするのではダメなんですか?
魔道具でも護身用の結界を張るのは可能ですよね?」
「強度をあげても自分と魔物の間に落とした魔道具で展開した結界では結界そのものが動いちゃって俺にぶつかることになるんだよなぁ。
外での使用だったら地面に突き刺す形で展開すれば大丈夫かも知れないが、迷宮の中だと地面に物を突き刺せないところの方が多いから使い勝手が悪い・・・」
答えている最中に、隆一の言葉が途切れた。
「・・・そうか、網を展開しなくても座標指定で垂直に展開して粘着網をその結界として生成させればそれに突っ込んだ魔物の足止めは出来る・・・か?
接触したポイントの上下50センチずつという設定にすれば空からの攻撃にも対応できるはず・・・」
ぶつぶつと呟きながら、試作品とその他諸々の物を手に隆一が実験室を出て行った。
「もう実験は良いんですね?!
部屋の鍵を返しておきますよ~?!」
研究部屋に戻った隆一は魔道具の構造を見直した。
結界で魔物を止めようする場合、自分を囲むように結界を展開しないと横にずれた魔物から追撃されてしまう。
だから結界はトリガーとして使ってそこから粘着網を飛び出させることを考えていたのだが、考えてみたら別に粘着網を飛び出させる必要はない。
結界そのものを粘着網で形成すればいいのだ。
出来るだけ空振りが起きないように最初に展開する結界の前段階の力場は大きめな板のようにして、接触があったポイントに重点的に粘着粉と魔力を集める形にしてそこで物理的に結界の本体を形成させる形にすれば、粘着網で出来上がった結界にターゲットが突っ込んで自ら足(なり羽)を粘着網に捕らわれることになってくれる。
センサーを魔力で展開し、接触があったところに物理的な結界を展開するタイプの魔道具は既に登録された魔道具に存在していた。
それに一工夫加えれば粘着網の結界が出来上がる・・・はず。
ボール型の投げつける魔道具を見ていたので、隆一はなんとは無しに粘着タイプの拘束物をぶつけないといけないと思い込んでいたんですね〜。




