表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
実は召喚したくなかったって言われても困る  作者: 極楽とんぼ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/1276

25.色々実験:スライム水とポーション(3)

取り敢えず、効果が薄かった魔力の抜けたスライム水のポーションはテストする価値も無いと言うことで排除。


備蓄用ポーションのテストとして、魔力を注ぎなおしたスライム水ポーションとスライム粉と魔力水で造ったポーション及びスライム粉と魔石粉を使ったポーションを持っていくことにした。


本当ならば普通に備蓄するような状況を考えてポーション用のボトルに入れて1か月放置してから試すのが正しいのだが、普通の陶器の壺に入れておけばガバガバに魔力が抜けるので魔力保存効果のあるポーション用ボトルを使った1か月とそれ程違わない・・・と想定して取り敢えずテストをしてみることに。


全然ダメだったらちゃんとやり直せばいい。

上手くいった場合も特許登録をザファードに任せて治験は錬金術ギルドに任せれば良いだろう。


もう一つ人体実験しておきたいのが高アルカリ性スライム水ポーションだ。

火傷の治療用だとしたら火傷の傷跡に苦しむ元患者を神殿にでも教えて貰って使ってみるべきかもしれないが、副作用も分からないし上手くいくかも分からない試作品だ。


隆一は取り敢えず傷跡が消えなくても気にしない探索者で試すことにした。


探索者だったら万が一スライム水が変な風に浸食作用を及ぼして痣とか後遺症が発生した場合、傷跡をナイフで抉り取って大回復ハイヒールで治しても文句を言わなそうだし。


いや、文句を言うだろうが、無料治療5回ぐらいを約束すれば黙るだろう。


夕方までにはまだ時間があるので、隆一はスライム水ポーションの危険度を確認することにした。


まずはガーゼにしみ込ませたスライム水ポーションを肘の内側の肌に当てて放置。


(うわぁ、ピリピリするのが収まらないのって辛い)


もぞもぞしながら我慢したが、10分程で我慢ができなくなってガーゼをどけた。


取り敢えず、見た感じは微妙に肌が白くなった程度であまり変化は無い。

ガーゼを外した途端にピリピリした痛みもなくなった。


「鑑定」

皮膚の状態及び皮膚の下の細胞、神経、筋肉への影響を念頭に置きながら魔力を籠めて鑑定した。

『リュウイチの腕:肌の状態:良好、神経の状態:刺激による過敏状態(微小)、筋肉の状態:良好、骨の状態:普通』


この神経の過敏状態は痛みを我慢していたからなのか、それともスライム水ポーションの副作用なのか。


取り敢えずお茶を淹れて10分程待ち、再度鑑定してみた。

『リュウイチの腕:肌の状態:良好、神経の状態:普通、筋肉の状態:良好、骨の状態:普通』

に代わっていた。


「どうやら副作用は特には無いみたいだな」


「どうしたんです?」

隆一の独り言にザファードが尋ねてきた。


「ちょっと傷跡の治療に役立つかもしれないポーションの治験中?」


今度はもう少し敏感そうな首元で確認してみよう。

手鏡で位置を確認しながら鎖骨の上あたりにスライム水ポーションを含ませたガーゼを置いた。


「傷跡の治療ですか?

傷跡の治療を求めるような探検者はあまりいないのでは?」


どうやら首元は腕の内側よりも神経が多く通っているのか、さっきよりも痛みが強く感じられる。


「安全性確認の為の治験には探索者に協力してもらうつもりだけど、メインな利用方法は火傷の傷跡の治療に使えないかなと思っているんだよね」


ガタン。

ザファードが椅子をひっくり返して勢いよく立ち上がり、詰め寄ってきた。


「火傷の傷跡を治せるのですか?!」


「理論上では治せるかも?という程度?

スライム水を魔力水代わりにポーションを使ってみたんだけど、核を取り外して直ぐのスライム水って肌を溶かす効果が残っているようなんだよ。

これをそのままポーションにすると、どうも肌の表面を溶かしつつ治療するみたいで、結果的には肌がきれいになっていたからもしかしたら傷跡も消せるかもと思って後で試すつもりなのさ。

ただまあ、餌を溶かして消化するスライムの部位を使っているからね。

変な副作用が無いかちょっと人体実験中」


取り敢えず、痛さが耐えられなかったのでまだ7分程度だったが鎖骨の上にあてたガーゼを外してみた。


鏡で見た感じではやはりプルンと健康そうな肌になっただけに見える。


「鑑定」

『鏡:デルフォン作。埃が少量溜まっている』


どうやら自分で直接見えない物の鑑定は難しいようだ。

でも、出来ればこの後に顔の肌でも実験してみたいのでなんとしても鑑定は出来るようになりたい。


鏡で鎖骨をじっくりにらみながら、『鎖骨の上の部分の状態』を強く意識しながらもう一度鑑定をかけたら、今度はちゃんと目標ターゲットが鑑定出来た。

『リュウイチの鎖骨上部:肌の状態:良好、神経の状態:普通、筋肉の状態:良好、骨の状態:普通』


どうやら肌と筋肉まではポーションの効果が及んでいるらしい。

神経は痛みの刺激によるマイナスと癒し成分のプラスが相殺してゼロというところか。

骨までは効果が浸透していないらしい。

まあ、下手に骨に影響があると骨粗鬆病などを誘発しても困るから、影響が無いほうが良いだろう。


「顔で実験するのでしたら私が試しましょう。

その方が結果が分かりやすいですし、肌を溶かしながらなんて痛そうなことをするのでしたら常識的に耐えられる程度なのか確認したほうが良いでしょう」


鑑定結果に満足して、今度は頬にガーゼを張ろうと角度を確認していたらザファードがガーゼを取り上げて自分の頬に張り付けた。

「・・・痛いですね」


「まあねぇ。

肌を溶かしているんだから、痛くなかったら却って怖いぜ?

