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実は召喚したくなかったって言われても困る  作者: 極楽とんぼ


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45.迷宮4階(2)

「そんじゃあ俺も挑戦してみるか!」

デヴリンの倒したレッサートレントを持ち帰れる形に纏め終わり、手斧を手に取った隆一は別のレッサートレントに近づいた。


久しぶりの独力での魔物退治である。


「おっと」

隆一がレッサートレントの前に立ち止まり、さあ行こうと手斧を振り上げたところでダルディールが何やら上から落ちてきた物をキャッチして幹にぶつけ、地面に落とした。


幹に叩きつけられた衝撃で気絶しているらしき物体は、縄・・・ではなく蛇だった。

長さ40センチ程で直径5センチ弱というところか。


東京でも子供の頃に時折郊外で見かけた青大将と似たりよったりと言ったサイズだ。

「林蛇だな。

ごく緩い麻痺毒があるが、人間相手だと毒そのものには致死性は無い。

ただし動きが鈍くなるから、これに咬まれた後に森狼に襲われると一匹しか来なくても危険なこともあるから気を付ける必要がある」


ダルディールの解説にまじまじと地面に伸びている蛇を見つめる。

「毒蛇ってもっと色が派手なのかと思っていた」


林蛇は木に紛れるためか、ごく地味な茶色い色をしていた。

幹のような微妙な模様付きなので慣れない隆一ではまず見つけられないだろう。


「毒だけで殺すほどの強さは無いからな。

そうなると隠れて襲う必要がある・・・んじゃないか?」

肩を竦めながらダルディールが答えた。


まあ、ある意味どうでも良い事なのだが。

なんと言っても魔物は元々自然の摂理とは必ずしも一致していない生き物だ。

迷宮の魔物に至っては更に不思議な存在だし。

弱肉強食の世界で自然淘汰によって進化してきた普通の動物とは違う摂理に従っていても不思議は無い。


取り敢えず、一応サンプルとして持って帰ることにして地面に伸びていた林蛇の首を手斧で切り落とし、採取用の袋に詰め込んでバックパックに放り込む。


「さて。

トレントだ!」

気を取り直して足を広げて若木の前に立ち、手斧を振り上げる。


取り敢えず『これが顔』と教えられた方向とは逆のところを狙った。

単なる枝を切った後のデコボコにしか見えないとはいえ、やはり相手の『顔』を見ながら斧を振るいたくはない。


レッサートレントは直径10センチ程度とは言え生木なのだから、それなりに切り倒すのは大変だろうと思っていたのだが・・・意外にも一撃で3分の1ぐらいまであっさりと手斧が入った。


しかも、手斧を軽く揺すりながら引き戻したらあっさり幹から抜けた。

・・・こういう時って木に刃がめり込んでしまって抜けにくくなるんじゃなかったのか?


思った以上に簡単にレッサートレントが伐採できそうだ。

これでは討伐ですらない。


そんなことを考えながら隆一がもう一度手斧を振り下ろしたら、殆ど幹が切断されてしまった。


ギギギィ~。

自重で木が倒れ始めたので、幹に蹴りを入れたらあっさりレッサートレントは倒れてしまった。


「随分と簡単に倒せるんだな」

手斧を2回振り下ろしただけで切り倒せたレッサートレントに目をやりながら隆一は呟いた。


「まあ、動かないし要は赤子みたいなものだからな。

この階でのレッサートレントの採取で気をつけなければならないのは、トレントを倒したり枝を落としたりしている間に襲ってくる森狼や林蛇だ」

肩を竦めながらダルディールが答えた。


とは言え。

「ここ10日弱の迷宮巡りで大分体力はついたし魔力も増えた。

しかし残念ながら動いている魔物を倒す能力は全然上がっていない気がするんだが・・・何か特別な訓練をしたら反射神経も良くなるのか?」

先ほどの林蛇にしたって、落ちてきた時に全く反応できなかった。


ただ単に同行者が魔物を倒すのをぼ~と見ながら迷宮を回るだけでも基礎能力は上がるようだが、やはり完全にお荷物としてついていくのはどうも性分に合わない。


かと言って『赤子』であるレッサートレントを切り倒しまくってもあまり成長しなさそうだ。


デヴリンのようにバンバン斬撃を飛ばして魔物を倒せるようになれるとは思わないが、『完全なお荷物』と『バンバン倒す』の中間(より『お荷物』寄りになるとは思うが)ぐらいまで腕を上げたい。


「2階の時みたいにデヴリンに足止めしてもらってとどめを刺すとか?」


「一撃で首をはねられるデヴリンにとって、殺さずに足止めをする方が面倒なぐらいだろ?

態々足止めをしてもらって俺が時間をかけてとどめを刺すのって自己満足の為に時間を無駄にしているみたいで嫌なんだよなぁ・・・」


隆一たちの会話を耳にしたデヴリンが肩を竦めた。

「リュウイチが腕を磨きたいと言うんだったら協力するから、手間に関しては気にしなくていいぞ?

どうせ中層ぐらいまでだったら俺にせよダルディールにせよ、殺さずに魔物の足止めをする方が面倒なのに変わりは無い」


何とも身も蓋もない現実に、思わず隆一の口からため息が漏れた。

要は、この二人にとってここら辺の魔物は雑魚過ぎるのだ。


ある意味、隆一が完全にお荷物に徹してガンガン魔物を倒して歩く二人の後をついていくのが一番手っ取り早くて二人にとっても楽なのだろう。


だが、それでは基礎能力は上がっても隆一の戦闘技能は上がらない。

自力で魔物を倒したい、だけどデヴリンに斬撃で足止めをしてもらいたくない、というのは単なる隆一の贅沢な我儘なのだ。


とは言え、今回の一連の迷宮探索は隆一の為の活動なのだ。


隆一が満足するようにやってもらったって良いのだろう。


・・・としたら。

やはり隆一としては自分のプライドの為にも、出来ればもう少し『自力で倒せた』と思える方法で魔物を倒したい。


倒すのに手間取っている間に寄ってくる他の魔物の始末はデヴリンとダルディールに任せるにしても、せめて自分が標的と定めた個体は自力で倒したい。


そう考えると、襲ってくる魔物に対して魔術攻撃をあてられるだけの動体視力と反射神経を培うか、襲ってくる魔物の足を止める何らかの手段が必要だ。


「よし。

ちょっと魔物の足止めが出来る魔道具に関して研究してみたいから、数日休みにしよう。

魔道具の目途が付きそうになったら連絡するから、それまでは迷宮探索は休みということで良いか?」


流石に反射神経を一気に良くするような魔道具や薬の開発はちょっと怖い。

ここは足止め用の魔道具の開発か製作に希望を託そう。


さあ研究だ!

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