序章
時は現代。
最近の流行、最新のゲーム機は人々の目を釘付けにさせるほどの魅力がそこにはある。
中でも仮想世界、MMORPGなるものが大人気で多彩なジャンルが多く存在している。
少しごつい被り物をして横になり、ゲームの世界にダイブする例のアレだ。
科学はここまで進化したのか、ようやくゲーム大好き人間達が求める願望に追いついたのか。
ともかく今の流行はMMORPGだ。
いろんなゲームがある中でとある一つのゲームの話をこれからしよう。
ゲームアクション、といえばでかいモンスターをみんなで借りに行くゲームとか、剣や魔法を使ってファンタジー世界を渡り歩くゲームなんかがかなり人気が出ている。
この物語はそんな大人気なジャンル、ではなく、そこそこな人気がある、ぐらいのソフト。
ゲーム週ランキングではトップ10のうち、八位ぐらいにランキングしてそうなぐらいの人気度。
ずばり剣、刀で戦うアクションゲーム。
もっとわかりやすく言うと戦国無双ゲーム。レッツパーリィしたり、レッツパーリィしたり、レッツパーリィしたりするゲームだ。
さて、そんな毎日戦国脳だらけの猛者達の物語が今、始まる--。
「いや、始まるじゃねぇよ。誰が戦国脳だよ、勝手に一括りにするんじゃねぇ」
青空の下の元、ベンチの上に寝そべってそうボヤく少年。
その男のもとに呆れた様子で年老いた老父が口を開く。
「あのー、あんちゃん。開口一番がそれはどうかと思いますぜ」
その一言に適当に手を振って返すと、老父は小さな溜息を吐く。
「あんちゃん。あんたゲームしに来たんだろ。こんなとこでいつまでも油売ってていいんかい?」
「どうプレイしようが人それぞれだろ? あまり気にしすぎるとただでさえ多いしわがしわだらけになるぞ爺さん」
適当に頭をボリボリかき、ベンチから立ち上がる少年は大きく伸びをする。
「相変わらずマイペースだな、あんちゃん」
やれやれといった様子で老父は掌を少年に向けて突き出してきた。
「何?」
「何じゃねぇぞあんちゃん。団子のお代」
近くにあったテーブルには空になった皿。ここはどこにでもあるしがない団子屋。
「いつもので」
「またか……。あんちゃん、ゲームの中だからって後払いがいつまでも通用すると思わねぇことだ」
「毎度毎度すまねぇな、爺さん。俺、こう見えても忙しい身でね」
“ゲームする暇ぐらいあんじゃねぇか”と小声で悪態を吐きながらも了承してくれた老父に背を向ける少年。
「気が向いたらまた来るわ」
欠伸をしながらその場を後にする少年の姿はどこぞのチンピラのような雰囲気、またはただ能天気に足の向くままにぶらぶらしているだけの暇人なのか。
「今度は利息分、請求してやるかのう・・」
呆れがちに、されど仕方がないと思った老父の顔は複雑そうに笑っていた。