それでもナイフで表皮を削り取って治療するよりはお手軽だし抵抗感も無いかと思う。

ちなみに、10分を目安に考えているけどその前に痛みが我慢できなかったら外してくれ。

どの程度患者が我慢できそうかも重要だからな」


顔をしかめながら我慢していたザファードだったが、5分程度で耐えられなかったのかガーゼを外していた。


「見た目は普通だな。

痛みはあるか?」

手鏡を渡しながら尋ねる。


頬のど真ん中に充てていたのであまり変化は無かったようだ。どうせなら次はほうれい線か目尻のシワのところで試してみることで肌の下の肉のたるみやデコボコへの効果を見たいところだが・・・下手に若返り効果を見せてしまうと変な方向に話が行きかねない。


「ガーゼを当てている間はかなりピリピリと痛かったですが、外したら痛みは無くなりましたね」


「鑑定」

『ザファードの頬:肌の状態:良好、神経の状態:普通、筋肉の状態:良好、骨の状態:普通』


話している間に神経過敏だったであろう部分も収まったようだ。

それとも5分だったら神経過敏な状態まで行かないのか。

どちらにせよ、顔に使っても取り敢えず問題はないようだ。


考えてみたら皮膚の敏感さには個人差がある。探索者相手の人体実験が終わったら普通の人を相手にした治験も数をこなしてデータを取った方が良いだろう。


「取り敢えず、夕方になったら探索者ギルドに行って備蓄用ポーションの試作品と一緒にこれも試して古い傷跡を消せるか調べてくるよ。

傷痕に使えそうだったら特許申請をしてもらって、火傷の傷跡にも使えるかは神殿でゆっくり慎重に治験してもらおう」


実験結果をノートに書き始めた隆一に、ザファードが更に一歩近づいてきた。

「神殿での治験を始める前に、火傷の傷跡にも一応治験してみたほうが良くありませんか?」


どうやら、ザファードの食いつき具合は個人的な理由があったようだ。

まあ、普段あれだけ落ち着いている男が椅子を蹴り倒したのだ、予想は出来た。


「まあそりゃあ、確実に火傷の傷跡を薄くできると分かっている状態で特許申請しておく方が神殿もすぐに治験に取り掛かってくれるだろうが・・・痛いし下手をしたら顔に変な痣が出来たりするかも知れないぞ?」


「いえ、気遣いは必要ありません。

傷跡が酷くて仮面で顔の半分を隠して生活しているので、今更痣が追加で発生しても気にしないと思いますし」


ファントム・オブ・オペラ(あれは生まれつきのミイラ顔という話だが)じゃないが、本当に仮面をつける怪人モドキがザファードの知り合いにいるようだ。


思わずちょっと失礼な突っ込みを入れたくなった隆一だったが、どうせ通じないだろうしそれなりに個人的な苦痛もありそうな話に下手な冗談を言うのは失礼だと口をつぐんであっさり頷くにとどめておいた。


「痛くても変な副作用があっても構わないなら、実験体は大歓迎だよ。

ここに泊りがけで実験に付き合ってくれたら経過観察が出来るし、副作用が出始めたらすぐに対応できるから、知り合いなら泊りがけでの治験を持ち掛けてみてくれ」


痛みに強く、傷跡にも慣れている為に人体実験には向いている探索者だが、残念ながら酒飲みが多い。

酒を飲まれて痛みに鈍感になっていると副作用の発覚が遅れる可能性があるので、真面目なザファードの知り合いだったらその点安心できそうだ。


「分かりました。

直ぐに声をかけておきます」


「時間が自由になるんだったら明日の夕方から1泊2日でやってみるというのはどうだろう?

明日の夕食の後にでもちょっとやってみて、夜中に異変が起きなかったら明後日に1日通して経緯観察しながらやっていく感じで。

どうせ治験にはそれなりに時間をかける必要があるから、急には予定があかないならいつでも構わないけど」


直ぐにもその知り合いを引きずってきそうな気合を感じ隆一は一応の心づもりでスケジュールを提案しておいた。


明日は迷宮に行く予定なので、この後探索者ギルドで人体実験をしに行った後に帰ってきたら既に泊りがけの治験対象が来ていたなんてことになったらちょっと困る。


「リュウイチ殿が探索者ギルドに行っている間に連れて来ようと思っていたのですが、確かに明日は迷宮へ行く予定なのでしたら明日の夜からの方がじっくり出来そうですね」


・・・やはりすぐさま引きずってくるつもりだったらしい。


隆一は閃きから新しい気づきから今までになかった物を開発していくのは好きですが、大雑把に形が出来たら細かい部分の修正や改善は人に任せたいタイプです。


なので一応開発者の責任として最初の治験はするけど、そこで引っかかるような大きな問題が無かったら長期的で綿密な治験や商品化は錬金術ギルドや神殿に丸投げする予定w

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
前エピソード >「普通の傷跡はまだしも、火傷の傷跡に関してはそれなりに需要がありますね」 今回 >「火傷の傷跡を治せるのですか?!」 >どうやら、ザファードの食いつき具合は個人的な理由があったようだ。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