表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
実は召喚したくなかったって言われても困る  作者: 極楽とんぼ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/1320

12.迷宮1階(2)

「スライムって養殖してもいいんだろうか?」

実験するには1匹分のスライム液では足りないが、一々こんな風に床にガラスの容器を置いて捕まえるのは面倒だ。


どうせならガラスの容器の中ででもスライムを育てて、そのまま核を取り去って殺して清潔なスライム液をゲットしたい。


「下水や汚物処理にスライムを使っているという話だから、良いんじゃないか?」

とあっさり答えたデヴリンの頭をダルディールがガツンと殴った。


「こら、副団長ともある人間がいい加減なことを言うな。

リュウイチ、魔物は養育方法を間違えると共食いして進化する危険があるから、ある程度以上の数を養殖する場合は探索者ギルドに登録し、定期的に検査を受けてもらうのが決まりだ」


やはり魔物は共食いすると進化するらしい。

では、蟲毒のような方法で意図的に魔物を発生・強化させて仮想敵国を弱らせる等の手段も取られたりするのだろうか?

魔物の討伐では探索者も犠牲になるから、意図的にやったことがバレたらその国が探索者ギルドからそっぽを向かれるリスクがあるが・・・それが抑制力になることを期待しておこう。

この国に召喚されたと言っても、他の国との敵対関係のせいでとばっちりを食らいたくはない。


「スライムが共食いして進化すると何になるのか、どこかに資料はあるかな?」


資料が無いなら自分で実験してみるのも面白いが、既に誰かが実験しているのだったら取り敢えず資料を読んでどの程度のリサーチが既にされているのかチェックしておきたい。

某RPGを楽しんだ世代としては、スライムを育てて強くすると言うアイディアにはちょっと興味を感じる。

はっきり言って全く実用性のない研究となる可能性はこの上なく高いが、隆一としては異世界に移植され、生活費を渡されて好きにしろと言われたこの第二の人生では実用性とは関係なく、興味の赴くままに気ままに研究していこうと思っている。


というか、召喚に選ばれた理由が自分の薬の開発に関する専門性かと思うと、神の思惑通りに医療関係の研究をするのも微妙に気が乗らないのだ。


専門性に関係なく偶然召喚されたんだったら全く違う分野の研究に打ち込んでみるのも面白そうだし。


「そういった実用性の無い学術的な研究結果は探索者ギルドの資料室の奥の方にあるから今度受付でスフィーナに聞いてみたらいいと思うぞ」


資料はあるようだ。

帰りに聞いてみることを決め、隆一は取り敢えずスライムのこれ以上の捕獲はせずにちゃっちゃと進むことにした。


ダルディールの解説によると、王都迷宮の1階はスライムの他は魔物と言えるか微妙な小物しかいないとのことだった。

迷宮の1階といったらスライムとゴブリンかと思っていたのだが、ゴブリンは2階らしい。

代わりに居るのはネズミと大蜘蛛。


「ちなみに、大蜘蛛とはどんな感じだ?」

説明を受けて歩きながら尋ねたのに対し、ひょいっとデヴリンが剣を振ったら斬撃が天井近くにあった蜘蛛の巣・・・とそこに居た大蜘蛛を切り裂いた。


(剣から斬撃が飛ぶって・・・流石ファンタジーな世界)

隆一は思わずまじまじとデヴリンを見つめてしまった。


「これが大蜘蛛だな。

・・・どうした?」


「いや、私の世界では魔力というものが無かったせいか、剣から斬撃を飛ばすという技術が無くてね。

ちょっと驚いた」


気を取り直して床に落ちた大蜘蛛を鑑定してみたところ『大蜘蛛:魔物化しつつある蜘蛛科類』

と出てきた。


脚も含めれば30センチ近くありそうなこのサイズでもまだ魔物化『しつつある』なのか。

魔物化し終わったサイズの蜘蛛に襲われるところなんぞ、想像したくもない。


「ちなみに、このサイズだとまだ魔石は無いか、10パド程度でしか売れない屑魔石しか持ってないはずだ」

そう言いながらデヴリンがしゃがみ込んで解体ナイフで蜘蛛の腹を切り開いて見せた。


確かに、腹の上の首の真下ぐらいの、人間で言ったら肩甲骨と首の接する所ぐらいな感じの場所に小さな石片があった。


石みたいに見えるが、これが屑魔石らしい。


鑑定によると、『屑魔石(大蜘蛛):ごく微量の魔力の凝った塊』と出た。

一応何か面白い使い道があるかを確認する為にこれは貰っておいたものの、微量すぎて何かに使えると分かっても量を集めるのは大変そうだ。


「ありがとう。

ちなみに、迷宮の中って虫が住んでいるのか?

普通の洞窟や遺跡の中だったら虫が住み着いてそれを蜘蛛が食べるのだと思うが、迷宮に入ってから羽虫やダンゴムシのような一般的な虫は見た記憶がない」


デヴリンが肩を竦めてダルディールの方に目をやった。

「・・・考えてみたら、魔物としての蜂やムカデやワーム系は良く見るが、普通のハエや蝶って見ないよな?」


「迷宮の床や壁は掘れないから、虫が生きるのには向いていないのだろう。

死骸も腐敗する前に迷宮に吸収されるから餌にならないし。

蜂系の魔物の巣から蜂蜜が取れることが有るから迷宮産の花には花粉や蜜があるのだろうが、基本的にそんな花が生えている自然環境的な階層は中層以下だから普通の虫は辿り着けないのではないか?」


