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実は召喚したくなかったって言われても困る  作者: 極楽とんぼ


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18.色々実験:スライム編

「さて、実験中だったスライムは・・・やはり増殖しちゃっているか」

煌姫とのお茶が終わって部屋に戻ったところ、行く前に魔力を注入したスライムは2体に増えていた。


「これっていつぐらいに分裂したか、気が付いたり・・・してないよねぇ」

変わらず専用コーナーで作業を続けていたザファードに声をかけたが、首を横に振られてしまった。


本来ならば実験をするなら錬金術ギルドの研究棟か、自立して自分の研究室を持つならば自分の研究室で作業をすべきなのだが、まだスライムというごく低級で危険性の低い魔物を使っての実験なので取り敢えずは神殿の隆一の私室での実験が許されている。


とは言っても何か事故が起きては困るので、完全に結界で魔物を封じ込めていない限り誰かが見張っていなければならないと言われた。

そこでザファードがそのまま残って仕事を続けていたのだが・・・自分の書類の処理で忙しかったザファードは取りあえずスライムが水槽からあふれ出ていないことだけを時折確認するだけしかしていなかったようだ。


「俺関係の書類とか決裁事項ってまだそれほど発生していないよね?

ここのところ、いつ見ても無限に書類作業があるみたいだけどザファードって何をやっているんだ?」

思わずふと興味を感じて聞いてみた。


「何を言っているんですか。

先日提供された喘息と肺炎の治療薬に関する治験や特許権利や改善研究関連で資料が山ほど発生している上に、何やら不思議な金属まで錬金術ギルドに登録していたじゃないですか。ヴァダス師が次から次へと色々試作品を作っているせいでその登録までこちらに回ってきて大変なんですよ」


呆れたようなため息とともにザファードの返事が返ってきた。


「あれ?

特許登録すれば終わりなんじゃないの?

治験やら改善研究やらは俺には関係ないよね?」


元々、特許料は最低限に抑えてある。

申請しなければ研究を見た他の人間に勝手に特許登録をされて使用を制限されるかもしれないと脅されたから特許申請をザファードに頼んだだけなのだ。


後は神殿なり錬金術ギルドなりが安全性を確認して薬として利用していき、売り上げに比例して特許料が振り込まれるだけだと思っていた。


「まあ、治験や改善研究は治療を行う神殿側の作業ですが、最近はリュウイチの授業もそれほどないから暇だろうと、どうせなら私がその事務を扱えば変な不正が起きるのも防げるから一石二鳥だと押し付けられたんですよ」


神殿の中での作業の一部が、隆一の一般教育がいち段落ついてもうそろそろ暇になるであろうザファードに流れてきたらしい。


「お~。

まあ、頑張ってくれ。

スライムの研究は別に何の特許も発生させないと思うから仕事は増えないと思うぞ~」


ザファードの作業量の理由に納得して、隆一はそのままあっさり実験に戻ることにした。


さて。

煌姫が来る前の実験では、スライムに

(1)豚肉を提供

(2)魔豚の肉を提供

(3)リンゴを提供

(4)上の(1)~(3)に加えて小魔石を提供

(5)水と小魔石を提供

という条件の下での分裂増殖の速度を確認した。


一番早かったのは魔豚と小魔石を与えた時だったが、意外にもリンゴと豚肉の違いはほぼ無かった。

生物の増殖としては肉の方がより早く行われる、もしくは肉の方が消化に時間がかかるといった理由で何らかの違いが生じると想像していたのだが、スライムの増殖にとってはどちらでも変わりはないらしい。


というか、水と小魔石の組み合わせでも豚肉やリンゴと小魔石の組み合わせより微妙に遅い程度で豚肉やリンゴだけよりは明らかに早かったので、スライムにとって重要なのは魔力であって、実は物質的な餌は殆ど必要ないのかもしれない。


分裂を続けたらそのうち物質的な餌が必要になる段階に到達するかもしれないが。


「毎回魔石を食わせていたら補充するのが面倒になりそうだ。

魔力だけを注ぎ込めないか、試してみるか」


魔力を魔石に注ぎ込めるのだ。

魔石から魔力を抜き取って注ぎ込むことだって出来ても不思議は無い。

自分の体に取り込まずにスライムに注入させることが鍵だが。


ちなみに、今朝の起床後にやったチェックでは腕力は20キロ、魔力が小魔石8個だった。

前日は腕力が18キロ、魔力が小魔石6個だったので多分1日迷宮で歩き回ったことで基礎能力はアップしたようだ。


考えてみたら、護衛役2人にスライムやその他の雑魚魔物を討伐させずに、単に歩き回るだけでも基礎能力が上がったのかチェックするべきだったかもしれない。

何も殺していないのに基礎能力がアップしたら、迷宮で『陰』に晒されるだけで人間は僅かながらでも能力アップするということになる。


だが、弱いとはいえ1階にいたスライムをデヴリン達が根絶してしまっているので、能力アップが魔物を殺したことからくる経験値のシェアリングから来ているのか、それとも『陰』への露出も関係しているのかは分からなくなってしまった。


とは言え。

仮に『陰』に晒されるだけで人間の能力がアップする事が分かったとしても、『陰』は下層の方が濃厚だと言う話だ。

濃厚な『陰』を浴びるために下の方へ潜って行ったら魔物を殺さずに歩き回るのは危険すぎて必ずしも可能ではないから、『陰』に晒されるだけでどうこうなるかという研究は考えてみたらあまり意味がない。


ということで、隆一はスライムの研究に戻ることにした。

今度は水と小魔石を提供したスライムと、水と小魔石からの魔力を直接注入したスライムの分裂速度の違いのチェックだ。


煌姫とお茶を飲んでいる間に分裂したスライムの1体をガラスでできたスコップのような容器で掬い上げ、別の小さな水槽に移す。


そこに少量の水を注ぎこみ、砂時計をひっくり返した後に小魔石を手に取り、そっと魔力を抜き出してスライムに注ぎ込んでみた。


「お。

案外と良い感じ?」


手に嵌めているラテックス(モドキ)な手袋が魔力を弾くようなイメージで、小魔石から抜き出した魔力をそのままスライムに対して零すように注入すると、小魔石が空になってから1分半ぐらいでスライムがプルプルと震えたと思ったら分裂した。


「さて、小魔石をそのまま食わせたらどうなるかな?」

元の方のスライムに同量の水を注ぎこみ、小魔石を放り込んで砂時計をひっくり返したところ・・・こちらは1分45秒ぐらいで分裂した。


「おや。

魔石から魔力を取り出す方が分裂に時間がかかるんだ?

魔石とは純粋に魔力だけの存在じゃあない?

それとも魔力が凝っているせいで吸収に多少なりとも時間がかかるのか・・・」


ぶつぶつと呟きながら実験の結果をノートに書き出していく隆一に、ザファードが目をやった。


「色々と実験をしているようですが、何を調べようとしているんです?」


「う~ん?

単に興味があるだけ?

強いて言うなら、スライムという魔物の生態その物に関する基礎研究というところだね。

別に何かの役に立つとは思っていないけど、元の世界にはいなかった不思議生物だからその生態に興味がある」


地球で薬の開発などで最初に行う動物実験は哺乳類で最も飼育が簡単で繁殖が早い鼠で行うことが多く、それがうまくいったら猿や豚に移行する(最近は動物愛護協会から突き上げを食らう為、動物実験がやりにくくなってきたが)。

それを考えるとスライムの基礎実験なんてやったところで生態が違い過ぎて医療的には意味がない気はするが、折角仕事に関係のない研究をやりまくれる世界に来たのだ。


興味の赴くままに実験を続けるつもりの隆一だった。


「さて。

次は増やしまくったスライムからスライム水を採取して色々確認させてもらおうか」


結果を出さなくても構わない、心が赴くままに出来る研究を楽しんでいる隆一ですw

本人は遊んでいるだけで殆ど何もやっていないから世話係のザファードも殆ど不要なぐらいで、暇でしょうがないだろうと思っていたら実はそうでもなかったり。

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