49.足止め用魔道具(4)
鑑定結果の識別情報が興味深い事はさておき、粘着ボール型足止め魔道具を使ってみることにした。
神殿騎士の訓練場に行き、責任者に話をつけてそこにあった古くて半分割れているダミーを引っ張り出してきてもらう。
「あ、悪いがこのボールをこれに対して投げてくれないか?」
ダミーを持ってきた見習いっぽい若いのについでにボール型魔道具を押し付ける。
自分で投げて、壁に対して(もしくは周りにいる人間に対して)粘着ボール魔道具が展開してしまっては困る。
というか、20kphがどのくらいかは微妙に不明だが、投げて当たったのに発動しなかったりしたら居たたまれない。
「良いんですか?
このタイプは一度使うと再起動できませんよ?」
「構わない。
自分で足止めが出来る魔道具を造ろうと思っているんで、一度起動させて参考にしたいんだ」
『勿体ない』と言いたげな顔をしている見習いらしき若いのに答え、投げるように再度頼む。
ひょいっと投げられたボールがダミーの胴体に当たり、ギュルギュルギュルっとガムテープみたいなものが現れたと思ったらあっという間にダミーがぐるぐる巻きになっていた。
「・・・凄いな」
ちんたら巻き付いていたら拘束対象に逃げられてしまうからスピードは重要なのだろうが、あっという間にダミーが粘着テープでがんじがらめになっている姿は中々凄かった。
そっとテープに触ってみたところ、最初は指に張り付く感じがあったがあちこちをぺとぺと触りまくって確認している間に固まってザラザラな表面に変化していた。
使用説明書によると暗証キーを唱えながら魔力を通せばテープが溶けるとのことだし、それだけの魔力が無い場合は錬金術ギルドや探索者ギルドで売っている溶媒液をかければ良いらしい。
溶媒液は売っているのをかければ良いだけなので、少量でもそれを常に身に着けていれば拘束されても逃げられそうだが・・・持ち歩く人間はあまりいないのだろうか?
まあ、拘束されるような犯罪者は逃げるために走ることが多そうだから、瓶を持っていても割ってしまう可能性が高いのかも知れない。
起動式を読みとって見たところ、投げつけたモメンタムを更に魔力で増幅させることでこのぐるぐる巻きの勢いを達成しているようだ。
自分の前に適当に魔道具を転がして結界を展開し、それに何かが触れたら粘着する何かをぶつけようとするのならば、どうやって粘着液をぶつけるか、どういった形にするかを考える必要がある。
「う~ん、魔力で投げつけるのと同じような勢いを付与するのは可能にしても、どこに粘着液を出すかが問題になるよなぁ」
ボールのように粘着液をぶつけようと思ったら結界のどこに魔物が触れたのかを感知してそこに粘着液を投擲する術式が必要になる。
魔道具の術式はコンピューターのプログラミングに似たところがあるので、そのような作動を組み込むのも不可能ではないが・・・襲ってきた魔物が結界を通り抜けて隆一に達する前に術式を完了して粘着液で拘束しようとするのなら、魔力の出力を上げる必要がある。
「粘着液で造った網を上と正面に発生させてそれを投げつけるような感じにするか?」
網を発生させるような術式があるかどうかは不明だが、防犯用の魔道具の中には不審者を拘束する魔道具としてそういったものもあるだろう。
探索者ギルドでのこのボール型魔道具の購入価格を考えたら、粘着液に使われている風蜘蛛の糸袋内液体とネルデタールの樹液はそれほど高くはなさそうだから今回は素材については無理に研究する必要はない。
まあ、それでも後で錬金術ギルドに術式を探しに戻ったさいにネルデタールの樹液を少量ゲットして大蜘蛛の糸袋内の液体を同じように加工したら同じような粘着液が造れるのか試してみたいが。
取り敢えず、明日は朝1に錬金術ギルドに行って色々調べごとだな。
その前に今晩は頭痛と気絶までの間にどの位魔力を込められるかの確認だ。




