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実は召喚したくなかったって言われても困る  作者: 極楽とんぼ


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20.迷宮1階再び

昨日は最後の実験として寝る前にスライム水にスライムの魔石を放り込んで水槽の蓋をしておいてみたのだが、朝になってもスライムは発生していなかった。


生きているスライムなら分裂するのに魔石を1個与えるだけで十分なのに。

自然(ではなく実験だが)発生する為には迷宮のような特別な環境が必要なのだろうか?


取り敢えず、明日の実験時間中にもっと多めにスライムの魔石や大量の魔力を籠めたらどうなるか確認しておこう。


そんなことを考えながら迷宮へ。

一昨日、資料室の帰りにスライムの魔石をランクアップに必要な数だけ提出して青銅ランクまで上げてあるので、現在の隆一のタグは青銅だ。

お蔭で石ランクのタグの時ほどは注目されていない。

多分。


「おはよう。

基礎能力はどうなっていた?」


既に待っていたデヴリンがこちらに気が付いて手を振りながら挨拶してきた。


かなり崩れたカジュアルな口調から、時間に関してもルーズなのかと隆一は密かに思っていたのだが、実は待ち合わせ5分前タイプなのかも知れない。


まあ、考えてみたら口調がどうであれ、副団長なのだ。

軍人だったら時間に正確なのは当然な可能性はあるのかも知れない。


こちらの世界では携帯できるサイズの時計の魔道具は存在するので、ファンタジーな世界ながらも大広場や教会の鐘の音で時間を把握していた中世ヨーロッパ程時間感覚が大雑把ではないのだろう。


「腕力も魔力も微妙に増えていたが、適当に作った観測機具を使っているから誤差の範囲の可能性はあるな。

まあ、今日はがっつり自分でスライムを倒す予定だから明日の結果ではもっとはっきりした変化が見られるんじゃないかな?」


そんなことを話しながらダルディールのことを待っていたら、彼も待ち合わせ時間の数分前に姿を現した。


どうやらこの2人との待ち合わせはちゃんと時間を守る方が良さそうだ。

まあ、朝の待ち合わせだったら実験の途中ということは無いのでうっかり時間を忘れる危険は低いから大丈夫だろう。


「今日はスライムを倒して回り、ついでに大蜘蛛も幾つか採取して糸袋の保全と劣化に関する実験をしたいと思っている。

だから大蜘蛛を見かけたら声をかけてくれ」


お目付け役の二人に今日の予定を話し、迷宮の中に入った。

1階の子供でも入れるような階層でも隆一の半歩斜め前をデヴリンが進むのは、やはり護衛としてのプロ意識が強いようだ。


まあ、うっかり隆一が死んでしまったらとばっちり天罰が下る可能性もあるのだ。

そんなリスクがあるのに気を抜くようでは銀ランクにはなれないのだろう。


テケテケと先日マッピングした1階を歩き回り、スライムを倒して回る。


スライムの魔石を弾き飛ばしやすいように魔法発動体をスパチュラの形のままで使っていたら、ダルディールに二度見された。

「斬新な形の杖だな」


「魔法発動体ってミスリルが一定の回路を形成していればいいだけだから、杖の形をしている必要はないって教わったからね。

杖の形よりもこっちの平らな感じの方が風矢ウィンドアローも平面的に発動するのをイメージしやすい」


そう答えながら次のスライムを倒す。

先日のマッピングに記したスライム出現場所とは違うので、どうやらスライムにはテリトリー意識は無いらしい。


まあ、親指の先端程度の核だけで移動、餌の捕獲、消化その他全ての機能のプログラミングをやっているのだ。

テリトリー意識まで持たせるのは流石に無理があるのだろう。


迷宮の1階程度だったらテリトリーを有することのメリットも特には無いだろうし。


そんなことを考えながら歩いていたら、デヴリンが斜め右前方を指さした。

「大蜘蛛だぜ」


「お、どうも」

こちらも風矢ウィンドアローで倒し、巣を専用の袋に入れた後に大蜘蛛を簡単に解体して糸袋を取り出し、魔力を含ませた魔力水を生成して保管用袋に一緒に入れて密封する。


「なんで水と一緒に入れているんだ?」

デヴリンが興味深げに覗き込んできた。


「蜘蛛の糸袋をどういった環境で保存したら劣化を抑えられるか、ちょっと実験をしてみようと思ってね。

魔力水とか氷漬けとか一度熱湯で洗うとか、色々試してみる予定」


幸いにも、ジップロックのような袋が探索者ギルドで売られていた。

過去に召喚された異世界人の誰かがトレントの樹脂を使ったポリエチレンモドキを発明したらしく(過去の異世界人基金の帳簿にポリエチレンモドキの特許収入が大量に入っていた)、魔力を流すと密封できる錬金術の不思議素材のロック部分と合わせて、素材を小分けして密封状態で持ち帰るのに適した袋がそれなりにお手頃な値段であったのだ。


下手したら革や布の袋に体液の滴っている魔物の部位を入れて持ち運ぶのかとちょっとうんざりしていたので、保管袋を見つけた時は正直言って本当に嬉しかった。


どうせなら錬金術でマジックバッグも造ってくれればいいのにとも思ったのだが・・・空間を圧縮したり拡大したりするような魔術そのものが存在しないらしい。


空間なり次元なりをぶち抜く召喚陣があるのだから、それを研究すれば最低でも遠隔でアクセスできる保管庫みたいなものを造れるのでは、と思ったのだが召喚陣の研究は禁忌とされていると言われた。


