1036.もう少し(2)
「ちなみに、俺が使うような防具ってどこで入手するのが一番なんだ?
軍の装備が良いのか、探索者用の専門店に行くのがいいのか、俺の体力や体形的にどっちがいいのか教えてくれ」
王都迷宮に入って転移門の方へ進みながら隆一はお守り二人に尋ねた。
地球だったら多分試作品を含めれば軍の最新装備が一番良い物であるのだろうが、こちらは探索者の方が迷宮の最下部へ行っている筈。
人間同士の戦いだったら軍が専門だとしても、魔物との戦いの場合はどうなのか不明だし、ここはどちらにも詳しい二人に聞くべきだろう。
「魔術師系騎士にはリュウイチと大して違わない体形の人間もいるし女性もいるから体形の問題は無いが・・・流石に体力はもう少し走り込みでもした方が良いかも知れないな」
デヴリンがちょっと考えながら答えた。
マジか。
走り込みなんて聞くと一気に宝箱探しへのハードルが高くなった気がした隆一だった。
「軍では魔術師でも走り込みをするのか?」
アーシャの話を聞くに女性でも物理系騎士は男性とほぼ変わらない基礎能力と体力持ちであるのは分かっていた。
だが頭脳労働者的な魔術師は前線で戦うことになっても後ろからの遠距離攻撃が多いのだから、大して体力は無いのだろうと思っていた。
「元々、基礎能力値が上がれば体力も上がるからひょろっとした魔術師系騎士でも入隊したばかりの近接戦闘系見習いよりも走り込みで長続きするぞ?
だからリュウイチだって走ってみたら意外と体力が続く筈だ」
デヴリンがあっさり応じた。
そうなのか。
確かにこちらに来て・・・というか迷宮探索を始めてからあまり疲れを自覚しなくなったし、夜更かししても翌日に響かなくなったとは思っていた。だがそう言う体力だけでなく、実際に走って体を動かす方の体力までアップしているとは意外だ。
「ちなみに、探索者の魔術師や回復師も走り込みとかするのか?」
それに魔術師や回復師と言えばこう、ローブ的な服装を想像するのだが、迷宮での格好はどうなのだろうか。
この間未攻略迷宮へ入った時はフリオスも普通にちょっとごつい騎士の格好をしていた。
デヴリン程しっかりした装備では無かったが、少なくともローブでは無かったからラノベ的な考え方は無いのかも知れない。
というか、ラノベ的に魔術師や回復師がローブを着るのは金属製の甲冑だと重すぎて動きが取りにくいというのと、魔力の運用に金属が干渉する為に好ましくないという設定が多かった。
流石に金属のフルプレートアーマーは重すぎて前衛戦闘職じゃなければ難しいだろうが、急所を金属や強い魔物素材でカバーした装備程度だったら基礎能力値が上がった魔術師は平気で身に着けて動き回るだろうし、金属が魔力の行使に干渉するという問題は実在しない。
そう考えると・・・ローブは無い。
というか、隆一だって今さらずるずるしたローブを着て動き回るのは遠慮したい。
「そりゃあ、探索者なんていざという時に走って逃げられてナンボな職業だ。
当然魔術師だって回復師だって走るよ。
まあ、走り込みの鍛錬を行うっていうよりは、探索が終わった後の帰り道にさっさと帰って酒を飲むぞ!ってことで皆で走ることが多い程度だが」
デヴリンが応じる。
なるほど。
帰り道で酒を楽しみにしながら急いで帰るのに、一人だけ足を引っ張るのは中々精神的負荷が高そうだ。
そうならない様にそれなりに真面目に体力づくりをするのかも知れない。
「装備に関しては・・・何種類か探索者ギルドの職員用の装備を借りてみて、趣味に合ったのをオーダーしたらどうだ?
流石に騎士団の魔術師用装備を私用で使うのは気まずいだろう?」
ダルディールが提案した。
「そうだな、そのまま騎士団の装備を借りるつもりは無いが・・・一応騎士団の魔術師用の装備も一度借りてみて、どんな着心地かを確認して探索者ギルドの装備と比較してから決めてみるか」
ある意味、騎士団の装備の方がそこそこでまあまあな強度を発揮してくれて丁度いいかも知れない。
探索者ギルド経由だとそれこそ迷宮の攻略を狙う超一流な探索者用の装備を勧められたら、とんでもなく高くつき過ぎそうだ。
超一流な装備の値段って青天井になりそうw




