1011.王都迷宮下層上部(16)
「これは雄だな」
次に遭遇したレッドブルは邪魔な玉が下半身にあったので、搾乳は諦めた。
雄だろうが雌だろうが乳首はあるという話だが、乳が出る雄というのは聞いたことが無いので流石に意味が無いだろう。
とは言え。
考えてみたら、女性ホルモンを注射すると男性でも胸の脂肪が増えて大きくなると聞いたことがある気がする。
だとしたら、あれってホルモンバランスを色々と弄って出産後と同じような状態にしたら男でも乳を体内で作り出すようになるのだろうか?
女性のような見た目になりたいと思うトランスジェンダーな人間でも流石に授乳をしたい(出来る)と思う人間はあまりいないと思うので、そんな研究は誰もしていないのだろうが。
・・・それともしているのだろうか?
ある意味、遺伝子操作とかで男性同士のカップルでも代理母を使えば子供が出来るようになるなら、その子供に授乳したいと思う男性が居ても不思議はない。
意外と企業のトップとかアーティストとかでゲイな男性はそれなりにいるようなので、そこら辺の連中が大金を払えばいつかは男性でも授乳できるようになるのかも知れない。
まあ、どちらにせよ、ウシ科魔物の雄から乳が出ることは絶対にないと思われるので、どうでもいい事なのだが。
「じゃあ、今度は首を切ってみよう」
再度デブリンから借りたショートソードを持って、スタン状態でまだ動いていないレッドブルの首の横に立ち、頸動脈の場所を確認する。
隆一が首の骨を切るのはまず無理だと思われるので、首チョンパは無理だろう。
ここは頸動脈を切断して失血死を狙うしかない。
なんだったらついでに脊髄を切断したら更に早く死ぬかもしれないが・・・どうせだったら脳からの信号を止めて殺すより、失血死させる方が血抜きの手間が省ける。
「う~ん・・・これって下から切り上げた方が良いのか?」
筋や動脈や骨の位置を鑑定で確認しながら隆一がデヴリンに尋ねる。
「・・・角度が斜めになれば上からでも骨を避けて切れるぞ?」
肩を竦めながらデヴリンが言った。
まあ、彼の場合は別に角度を調整しなくても骨ごと首チョンパ出来てしまうのであまり関係ないのだろうが。
ここは、魔力をがっつり筋肉に練り込んで、力技で一度行ってみよう。
「は!!」
刃の部分を当てて引き切るような動きを意識しながら、ショートソードを摺り当てるようなイメージで腕を振り下ろす。
刃を当てて引いて斬る日本刀と力技で殴るような西洋の剣では切り方が全然違うとラノベでは読んだ気がするが、取り敢えずこのショートソードだってそれなりに刃があるので、上手い事斬れば切れるのでは?と期待していた隆一なのだが・・・。
プシャ~~!!
ちゃんと頸動脈を切れたが、斬ることに集中し過ぎていたせいで見事に切り口から噴き出してきた血の直撃を受けた。
「うげ」
慌てて一歩下がり、袖で顔の周りを拭く。
少し口の中にも入ってしまった気がする。
生血なんぞ飲んだら病原菌なり寄生虫なりに感染してしまいそうで心配だが、迷宮の魔物だったら外の動物よりもそこら辺は清潔であると期待しよう。
「・・・ちなみに、魔物の血を浴びたり口にしたりして病気になるとかってあるのか?」
魔術で水球を出して顔や胴体および手を洗いながらダルディールに尋ねる。
「血に毒があるタイプの魔物だったらあるが、食用になる魔物だったらゾンビになっていない限りそう言う問題は聞いたことが無いな」
ダルディールがリヤカーからタオルを取り出して差し出しながら言った。
「そっか。
ちなみに、今みたいに頸動脈を切る時に血を浴びない様にするにはどうしたらいいんだ?」
角度の問題なのだろうか?
「切りつつ一歩横に動くか、切り口をスパッと綺麗にして出血を遅らせてその間に下がっておくかだな」
デヴリンが教えてくれた。
切り口を綺麗にというのは、『お前はもう死んでいる』の世界だったか。
いや、あれは急所のツボ(?)を押して既に死んでいるというケースだったか?
侍チックな主人公なりサブ主人公が出て来るようなアニメなんかではすれ違いざまに切って、一瞬の間があった後に敵の上半身とかがずるりとずれて『ばかな・・・』と言いつつ死ぬようなのも多かった気がするが。
いや、上半身がズレるようなのは時代劇系ではなくファンタジー系のアニメか?
取り敢えず、切り口が綺麗だったら周辺の肉が刃に引きずられて動かないことで、出血が数秒遅れるのだろう。
現実的に言って隆一には絶対に無理だが。
「次は防水結界を展開しながら切ってみるよ」
それが一番確実だろう。
実写系な時代劇で上半身が斬られてズレるなんてあり得ませんよねw