なんと言っても神様が直接天罰を下す世界だ。

神に禁じられた研究に手を付けた人間は死んでしまうので、マジックバッグの研究が進まないのはしょうがない事なのだろう。


手軽に密封できるジップロックもどきがあっただけでも御の字だと思わなければならない。

本格的に迷宮を攻略するのなら、足場が悪いところでも引っ張りやすいキャリーケースでも自分で開発するしかない。


ちなみに、このジップロックもどきな保管袋は強い酸性やアルカリ性には対応できないので、スライムや毒袋の保管に使用することは推奨されていない。

また、骨や牙で穴が開くことも有るので再利用するのならば毎回ちゃんと穴が無い事を事前に確認するのは自己責任だと売り場で念を押された。


どうやら再利用した保管袋に穴が開いていたせいで持ち帰った部位の買取価格が下がったとクレームをつける探索者がそれなりに頻繁に出るらしい。


「お、魔物化した大鼠だ。

倒してみたらどうだ?」

デヴリンから言われて風矢ウィンドアローを放ったが、ひょいっと大鼠が動いたために外れた。


「動く的に魔法をぶつける練習はしてないんだけど!」

慌てて更に魔法を放つが、見事に全て避けられてしまう。


「まっすぐ進めよ!!」

進む方向を前読みして大鼠が行くであろう場所に風矢ウィンドアローを放っても、何故かタイミング良く(悪く?)方向転換されてしまって再び空振り。


「デヴリンが斬撃を放った時は一度も外さないのに、なんでだよ??!!」


大鼠が逃げ切りそうになったと見て、デヴリンが斬撃を放って魔物の足を切り飛ばしてくれた。


「納得いかん」

ぶつぶつと文句を言いながら大鼠に近づき、風矢ウィンドアローでしっかり首を飛ばした。


風矢ウィンドアローが遅いから、避けられているんじゃないか?

魔物未満の大鼠ならまだしも、魔物になったら魔力を感じられるから攻撃魔術ものんびりしていると避けられるぞ。

もっと速くするか、発した後に追尾するようコントロールをキープするか、どちらかの練習をした方が良さそうだな」


ダルディールが隆一の愚痴に答える形で助言した。


風矢ウィンドアローの方が火矢ファイヤアローよりも速いような気がしていたけど、同じ風矢ウィンドアローでも術者によって速度に違いが出るのか?

今度時間がある時にちょっと練習してみるが・・・実験で色々と忙しいからなぁ」


別に、隆一としては魔術師としてガンガン魔物を倒していきたいと思っている訳ではない。

取り敢えず、自分で倒した時とパーティの他の人間が倒した時とで基礎能力の上昇率に違いがあるのか興味があるから暫くは試すつもりではあるが、最終的に目標を達せられるならば自分で魔物を倒したいという欲求はそれほど強くない。


「まあ、いいや。

取り敢えず今日を練習日だと思うことにしよう。

大鼠も全部倒すよう頑張るから、逃げ切られそうになったら足止めよろしく」


とは言え。

大鼠に風矢ウィンドアローを連発してしまったせいで、その後3体ほどスライムを倒したら魔力が切れてしまった。


「ちょっと待っていてくれ」


同行者2人に待つように頼み、魔法発動体のスパチュラ形の杖に集中して、形を変える。

手で握る個所の幅を少し増やし、窪みを造ってそこに小魔石を嵌められるようにした。


後は回路に少し手を加え、術を発動する動力として魔石から魔力を引き出せるようにする。


コントロールには自分の魔力を使うが、これで使用魔力の量は大分減る。

「よし。

試してみようじゃないか」


ちょうど都合よく姿を現したスライムに近づき、小さな風の刃を素早く出すことを意識しながら風矢ウィンドアローを発動する。


「何をしたんだ?」

スライムを倒して小魔石を入手した隆一にダルディールが尋ねた。


「残存魔力が厳しくなってきたから、術の発動に魔石の魔力を使えるようにちょっと杖に手を加えた」


「器用だな~。

魔道具って迷宮の廊下に立ってちゃちゃっと造ったり修正したりするような物じゃないはずなんだけど?!」

呆れたようにデヴリンが呟き、ダルディールに自分の常識を再確認する為に声をかけた。


「まあ、凄腕の錬金術師だったら可能なのかもしれないが、そういうのは迷宮に来ないからな・・・」


「そうなのか?

迷宮の中の方が魔力に満ちているからミスリルの加工がしやすいぞ?

まあ、下手にそんなことを言って錬金術師が作業する為に迷宮に籠るようになったらスライムに足を溶かされちゃう連中が激増するかもだけど」


とは言え。

錬金術師だったら初級ポーションぐらいだったら自分で作れる。

そう考えるとスライムの危険を冒してでも迷宮で研究作業したがる錬金術師はそこそこ発生するかも知れない。


探索者ギルドの職員の心労を考えると、迷宮では魔道具の加工がしやすいという話は錬金術ギルドには漏らさないほうが良さそう。


とは言え、熱中している錬金術師の周りに出てきたスライムをつきっきりで退治するという依頼を見習い探索者に出して、代わりに錬金術ギルドに割安な魔道具の販売を交渉するのもありかも?

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