どうやら迷宮の中には花が生えている階層もあるらしい。

トレントという木材系の魔物が存在するという話は聞いていたが、普通の植物もあるという情報は隆一が受けた説明の中には無かった。


まあ、普通に地上にある花を迷宮の中層までも潜ってゲットする意味はないから、言及するだけの価値は無いと思われたのだろう。


とは言え、迷宮にある花と地上の花と、同じ種類の場合に含有物に違いが無いのか、調べてみたいところだ。


「ふむ。

もしも中層まで行ったら、そちらで咲いている花というのも地上の花と比較して調べてみたいところだな。

しかし普通の虫が迷宮の中にいないとなったら、この大蜘蛛は何を食べているんだ?」


「あれだな」

そう答えながらまたもやデヴリンがひょいっと斬撃を飛ばした。

今回は手に持っていた解体ナイフでやっていたから、ナイフからでも斬撃は飛ばせるらしい。

もしかして、手刀でも飛ばせたりするのだろうか?


斬撃の先では鼠らしき生き物が首をはねられて悲鳴を上げる暇もなく一瞬で死んでいた。

鑑定によると『鼠(大):魔物化しつつある齧歯げっし類』とあるから鼠らしいが・・・かなり大きい。


15センチはありそうだ。

大蜘蛛の方が脚を含めれば大きいが、胴体のサイズではほぼ同じか、鼠の方が重量はあるかも知れない。


「この鼠と大蜘蛛がお互いを食い合っている感じだな。

殺しても食べている最中だと暫くは死骸が迷宮に吸収されないから、お互い中々壮絶に食らいつくぜ。

長生きすると更に大きくなって、小粒だがちゃんとした魔石を有する魔物に進化するのも出てくる」


そう言いながらデヴリンがまたもや斬撃を飛ばして殺した鼠はさっきよりも更に大きかった。

大鼠ビッグラット齧歯げっし類から魔物化した生物』と鑑定には出たから、これが長生きして魔物に成り上がった鼠らしい。

近づいて観察した死骸のサイズは、普通の野良猫サイズぐらいはありそうだ。


話し合っている間に最初に斬撃で殺された鼠の死骸は迷宮に吸収されたのか姿を消していたので、急いでこちらの大鼠を解体ナイフで切り開いてしてみたところ、心臓の横に魔石があった。


『魔石(大鼠):少量の魔力の凝った塊』と鑑定結果に出た。先ほどの屑魔石よりは大きいが、スライムの魔石とはほぼサイズが同じだ。

「最初のスライムよりこの大鼠の方がずっと大きいし、私としては脅威度が高い様に感じるが魔石のサイズはほぼ同じなんだな?」


デヴリンが肩を竦めた。

「スライムは魔物だから、弱くはないぜ?

動きは遅いものの、物理攻撃耐性があるから鼠や大蜘蛛じゃあどれだけ集まっても倒せない。あいつらの足の何本かが捕まったらスライムに取り込まれて溶かされておしまいだ。

人間だって、他の階で怪我をして1階まで必死の思いで逃げてきた探索者が、安心して気を失って倒れていたらスライムに取りつかれて手や足を失ったって話は時折聞くからな」


・・・手や足ではなく、頭に取りつかれた場合は死骸になって迷宮に吸収されて見つからずに行方不明になるというところか。


某RPGソフトのどことなく可愛いらしいスライムのイメージがあるせいで魔物であると分かっていてもついリスクを軽視してしまいそうだが、魔物であるのだからスライムにもやはり無視できない危険性はあるようだ。


「まあ、基本的にこの迷宮の1階は子供やスラムの住民が薬草目当てに集団で入ってきて、スライムや魔物化した大鼠・大蜘蛛をついでに魔石目当てに倒してこづかいを稼ぐ場所だ。

余程のことが無い限り危険は無いが、『よほどのこと』というのは油断していると意外と起きやすいものだから気を付けてくれ」


ダルディールの言葉は、招かれ人が勝手に迷宮に入ってきて死なれても困る探索者ギルドのスタンスでもあるのだろう。


しっかし。

猫サイズの鼠や蜘蛛を、集団とはいえ子供が倒すか。

流石異世界。逞しい。


「分かった。

取り敢えず、色々と研究したいこともあるが必ずちゃんと誰かに護衛として来てもらうようにするよ」


「『誰か』ではなく、必ず神殿か探索者ギルドの受付を通して手配した護衛をつけてくれ。

うっかり自腹で適当な人間を雇ったりすると、招かれ人だと知らずに『カモ』だと思って殺して金を奪おうとする人間にぶち当たる可能性だってゼロじゃあない。

あんたは死ぬだけで終わりだが、とばっちりを受けて天罰で死ぬ人間がどれだけ出るかは起きてみないと分からないんだ」


朝に紹介以来ずっと軽い感じだったデヴリンからはじめて聞く真剣な口調に、隆一はザファードから教わった授業の内容を思い出した。


確か、150年前の旧ザウィール王国では王宮で働いていただけの人間も含めて500人近くが天罰で死んだという話だった。

5年以上もかけて招かれ人の生き血を使った魔物除けで大規模に国土開発をするなんていう人身御供に近い状況だったせいで神に『座視した者も同罪』という断罪された案件だったはず。


「流石に私の生き血を使って国土開発をしたいなんていう狂人にぶつかる可能性は低いだろう?

ここで私がたまたま人を見る目が無くって騙されて死ぬ程度だったら、他にとばっちりが行くとは思えないが・・・まあどちらにせよ、まだ死ぬつもりはないから気を付けるよ」


研究者気質なので隆一は色々なことに興味を感じてます。

却って本人の方が自分の血を使って魔物除けが造れるのか実験しそう・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