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神様に借りた農場  作者: 秋野 木星
第一章 四月
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畑の耕作

午前中は、畑の耕作をすることにした。


珠美は、家の南側にある草原を畑にしようと思っていた。

これだけ広かったら、何でも植えられそうね。



「【タケハタケ ウネヲツクレバ ハケヨイト】」


まずは、ゆっくりと歩きながら耕して、(うね)を作っていく。

歩きながら耕すというのはおかしな表現だが、珠美の足の裏には魔法の発動場所があるようだ。



猫車に乗せた木箱に、スコップでハーブの苗を掘り出して入れる。

今度は呪文を唱えながら、その辺りを歩いて長い畝を作っていく。


お昼近くになるまで、これをずっと繰り返していった。



水を好むタイプの野菜は、田んぼのあぜ道のそばに植えることにする。


大川に近い一番南側には背丈が低い野菜を育てる予定だ。

スイカ、カボチャとネギ、これが先頭だ。

二番目の列は、葉物野菜の混作、ホウレンソウ、ニンジン、ゴボウになる。

三番目の列には、背が高くなるキュウリ、ピーマン、オクラの種を蒔く。

それらの北側にはずうっとトウモロコシ畑が続く。

ここまでが、畑の東半分のラインナップだ。



次に、畑の西半分。

こっちはどちらかというと乾燥を好む野菜の列を作っていく。


前列一番東がナス、次がトマト、大根、インゲン、一番西がジャガイモとなる。

そしてその後ろ、北側には全面に広い大豆畑が続く予定だ。


ナスは水を好むが、根腐れしやすいので畝が高い方がいい。そのため真ん中あたりに植えることにしている。

これらの水はけがいいことを好む作物の畝は高くして、ジャガイモや大豆のように土寄せが必要な作物は、間の幅を広く取ってゆったりと畝を作っておく。




魔法のおかげで、あっという間にたくさんの畝ができたので、珠美はハーブの苗を満載した猫車を押しながら意気揚々と家に帰って来た。


苗箱を日陰に下ろすと、今度は天ぷらにする野草を取りに行くことにした。

出かける前に井戸で手を洗って、乾いた喉を潤しておく。


「あー、冷たい!」 


労働の後のビールに匹敵する美味しさだ。

自分が大人になるまでに、自家製ビールを作るところまでいけたらいいな。

珠美は夢を膨らませていった。


さっき取得した『収納・買い物かご』を使ってみたかったので、今回はカゴを持たずに手ぶらで出かけることにした。


昨日、村に行く時に、道べりに使えそうな野草が生えていたのを見てたのよね。


小川の橋を渡って少し行くとすぐに、道と林の間にたくさんの野草が生えている場所に出た。


「あったあった!」


ヤブカンゾウ、ヨモギ、タンポポ、そしてここにもノビルがあった。

林の日陰にはまだ食べられそうなフキノトウもある。


「やった、柔らかそう。これは美味しいわ」


お腹の辺りの空間に手を置いて「【モッテ アルイテ ランララン】!」と言うと、収納・買い物かご魔法が発動して、採った野草をすぐに入れることができた。

これは便利だ。

なぜお腹の辺りにしまうことにしたかといえば、マンガの便利なポケットを持ったネコの影響である。

珠美の世代はこのマンガの作者の全盛期といえるだろう。


帰り道の小川で、川の中に生えていたセリも採った。

こちらは濡れているので手に持って帰る。



さてさてお昼ご飯を作ろうかな。

クドの一つに大鍋を据えて、油をあたためていく。油は貴重なのでたっぷりとは使えない。天ぷらをする時に、野草が少し浮くぐらいの量にする。


もう一つのクドでは鍋の湧いたお湯にかつお節を削って入れて、だし汁を作る。

できただし汁を三分の二だけ残して、後はいったん小鍋に取っておく。

だし汁にカボチャのクシ切りを入れ、みりん、醤油、三温糖、ほんのちょっとの塩などを入れ、煮ていく。

こちらは今夜の夕食になる予定だ。


次はコロモを作ろう。小麦粉に少しだけ片栗粉を混ぜて、そこに冷たい井戸の水を入れる。

天ぷらのコロモは冷たい水で混ぜた方がパリッとあがる。氷はここにないので、ぬるくなっている水瓶の水ではなく、冷たい井戸水を使った。

洗った野草を次々と揚げていくが、セリのような水気が多い野菜は油が跳ねないように注意する。


最後に薄切りにしたカボチャを、コロモをつけるものと素揚げにするものとを分けて揚げていく。

素揚げにした方のカボチャは、残った油、砂糖、酢、醤油、ほんのちょっとの塩などを混ぜた甘酢油に漬けておく。

この甘酢漬けは明日以降に食べる予定だ。


これでなんとかカボチャを使い切った。

毎食カボチャを食べることになるが、味が変わるので飽きずに食べられるだろう。

料理する時に取ったカボチャの種を、ワタを取り除いて水に浮かべてみた。5個沈んだので、この実入りがいい種は買ってきた種と合わせて、畑に植えることにする。


三分の一だけ残しておいただし汁に少しのみりん、醤油、ほんのちょっとの砂糖と塩を入れて、天つゆを作り、よく火を入れた熱々のつゆに大根おろしを加える。

この天つゆに春の野草とカボチャの天ぷらを浸して食べたら美味しかった!

様々な野草の触感と香りに彩られたこの一品は、汁物がなくても満足感がある。

昼食は、天ぷらと冷ご飯、それにキムチということになった。

キムチがあると食卓が豊かになる。ミヨンばあちゃん、ありがとう!



食後に日陰でゆったりとくつろぎながら、珠美は午後の予定を考えていた。


ボカシ肥料を作りたいな。

油かすはここになかったので買ってきている。米ぬかは『精米』の魔法を習得したので、うちの玄米を精米したらとれる。後はその二つに土と水をよく混ぜて、空気を遮断するようにフタや重石をして日陰で発酵させればいいのよね。

これが臭いんだ。

珠美が最初に勤めた学校で、主任の先生が作っていたのを覚えている。

でも春だから、発酵するには一か月くらいかかるかしら?

あ、そういえば魔法があるじゃない! 明日の朝、魔術書を調べてみよう。


それから腐葉土だ。

これも作る暇はないから、林から天然の腐葉土を取ってこよう。


後は、ジャガイモの下準備よね。

春植えのジャガイモは種芋を切って植える。秋は丸のまま植えるのだが、春にはひと手間かかるのだ。

切ったところに灰をつけて、二日ほど陰干しするんだったかな。


よし、まずはここからするとしましょうか。


珠美は腰を上げると、昼食の後片付けをした。

そして種芋を持ってくると、芽を二つ以上残しながら包丁で切っていく。そして切り口にうっすらと灰をつけて、日陰に敷いたムシロの上に並べていった。

よしよし、いい感じじゃない?


次に油かすと米ぬかと土と水を混ぜてこねていたら、ペロルがやって来て不平を漏らした。


「これ、ぼくの小屋から離れたところにおいてくれない?」


「あら、まだ発酵していないのに臭うの?」


「この油かす、買い物の帰りにも思ったけど、お日様の光で蒸らされたら臭いよ」


これはボカシ肥料が発酵したら、文句を言われそうだな。やっぱり魔法で促成発酵させて、早く使い切った方がいいみたい。


ボカシ肥料の素が出来上がったので、大きなバケツに入れてフタをし重石の石を入れると、ペロルの小屋から遠く離れた日陰に置きに行った。


やったー! 達成感を感じるな。

さあ、これから腐葉土を取りに、林の中へ分け入ることにいたしますか。


この後で珠美が入った林の中は、思ってもみないことに、宝物でいっぱいだった。

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